ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

荒瀬ダム

2021-10-26 23:41:47 | 鹿児島県
2021年10月17日 荒瀬ダム
 
荒瀬ダムは鹿児島県肝属郡肝付町波見の肝属川水系荒瀬川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
肝属中部地区は県内有数の農業地帯でありながら透水性の高いシラス台地が広がり水利に乏しく不安定な農業経営を強いられてきました。
1997年(平成9年)に農水省による国営肝属中部地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2018年(令和元年)に竣工したのが荒瀬ダムです。
事業全体も同年完了し約1500ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備されたことで農業経営の規模の拡大や経営効率化による採算向上が期待されます。
管理は肝属中部土地改良区が受託しています。
また灌漑用水路の落差を利用し荒瀬ダム発電所(最大291キロワット)で小水力発電を行っています。
 
ダム下から
堤高65.6メートル、右岸を洪水吐斜水路を流下します。
白い建屋は河川維持放流設備。
受益農地への供給は専用水路で行われるため、ここでは河川維持放流のみ。


左手は荒瀬川支流の沢ですが、ダム建設中はこの沢経由で仮排水が行われました。

 
こちらは灌漑用水を利用した荒瀬ダム発電所
最大281キロワットの小水力発電を行います。

 
左岸から下流面
堤高65.5メートル
堤頂長407.4メートルの堤体。
竣工してまだ4年ですが、リップラップにはずいぶん草が・・・。

 
ダムサイトには各種説明板や記念碑が並びます。
こちらは幹線水路で使用されたダクタイル鋳鉄管。
宮崎県西都市の東原調整池でも鋳鉄管が展示されていました。

 
農業水利事業の完工記念碑。
九州らしく金箔文字。

水利使用標識
畑地灌漑のため水利権は年間を通じ配分されています。


こちらは小水力発電の水利使用標識。


右岸から超広角で
洪水吐斜水路が長い!



 
天端は立ち入り禁止。
右岸から左岸、左岸から右岸に行くにはいったんダム下まで回りこむ必要があります。

 
右岸の横越流式洪水吐。
満水で薄く越流しています。

 
洪水吐越しの上流面
総貯水容量は257万立米と、周辺の農業ダムの中では小ぶり。

 
左岸には立派な管理事務所、艇庫、斜樋が並びます。
三角屋根の管理棟は国営事業で2007年に竣工した曽於市の中岳ダム管理棟とうり二つ。

 
(追記)
荒瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3031 荒瀬ダム(1719)
鹿児島県肝属郡肝付町波見
肝属川水系荒瀬川
65.6メートル
407.5メートル
2580千㎥/2180千㎥
肝属中部土地改良区
20187年
◎治水協定が締結されたダム

高隈ダム

2021-10-26 15:00:53 | 鹿児島県
2021年10月17日 高隈ダム
 
高隈ダムは鹿児島県鹿屋市上高隈町の肝属川水系串良川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
笠野原地区は大隅半島の中央部に位置し、南北16キロ、東西12キロ、総面積6300ヘクタールに及ぶ九州南部最大のシラス台地となっています。
シラス台地は透水性の高い火山灰土壌で形成され、水利に乏しく灌漑施設の整備は同地区農家の長年の悲願となってきました。
農林省(現農水省)は1958年(昭和33年)より国営畑地かんがい事業第1号となる笠野原地区かんがい排水事業に着手、その灌漑用水源として1967年(昭和42年)に竣工したのが高隈ダムです。
事業全体も1969年(昭和44年)に完了、約4800ヘクタール(現在は約2500ヘクタール)の畑地の灌漑設備が整備され鹿児島県有数の農業生産地に発展しました。
管理は笠野原土地改良区が受託しています。
また2001年(平成13年)には灌漑導水路の落差を利用した高隈ダム発電所(最大820キロワット)による小水力発電が稼働しました。
 
高隈ダムは国道594号線沿いにあります。
下流から正対できる場所はなく下流面はこのアングルのみ、
クレストにジアルゲート4門装備。
左岸側の導流部に河川維持放流用の放流管が2条あり、そのうち1条から放流されています。
その右手の鉄管は2001年(平成13年)に増設された高隈ダム発電所への水圧鉄管です。
 
ゲートをズームアップ。
 
放流管と水圧鉄管。
 
全国での畑かん事業第1号の竣工を称え、左岸の小公園には各種記念碑や水神が立ち並びます。
農業用ダムではおなじみ、農政局長揮毫の記念碑。
 
左は水神、右はその祭文が記されています。
 
農業水利事業の概要碑。
 
管理事務所の水利使用標識
事業竣工当初のかんがい面積は4800ヘクタールでしたが、現在は2452ヘクタール。
ほぼ半減。
 
上流面
灌漑対象が畑地のため年間を通じて水利権の配分があり10月でも満水。
 
かつては天端からダム湖右岸に車道が通じており車の通行もできました。
現在は災害により通行できず天端への立ち入りも禁止。
今回は写真を撮るだけということで徒歩で立ち入りさせていただきました。
右岸湖岸に取水設備がありますが、上記のような理由で写真撮影は叶わず。
 
後付けの水圧鉄管
小水力発電所はダム式ではなく、導水路の落差を利用したダム水路式です。
 
減勢工はシュートブロック、バッフルピア、エンドシルの3点セット。
 
旧国名から『大隅湖』と命名されたダム湖。
総貯水容量1393万立米は西日本の農業用ダムとしては屈指の規模
かつては湖岸で遊覧船なども営業していたようですが、今は昔。
 
(追記)
高隈ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2863 高隈ダム(1718)
鹿児島県鹿屋市上高隈町
肝属川水系串良川
47メートル
136メートル
13930千㎥/11630千㎥
笠野原土地改良区
1967年
◎治水協定が締結されたダム

輝北ダム

2021-10-26 07:51:01 | 鹿児島県
2021年10月17日 輝北ダム
 
輝北(きほく)ダムは鹿児島県鹿屋市輝北町平房の菱田川水系大鳥川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
曽於南部地区は大隅半島の中央部に位置し県内有数の農業地帯ですが、農地の大半は南九州特有の透水性の高いシラス台地で占められており水利に乏しく、畜産と小規模な畑作営農を強いられていました。
1990年(平成2年)に農水省による国営曽於南部地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2005年(平成17年)に竣工したのが輝北ダムです。
事業全体も2008年(平成20年)に完了し、約4000ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備されました。
これにより経営規模の拡大や作物転換がはかられ県内随一の畜産地帯に発展するとともに茶生産でも茶王国鹿児島を支える有力生産地となっています。
管理は曽於南部土地改良区が受託しています。
また利水放流を利用した輝北ダム発電所で最大400キロワットの小水力発電を行っています。
 
ダム下から
洪水吐はクレスト自由越流頂4門、農業用ダムとしては珍しく堤趾導流壁を備えています。
右手は小水力発電所。


導流壁の形状が愛媛の志河川ダムと似ています。


ダムサイトからはこれが精いっぱい。
満水で薄く越流しています。


上流面
四角が際立つ取水設備。


左岸の繋留用浮桟橋と巡視艇。


事業説明板
受益面積は約4000ヘクタール、パイプラインの延長は96キロにも及びます。


水利使用標識。
灌漑対象はすべて畑地のため年間を通じて水利権が配分されています。

まっすぐ伸びるのは取水設備から揚水機場への鉄管
斜面を下るのは電気ケーブル。


満水のため薄く越流
転波が見られます。

 
総貯水容量は820万立米。
湖面は漕艇場としても利用され2023年(令和5年)の鹿児島国体の漕艇競技会場になりました。


アングルを変えて
高台に管理事務所、手前の白い建屋は低水放流設備、奥は小水力発電所と輝北揚水機場。
減勢工にはバッフルピアが2列並び、下流にエンドシル。
管理事務所には土地改良区の職員さんが常駐します。


小水力圧電所
河川維持放流を利用して発電します。


天端は車道。


(追記)
輝北ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2878 輝北ダム(1717)
鹿児島県鹿屋市輝北町平房
菱田川水系大鳥川
41.9メートル
114メートル
8200千㎥/6350千㎥
曽於南部土地改良区
2005年