2019年5月25日 山頭溜池
山頭(やまがしら)溜池は長崎県平戸市生月町南免にある灌漑目的のアースフィルダム、灌漑用溜池です。
生月島は古くから漁業や捕鯨の拠点となってきましたが、水利に乏しく農業は湧水を水源として僅かに営まれてきただけでした。
しかし明治末期から大正にかけて近代土木技術を導入して多数の溜池が築造されたことで、傾斜地が各所で開墾され多くの棚田が作られました。
山頭溜池は生月島で最初に建設された大型溜池で、ダム便覧には山田土地改良区の事業で1912年(大正元年)着工、1914年(大正3年)竣工と記されています。
戦前には土地改良区はありませんので、その前身となった耕地整理組合もしくは水利組合の事業で建設されたと思われます。
池の管理は山田土地改良区が行っています。
なおダム便覧では堤高18.5メートル、堤頂長128メートルと記されていますが、2020年(令和2年3月)に作成された長崎県のため池データベースでは堤高14.5メートル、堤頂長128.8メートルとなっています。
データベースのスペックを採用すると、山頭溜池は河川法上のダムの要件を満たさなくなります。
山頭溜池は『山頭草原』が目印となります。
ダム下から
ダム便覧の写真と同じ、棚田の石垣越しに見る山頭溜池。
良質の石が採取されるため、生月島の棚田では美しい石垣が各所で見られます。

右岸の洪水吐は近年改修があったようでコンクリートが白く輝いています。

洪水吐導流部。

天端へは『山頭園地駐車場』に車を止め徒歩で向かいます。
ここが山頭溜池への入口となります。

山頭草原は牛の放牧用の草原で、牧柵の中に遊歩道が続いています。

園地から歩くこと10分ほどで山頭溜池左岸に着きます。
溜池にはイノシシ除けのフェンスがありますが立ち入り禁止ではありません。

上流面はコンクリート護岸されていますが草が覆っています。

左岸の斜樋。

天端からの眺め
真下には先ほどの石垣のある棚田が続き、森の奥には海が広がります。

溜池は総貯水容量9万3000立米と小ぶりです。
池の上流には山頭草原の放牧地が続きまるで信州の霧ケ峰のよう。

放牧地では黒毛が草を食んでいます。
正面のピークが池の名前の由来となった標高257メートルの『山頭』で、山頂まで遊歩道が続いています。

近年改修された越流式洪水吐
側壁のコンクリートは真っ白。

池直下の棚田と、池を取り巻く山頭草原の牧歌的な風景。
時間に余裕があればのんびり遊歩道を歩いて上から池を俯瞰してみたい、そんな山頭溜池でした。
2575 山頭溜池(1452)
ため池コード 422070118
長崎県平戸市生月町南免
神の川水系神の川
A
E
18.5メートル(ため池データベース14.5メートル)
128.8メートル
93千㎥/93千㎥(ため池データベース87.5千㎥)
山田土地改良区
1914年