ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

浜ノ瀬ダム

2021-10-24 23:42:57 | 宮崎県
2021年10月17日 浜ノ瀬ダム 
 
浜ノ瀬ダムは左岸が宮崎県小林市須木島田町、右岸が同市東方の大淀川水系岩瀬川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
西諸地区は火山活動による火砕流台地であるシラス台地が広がり、地味は豊かながら水利に乏しく、生産性向上のため灌漑設備の整備が強く求められていました。
1996年(平成8年)に農水省による国営西諸地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2014年(平成26年)に竣工したのが浜ノ瀬ダムです。
事業全体も2018年(平成30年)に完了し西諸地区約4100ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備されました。
ダムの管理は西諸土地改良区が受託し、ダム完成に合わせて河川維持放流を利用した浜ノ瀬ダム発電所(最大出力1790キロワット)の小水力発電も稼働しています。
 
小林市中心部から国道265号線経由で約25キロ、40分のドライブで浜ノ瀬ダムに到着します。
左岸高台に展望台があり、ダムや貯水池を俯瞰できます。
このダムもシラス地帯に位置するためか?ダムを囲む山留にかなりの苦労がうかがえます。

 
同じ位置からカメラをずらすと
クレスト自由越流頂7門と漸縮型堤体導流壁といういかにも農水省のダムらしいフォルム。
総貯水容量は1030万立米と西日本の農業用ダムでは屈指のスケール。
左岸に大きな駐車場があります。
気になるのは写真右手、湖岸の地滑り。

 
新しいダムですが、上記地滑りの影響で濁水が発生しており導流部がかなり汚れています。

堤体から減勢工に続く導流壁のデザインがちょっと愛媛の志河川ダムに似ている。

 
水利使用標識
かんがい面積は4162ヘクタールとかなり広大
受益農地の大半が畑地のため年間を通じて水利権が配分されています。

下流面。

 
左岸から減勢工
高台の建屋は調圧水槽、下段右手が放流設備で左が浜ノ瀬ダム発電所。

上流面と四角い取水設備

 
天端から下流を見下ろします。
減勢工はシュートブロックとエンドシルの組み合わせ
右手手前が放流設備で奥が小水力の浜ノ瀬ダム発電所
小水力とはいえフランシス水車2基で最大1790キロワットの電気をたたき出します。
右手高台の建屋は調圧水槽。

 
総貯水容量は農業用ダムとしては屈指の1000万立米越え。
正面で地滑りが起きています。

天端は徒歩のみ開放
左岸には管理事務所と繋留施設
管理事務所には職員さんが常駐され管内は立ち入り禁止ですが、裏側のきれいなトイレは開放されています。

 
右岸から
特徴的な堤体導流壁に目が向きます。
やはり志河川ダムに似てる。

 
ダム周辺の山留や湖岸の地滑りなどを見ると厄介な地盤のダムであることが伺えます。
総貯水容量1030万立米ですが、農業用ダムとしては大きな2080万立米の堆砂容量が設定されているのも、そのあたりの事情を受けてのものなんでしょう。
 
(追記)
浜ノ瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3231 浜ノ瀬ダム(1713)
左岸 宮崎県小林市須木島田町
右岸     同市東方
大淀川水系岩瀬川
62.5メートル
183メートル
10300千㎥/7500千㎥
西諸土地改良区
2014年
◎治水協定が締結されたダム

大淀川第二調整池

2021-10-24 15:30:01 | 宮崎県
2021年10月16日 大淀川第二調整池 
 
大淀川第二調整池は宮崎県宮崎市高岡町浦之名にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なため、戦前から各河川で電源開発が進められてきました。
大淀川では電気化学工業(現デンカ)及び同社傘下の大淀川水力電気により電源開発が進められ、1925年(大正14年)の大淀川第一発電所に次いで1931年(昭和6年)に高岡ダムおよび大淀川第二発電所が完成しました。
併せて第二発電所の上部調整池として同年完成したのが当調整池で、大淀川の高岡ダムで取水された水がいったんここで貯留されたのち発電所に送られます。
一連の発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しています。
 
大淀川第二調整池には九州電力関連企業のリサイクルセンターが隣接しています。
同センターも含めて敷地全体が立ち入り禁止。
 
これがダムの堤体。
 
さらにズームアップ。
放流ゲートの操作バルブが見えます。
 
リサイクルセンターも厳重にガード
ダムで捕捉した流木などの処理を行うようです。
 
フェンス際に建つ『第二調整池ダム』の標柱。

2805 大淀川第二調整池(1712)
宮崎県宮崎市高岡町浦之名
21.8メートル
149.1メートル
242千㎥/230千㎥
九州電力(株)
1931年

広沢ダム

2021-10-24 07:29:11 | 宮崎県
2021年10月16日 広沢ダム
 
広沢ダムは宮崎県東諸県郡綾町南俣の大淀川水系浦之名川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
大淀川左岸地区の農地は火山灰土壌で形成された畑地帯と沖積平野の水田に二分されますが、共に水利に乏しいため生産性が低く灌漑設備の整備が強く求められていました。
1978年(昭和53年)に農水省による国営大淀川左岸地区土地改良事業が着手され、その灌漑用水源として2000年(平成11年)に広沢ダムが完成しました。
土地改良事業も2005年(平成17年)に竣工し、3市町村にまたがる約1300ヘクタールの農地に灌漑用水が供給されています。
またダムは運用開始後、宮崎市・小林市・綾町が受託管理者となっていますが実際の管理は宮崎市に委任されています。
 
宮崎と小林を結ぶ国道268号線えびのスカイラインに広沢ダムへの案内板があり、これに従って浦之名川沿いを北西に約7キロ進むと広沢ダムに到着します。
堤高62.7メートル、堤頂長199メートルと農業用ダムとは思えない立派な堤体。
クレストには自由越流頂11門がずらっと並び、農業用ダムでは珍しく両岸に堤趾導流壁を備えています。

 
ダム下の調圧水槽。

 
左岸から
逆光で露出が難しい

 
天端親柱の不思議な彫刻?
何をモチーフにしたんでしょう?

 
左岸ダムサイトの水利使用標識と水神。

 
上流面
巨大な四角形の取水設備。

 
天端からダム下を見下ろすと
減勢工にはバッフルピアが2列、さらにその下流に副ダムがあります。
よく見ると背の高い副ダムの向こうにもう一つ副ダムが。
その下流には河川維持放流を利用した小水力発電所があります。


大淀川左岸土地改良区が管理する広沢ダム発電所
利水放流を利用する小水力発電所ですが、有効落差55.8メートルを生かし最大出力640キロワットと小水力とは思えない出力を誇ります。


高台の管理事務所。

 
天端は車両通行可能。 
右岸の林道へと続きます。

農業用コンクリートダムでは堤体導流壁が多いのですが、ここは堤趾導流壁。

 
右岸から上流面
11門のクレスト自由越流頂が並びます。

 
ダム湖は総貯水容量510万立米
ダム便覧では水上スキーのメッカと記されていますがその気配はなし。


 (追記)
広沢ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2838 広沢ダム(1711)
宮崎県東諸県郡綾町南俣
大淀川水系浦之名川
62.7メートル
199メートル
5100千㎥/3800千㎥
宮崎市(小林市・綾町より管理を委任)
2000年
◎治水協定が締結されたダム