ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

高岡ダム

2021-10-31 23:29:58 | 宮崎県
2021年10月17日 高岡ダム
 
高岡ダムは左岸が宮崎県宮崎市高岡町浦之名、右岸が同県都城市高城町四家の一級河川大淀川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なため、戦前から各河川で電源開発が進められてきました。
大淀川では電気化学工業(現デンカ)及び同社傘下の大淀川水力電気が電源開発を進め、
1925年(大正14年)の大淀川第一発電所に次いで1931年(昭和6年)に完成したのが高岡ダムです。
ここで取水された水は約6.3キロの導水路で大淀川第二発電所に送られます。
これらの発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が継承しました。
完成当初の大淀川第二発電所の最大出力は3万キロワットでしたが、昭和30年代に最大7万1300キロワットに増強されました。
 
見学はダム左岸のみで、ほぼフェンス越しとなります。
8門のラジアルゲートで大淀川を閉め切っており、すり鉢状の減勢工は昭和初期の発電ダムらしい作り。



クレストに並ぶ8門のラジアルゲート
扶壁は鮫の背びれのよう。

 
両端が絞り込まれたすり鉢状の減勢工
対岸には波返しの付いた導流壁。


右岸に魚道があります。



 
上流面
ほぼ満水
対岸に魚道の吞口があります。
 
ゲート直上の第二取水口
昭和30年代に増設されました。

 
第二取水口の取水ゲート。

 
第二取水口の上流に第一取水口があります。


取水ゲート。

上流から見た第一取水口。

水利使用標識。
 
(追記)
高岡ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2806 高岡ダム(1734)
左岸 宮崎県宮崎市高岡町浦之名
右岸 宮崎県都城市高城町四家
大淀川水系大淀川
34.9メートル
124.2メートル
12464千㎥/3653千㎥
九州電力(株)
1931年
◎治水協定が締結されたダム

日南ダム

2021-10-31 16:39:23 | 宮崎県
2021年10月19日 日南ダム 
 
日南ダムは宮崎県日南市酒谷甲の広渡川水系酒谷川にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受け、酒谷川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給を目的とした補助治水ダムとして1984年(昭和59年)に竣工しました。
2016年(平成28年)に河川維持放流を利用した宮崎県企業局酒谷発電所(最大520キロワット)が稼働しました。
利水従属発電になりますが、これにより宮崎県ではダムの目的を『FN』から『FNP』に、治水ダムから多目的ダムに変更しており当ブログでもこれに従うことにします。
 
下流から
一部樹木に隠れていますが、クレスト自由越流頂と自然調節式オリフィスを備えたよくあるゲートレスダムに見えます。

 
ダム下には2016年に完成した宮崎県企業局酒谷発電所
これにより治水ダムから多目的ダムに変更されました。

 
左岸高台、国道222号線日南ダム展望所から
ここから見るとダムの様相は一変します。
まず目につくのが右岸側の半円形越流式オリフィス。いわゆるダム穴風洪水吐
さらに上流側にせり出した左右両側のクレスト自由越流堤
滋賀の青土ダムも衝撃的ですが、それに引けを取らない『異形』のダムです。

 
直線の天端管理道路に対して、屈曲したクレスト越流頂や導流壁が立体交差。

 
こちらは半円形越流式オリフィス
越流部には振動防止のスポイラーが並びます。

 
いよいよダムサイトへ
ダムの説明板。 


堤体左岸側は『逆Z字』に折れ曲がり『カド』になっています。

 
上流面
左岸クレスト越流頂は上流側にオフセット。

 
左岸は逆Z、右岸は円形と文字通りの左右非対称。


オリフィスの左手は取水ゲート。グリーンの予備ゲートが格納されています。


左岸導流部は減勢のために階段状になっています。


天端から減勢工。


右手は酒谷発電所
左手は低水放流用バルブ。

 
オリフィスは越流中
ダム湖は総貯水容量600万立米で細長く上流に続きます。


右岸から。


左右非対称かつ不規則に折れ曲がった堤体
上流にオフセットセットされたクレストとダム穴風オリフィス
訪問前から楽しみにしていたダムでしたが、生で見ると期待以上の衝撃。
惜しむらくは九州の最果てにあるため、知る人ぞ知る存在になっていること
もし首都圏近郊にあったなら、日本100ダム間違いなし。

2840 日南ダム(1732) 
宮崎県日南市酒谷甲 
広渡川水系酒谷川 
FNP 
 
47メートル 
189メートル 
6000千㎥/4640千㎥ 
宮崎県県土整備部 
1984年 

広渡ダム

2021-10-31 08:40:54 | 宮崎県
2021年10月19日 広渡ダム 
 
広渡ダムは宮崎県日南市北郷町北河内の広渡川水系広渡川にある宮崎県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
国交省の補助を受けて建設された補助治水ダムで、広渡川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給を目的として1993年(平成5年)に竣工しました。
 
ダムは県道33号都城北郷線沿いにあります。
下流から
クレスト自由越流頂8門、自然調節式オリフィス1門のゲートレスダムです。
訪問時はオリフィスから放流中。

 
堤体両岸には波返しのついた堤趾導流壁。

左岸ダムサイトの管理事務所
宮崎県営ダムではおなじみ、こちらも管理人さんが常駐しているはずですが訪問時は買い物でも行かれたのか?不在でした。

 
竣工記念碑。


上流面
一見水位は低めですがこれで常時満水位。
堤体中央に低水放流用の取水ゲートがあります。

天端から減勢工を見下ろす。

 
ダム湖は上流まで細長く続き総貯水容量は640万立米あります。 
上流には広渡ダムレイクサイド公園があり、夏に開設されるウォータスライダー付き天然水プールは子供たちに大人気。 


右岸の艇庫と長ーいインクライン。

 
天端は徒歩のみ開放
右手は資料館、左手は管理事務所。

 
右岸から下流面
個人的にこういうアングルの堤趾導流壁が好み。

 
右岸から上流面

 
バブル期着工のダムということで、補助ダムにもかかわらず資料館兼備。
ただ、訪問が早朝だったこともあり管理人さんは不在、資料館も閉まっていました。
 
2843 広渡ダム(1731) 
宮崎県日南市北郷町北河内
広渡川水系広渡川
FN
66メートル
170メートル
6400千㎥/5350千㎥
宮崎県県土整備部
1993年