ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

石河内ダム

2021-10-22 23:45:04 | 宮崎県
2021年10月16日 石河内ダム
 
石河内(いしかわうち)ダムは宮崎県児湯郡木城町石河内の一級河川小丸川本流にある九州電力(株)が管理する重力式コンクリートダムです。
オイルショックに加え家電の普及に伴う電力消費の昼夜間格差の拡大を受け、電力各社は火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。 
九州電力も1980年代より積極的に純揚水発電所建設を進め、同電力3番目の純揚水発電所として2007年(平成19年)に小丸川発電所が完成しました。
石河内ダムは同発電所の下部調整池として同年竣工し、上部調整池である大瀬内ダム・かなすみダムとの有効落差646.2メートルを利用して水力発電では九州最大出力となる120万キロワットの純揚水式発電を行っています。 
また河川維持放流を利用した尾鈴発電所(最大出力350キロワット)で小水力発電も行っています。
 
小丸川ダム発電所概要図(九州電力HPより)
 
残念ながら石河内ダムを明確に展望できるポイントはありません。
小丸川沿いを走る県道22号東郷西都線のなかおづるトンネルと鈴音トンネルの間からダムが垣間見えます。
フェンス越しの撮影となったため写真には黒い筋が入ってしまいました。
 
ズームアップ
日本最大の油圧式ラジアルゲート4門を擁しており、ピアや巻き上げ機のないすっきりとした堤頂部。
 
石河内ダムからさらに上流へ向かうと、小丸川発電所入り口に到着します。
この奥に発電所へ通じるトンネルありますが、もちろん立ち入りはできません。
九電のPR館で見学の予約を受け付けていますが、残念ながら対象は団体のみ。
 
発電所正門前には発電所建設工事で使われたボーリングマシンのカッターヘッドが展示されています。
 
カッターヘッドの説明版。
 
(追記)
石河内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。 

3302 石河内ダム(1706)
宮崎県児湯郡木城町石河内
小丸川水系小丸川
47.5メートル
185メートル
6900千㎥/5600千㎥
九州電力(株)
2007年
◎治水協定を締結したダム

大瀬内ダム

2021-10-22 22:01:17 | 宮崎県
2021年10月16日 大瀬内ダム
 
大瀬内ダムは宮崎県児湯郡木城町石河内の小丸川水系大瀬内谷川源流部にある九州電力(株)が管理するアスファルトフェイシングフィルダムです。
オイルショックに加え家電の普及に伴う電力消費の昼夜間格差の拡大を受け、電力各社は火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。。
九州電力も1980年代より積極的に純揚水発電所建設を進め、同電力3番目の純揚水発電所として2007年(平成19年)に小丸川発電所が完成しました。
大瀬内ダムは副ダムのかなすみダムとともに同発電所の上部調整池として同年竣工し、下部調整池である石河内ダムとの有効落差646.2メートルを利用して最大120万キロワットの揚水式発電を行っています。 
大瀬内ダムは大瀬内谷川源流部、標高800メートル地点にあり透水性の高い地質から上流面のみならず貯水池全般に渡ってアスファルトフェイシングによる遮水処理が施されています。
また西側鞍部に副ダムであるかなすみダムがあります。
 
小丸川発電所概要図(九州電力HPより)
 
九州電力のPR施設であるピノッQ館から大瀬内谷川に沿った山道を西北西に約8キロ走ると大瀬内ダム展望台に到着します。
この先、ダムへ通じるトンネル入り口から先は立ち入り禁止のためここから遠望するのみ。
ここから見る限りは普通のロックフィルダムですが、背後には全面アスファルトフェイシングフィルの貯水池が隠れています。
 
完成から約15年たちますがリップラップには草木一本見えません。
 
左岸に洪水吐と管理棟があり斜水路が一直線に伸びています。
 
展望台の案内板。
発電施設ということでガードが堅いのは止むをえませんが、トンネルの先、せめてダムサイトまで見せていただければなあ…。
 
(追記)
大瀬内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。 

3300 大瀬内ダム(1705)
宮崎県児湯郡木城町石河内
小丸川水系大瀬内谷川
FA
65.5メートル
166メートル
6200千㎥/5600千㎥
九州電力(株)
2007年
◎治水協定を締結したダム

川原ダム

2021-10-22 20:53:57 | 宮崎県
2021年10月16日 川原ダム
 
川原(かわばる)ダムは宮崎県児湯郡木城町石河内の一級河川小丸川本流中流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なため、戦前から各河川で活発な電源開発が進められてきました。
小丸川水系では1938年(昭和13年)に県による小丸川河水統制事業が着手され宮崎県電気部(現宮崎県企業局)による電源開発が進められました。
川原ダムおよび川原発電所は同事業初の発電施設として1940年(昭和15年)に完成、当初はダムのある地名から浜口ダムと呼ばれていました。
しかし翌1941年(昭和16年)にダムおよび発電所は日本発送電に接収され、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しました。
ここで取水された水は約5.7キロの導水路で川原発電所に送られ最大2万1600キロワットのダム水路式発電が行われています。
また2011年(平成23年)には河川維持放流を利用した川原ダム維持放流発電所(最大出力150キロワットの小水力発電)が稼働しました。
 
小丸川沿いの県道26号線から川原ダムが遠望できます。
堤高23.6メートル、堤頂長150メートルの全頂長自由越流頂型式のダムです。

 
ズームアップ。

 
左岸から河川維持放流が行われています。
2011年(平成23年)に維持放流を利用した小水力発電所が増設されました。

 
左右両岸の作りは、まだ導流壁のない昭和10年代のダムの特徴を見せています。
減勢部も戦前らしいコンクリートの叩き。

 
こちらは2011年(平成23年)に完成した川原維持放流発電所の水利使用標識。

 
こちらは川原発電所の水利使用標識。

 
川原発電所向け取水口は2か所ありこちらは下流側の第二取水口
手前が沈砂池、奥にスクリーンがあります。


こちらは上流側にある第一取水口
奥が除塵機とスクリーン、手前は取水ゲートになります。

アングルを変えて。

 
貯水池は総貯水容量322万立米、堆砂が進み有効貯水容量は120万立米。

 
左岸の2か所の取水口をズームアップ
手前が第一取水口、奥が第二取水口になります。

 
(追記)
川原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2809 川原ダム(1704)
宮崎県児湯郡木城町石河内
小丸川水系小丸川
23.6メートル
150メートル
3220千㎥/1200千㎥
九州電力(株)
1939年
◎治水協定が締結されたダム

切原ダム

2021-10-22 14:39:35 | 宮崎県
2021年10月16日 切原ダム
 
切原(きりばる)ダムは宮崎県児湯郡川南町川南の小丸川水系切原川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
尾鈴地区は洪積台地上に農地が展開されていますが、水源を小河川に依存しており安定した水源確保と灌漑設備の整備が求められていました。
1996年(平成8年)に農水省による国営かんがい排水事業尾鈴地区が着手されその灌漑用水源として2012年(平成24年)に完成したのが切原ダムです。
事業全体も翌2015年(平成27年)に完了し、既設の青鹿ダムと併せて約1600ヘクタールの畑地への灌漑設備が整備され尾鈴地区は県内有数の畑作地帯となっています。
ダムの管理は管理は尾鈴土地改良区連合が受託しています。
 
ダム下から
クレスト自由越流頂5門に漸縮型堤体導流壁といういかにも農水省のダムと言った体。
比較的新しいダムのため堤体の汚れも少なく、青空によく映えます。

 
左岸の管理事務所へ向かう道路から
ダムの全容が見えそうで見えない。

下流面。


水利使用標識
受益農地はすべて畑地・樹園地のため、年間を通して水利権が配分されています。

 
公共事業全体への風当たりが強い時代のダムらしく天端に余計な装飾はありません。

 
天端から
減勢工はエンドシルが1基
赤い屋根の建屋は放流設備、その右手は調圧水槽。
灌漑用水はすべて専用パイプラインを通じて供給されます。

アングルを変えて
現在河川維持放流を利用した小水力発電所が計画されています。

 
総貯水容量は204万立米
年間を通じて水利権が配分されているため10月でもほぼ満水。
切原川のほか右支流の頭首工から集水しています。


天端は徒歩のみ開放。
取水設備は半円形、対岸に立派な管理事務所があり日中は土地改良区の職員さんが常駐しています。


堤高61.3メートルと農業用ダムとしてはなかなかの高さ。
内側に傾斜した漸縮型導流壁がいい感じ。


上流面
取水設備と管理事務所を並べてみました。

 
(追記)
切原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3067 切原ダム(1703)
宮崎県児湯郡川南町川南
小丸川水系切原川
61.3メートル
227メートル
2040千㎥/1900千㎥
尾鈴土地改良区連合
2012年
◎治水協定が締結されたダム

青鹿ダム(青鹿溜池)

2021-10-22 06:19:14 | 宮崎県
2021年10月16日 青鹿ダム
 
青鹿(せいろく)ダムは宮崎県児湯郡川南町川南の平田川水系平田川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
尾鈴山系東山麓地帯での農地開発を進めるため、1940年(昭和14年)に農林省(現農水省)による国営高鍋川南開拓事業・開墾事業が着手され、青鹿ダムはその灌漑用水源として1959年(昭和34年)に竣工しました。
同事業により約1800ヘクタールの田畑が開拓され当地区は宮崎県屈指の農業地帯となりますが、一方で畑地向けの用水不足や灌漑設備が未熟なことから1996年(平成8年)にあらたに国営かんがい排水事業尾鈴地区が着手されました。
同事業により青鹿ダムでも大規模な改修が行われるとともに、利水放流を利用した小水力発電所(最大47キロワット)が増設されました。
管理は尾鈴土地改良区連合が受託し、2012年(平成24年)に竣工した切原ダムと併せて約1600ヘクタールの田畑への灌漑設備が整備されました。 
なおダム便覧には『青鹿溜池』と記載されていますが、農水省や土地改良区のHPでは青池ダムと記され、また宮崎県のため池データベースにも掲載されていないことから当ブログでは『青鹿ダム』と記すことにします。
 
ダム下の放流設備
2016年(平成28年)の国営かんがい排水事業で刷新されました。
左手が放流設備、右手の鉄管部分が小水力発電所になります。

 
下流から
右下の建屋は調圧水槽と電気室。

堤体と正対
堤高31.3メートル、堤頂長140メートル
基部は石積みの擁壁で犬走を挟んで三段構成。
堤体上の黒い筋の正体がよくわかりません。

 
調圧水槽と電気室。
こちらも2016年(平成28年)の改修で刷新されました。

 
右岸から下流面。

天端。

水利使用標識
受益農地は過半は畑地のため年間を通じて水利権が配分されています。

天端からダム下を望む。

 
総貯水容量は94万立米
ダム湖沿いの道は九州自然歩道になっておりダム湖対岸の森には青鹿自然公園キャンプ場があります。

 
左岸の斜樋。
こちらも2016年(平成28年)の改修で刷新されたものです。

 
左岸の横越流式洪水吐。
満水で薄く越流しています。

 
アングルを変えて
擁壁のコケがいい味を出しています。

 
洪水吐越しの上流面。


2821 青鹿ダム(青鹿溜池)(1702)
宮崎県児湯郡川南町川南
平田川水系平田川
31.3メートル
140メートル
940千㎥/840千㎥
尾鈴土地改良区連合
1959年