ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

瓜田ダム

2021-10-23 23:08:09 | 宮崎県
2021年10月16日 瓜田ダム 
 
瓜田ダムは宮崎県宮崎市高岡町小山田の大淀川水系瓜田川にある宮崎県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、瓜田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的として1998年(平成10年)に竣工しました。
ダムのある宮崎市高岡町には17世紀初頭に島津氏が建設した天ヶ城址があり1994年(平成6年)に模擬天守が作られました。
瓜田ダムも模擬天守建設と同時期のためか?管理事務所は城郭風、天端は石敷き、高欄は石垣風の化粧型枠が施されるなど色をテーマにした意匠が多くなっています。
またダム直下には夏季限定営業ですが100メートルのウォータスライダーなどを擁する瓜田自然プールが開設され親子連れの人気スポットになっています。
 
ダムの下流面
クレスト自由越流頂4門、自然調節式オリフィス1門のゲートレスダムです。

 
ダム左岸にある城郭風の管理事務所
城郭風というよりもこれはもう『城』。
宮崎県営各ダム同様、当ダムでも住み込みの管理人さんが常駐しておりこちらはさしずめ『城主』。

 
左岸ダムサイトは小さな公園になっており、各種石碑が並びます。

 
天端は徒歩のみ開放 
照明や高欄も凝ったデザイン、足元も石敷き風の化粧型枠が使われています。 
 
石碑は九州ではおなじみ金箔文字。 
 
 
上流面
これで常時満水位


減勢工と放流設備。

 
アングルを変えて
放流設備も武家屋敷風
写真正面奥に夏期限定営業の瓜田自然プールがあり営業期間中はダム下にも立ち入れるようです。

 
貯水池は総貯水容量74万立米
治水ダムですが目的がFNなので不特定利水及び堆砂容量分が貯留されています。

 
右岸から。


天端越しに
こちらから見ると本当の城跡の様。


上流面。
取水設備が見当たりませんが、どうやら城の向こう側にあるようです。

 
城郭風の管理事務所はもとより天端の意匠にも結構お金をかけています。
ダム建設着工は1992年(平成4年)なので、バブルの余韻が残り無駄なことにお金を使う余裕があったんでしょう。
 
(追記)
瓜田ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2841 瓜田ダム(1710)
宮崎県宮崎市高岡町小山田
大淀川水系瓜田川
FN
42メートル
160.4メートル
720千㎥/620千㎥
宮崎県県土整備部
1998年
◎治水協定が締結されたダム

東原調整池

2021-10-23 17:06:17 | 宮崎県
2021年10月16日 東原調整池
 
東原(ひがしばる)調整池は宮崎県西都市穂北、右岸が同市茶臼原にある灌漑目的のアースフィルダムです。
農水省による国営一ツ瀬川かんがい排水事業の農業調整池として1980年(昭和55年)に竣工、運用開始後は一ツ瀬川土地改良区が管理を受託しています。
自己集水域を持たない河道外貯留方式の農業調整池で、一ツ瀬川の杉安ダム湖にある杉安取水口及び支流の瀬江川頭首工で取水された水をいったん当調整池に貯留したのち、約3500ヘクタールの水田・畑地に灌漑用水を供給します。 
ダム建設地点は透水性の高い火山灰土壌となっており、建設に際しては透水対策として貯水池全面を難透水性材料で被覆するブランケット工法が採用されました。
 
ダム下流から
ここから見る限りは普通のアースフィルダム。

下流面は上段と下段で草刈り時期を変えているのか?緑と茶色のツートンカラー。

天端からの眺め。

右岸ダムサイトから
堤体は貯水池の南側から東側にJの字に盛り立てられ堤頂長は303メートルに及びます。


右岸ダムサイトに建つ竣工記念碑。
輪切りのダクタイル鋳鉄管が使われています。

天端
調整池の周りは舗装された周回路になっていますが天端から東部分は車両進入禁止。
周回道路は公式の自転車ロードレース会場として使われます。


貯水池は総貯水容量99万8000立米ですべて一ツ瀬川および瀬江川からの導水で賄っています。
透水性が高い地盤のため貯水池全面が難透水性材料で被覆されています。

用水管理センターを兼ねた土地改良区事務所。


土地改良区事務所入り口わきのモニュメント。
幹線水路で使用された実物のダクタイル鋳鉄管が並びます。

 
右岸にある一ツ瀬川からの杉安導水路流入口。
山の西側の中原ポンプ場から揚水して貯留されます。

 
こちらは調整池北側の瀬江川導水路流入口。

 
調整池の西850メートルにある中原ポンプ場
東原調整池と標高差が約120メートルあり、ここからポンプアップして調整池に貯留します。

河道外貯留ダムのためか?洪水吐は見当たりませんでした。

2836 東原調整池(1709)
左岸 宮崎県西都市穂北
右岸     同市茶臼原
一ツ瀬川水系一ツ瀬川
21メートル
303メートル
998千㎥/910千㎥
一ツ瀬川土地改良区
1980年

松尾ダム

2021-10-23 10:02:41 | 宮崎県
2021年10月16日 松尾ダム
 
松尾ダムは宮崎県児湯郡木城町中ノ又の一級河川小丸川中流部にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1935年(昭和10年)に内務省は河川総合開発の先駆となる『河水統制事業』を採択し全国で治水・利水を一貫した河川開発が実施されることとなりました。
宮崎県では1938年(昭和13年)に県電気建設部により小丸川の治水と発電を目的とした『小丸川河水統制事業』が採択され、4基のダムおよび発電所の建設が着手されました。
このうち浜口ダム(現川原ダム)と川原発電所、戸崎ダムと石河内第二発電所は1940年(昭和15年)に完成しますが直後に日本発送電に接収され、電気事業再編成により1951年(昭和26年)に九州電力が事業を継承しました。 
ついで当ダムおよび石河内第一発電所が1939年(昭和14年)に着工されますが戦況悪化により事業は中断、戦後国庫補助を受けて事業が再開され1951年(昭和26年)に完成しました。
松尾ダムは小丸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、宮崎県企業局石河内第一発電(最大2万2200キロワット)でのダム水路式発電を目的としています。
小丸川河水統制事業は1956年(昭和31年)の渡川ダムおよび渡川発電所の竣工をもってすべて完了に至りますが、日本発送電の接収もあり石河内第一発電所は宮崎県企業局、第二発電所は九州電力と同水系の同名の第一発電所と第二発電所で事業者が異なる結果となりました。
 
下流の戸崎ダムから県道22号線を北上すると松尾ダムに到着します。
途中樹間からダムを垣間見れますが、写真撮影に耐えるものではありません。
下流面もダム手前のこれが精いっぱい、落葉すれば少しは視界がよくなるんでしょう。
 
ダムサイトからもフェンス越しの撮影となります。
クレストにはラジアルゲート10門を擁していますが見るすべはありません。
天端は渡川ダム綾南ダム岩瀬ダムなど宮崎県営ダムではおなじみ、コルゲートパイプを利用したチューブ状のシェルターで被覆されています。
 
堤頂部をズームアップ。
 
天端
高欄はダイダイゴケなどで茶色に変色、時代感に拍車がかかります。
 
上流面。
 
もう少し上流に行けばゲートを見ることができたのですが、訪問時は管理事務所の改修工事のため叶いませんでした。
 
こちらは石河内第一発電所への取水ゲート
これまた木に邪魔されます。
 
宮崎県営ダムは見学には厳しいダムが多いのですが、ここもその一つ。
もりみず旬間等で見学会など実施していただければいいのですが?
 
(追記)
松尾ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2814 松尾ダム(1708)
宮崎県児湯郡木城町中ノ又
小丸川水系小丸川
FNP
68メートル
165.5メートル
45202千㎥/33699千㎥
宮崎県県土整備部
1951年
◎治水協定が締結されたダム

戸崎ダム

2021-10-23 04:29:21 | 宮崎県
2021年10月16日 戸崎ダム
 
戸崎ダムは宮崎県児湯郡木城町石河内の一級河川小丸川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから、戦前から各河川で活発な電源開発が進められてきました。
小丸川水系では1938年(昭和13年)に県による小丸川河水統制事業が着手され宮崎県電気部(現宮崎県企業局)による電源開発が進められました。
まず1940年(昭和35年)に浜口ダム(現川原ダム)と川原発電所が完成、次いで1943年(昭和18年)に完成したのが戸崎ダムと石河内第二ダムです。
しかし完成直後に一連の発電施設は日本発送電に接収され、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業を継承しました。
戸崎ダムで取水された水は石河内第二発電所に送られ最大1万8000キロワットのダム水路式発電を行います。
なお小丸川河水統制事業として戦後、石河内第一発電所が県企業局の手で完成しました。この結果同水系の同名の第一発電所と第二発電所で事業者が異なる状況となっています。
さらに当ダムすぐ下流では2007年(平成19年)に最大出力120万キロワットの揚水式発電を行う九州電力小丸川発電所が完成しました。
地下の発電所から戸崎発電所に隣接して建設されたひむか変電所に通じる電気ケーブルが戸崎ダム直上をトラス橋で跨ぐことになり独特の景観を作り出しています。
小丸川発電所概要図(九州電力HPより)
 
全面越流式ダムで、対岸に発電所への取水口があります。

 
ダム左岸から伸びるコンクリート構造物がトラス橋で対岸へと渡ります。
てっきり職員用の管理通路かと思っていましたが、調べると小丸川発電所からひむか変電所へ通じる電気ケーブルでした。


 
取水口をズームアップ。
2門の取水ゲートはキャタピラゲート。

 
電気ケーブルのトラス橋直上にはアーチ橋の戸崎橋が架かっており、土木好きにはたまらない構図となっています。

 
アーチの戸崎僑
左岸に県道バイパスができたため、利用者は少なくなっています。

 
トラス橋越しに見た堤体上流面。

 
貯水池はほぼ満水。
左岸の様子を見るにかなり堆砂が進んでいるようです。

 
取水口と堰堤右岸のピア。
また堰堤右岸にはゲートピアが残りますがゲートはありません。
もとはゲート装備だったのが撤去され全面越流式になったようです。

 
(追記)
戸崎ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2813 戸崎ダム(1707)
宮崎県児湯郡木城町石河内
小丸川水系小丸川
25メートル
115メートル
544千㎥/408千㎥
九州電力(株)
1943年
◎治水協定が締結されたダム