ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

菅の沢ダム

2022-12-08 21:21:40 | 秋田県
2022年10月24日 菅の沢ダム
 
菅の沢ダムは秋田県能代市大森の馬場目川水系鵜川川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
現地記念碑によれば、現在の山本郡三種町志度橋及び割道地区の新規農地開墾に合わせて1918年(大正7年)に竣工、翌大正8年より供用が開始されました。
一方で貯水池の所有権をめぐる紛争が昭和50年代まで継続、その間老朽化による漏水等により溜池の存続が危惧される状況となりました。
1978年(昭和53年)に紛争が結審したことを受け、1980年(昭和55年)より県営ため池等整備事業菅の沢地区が着手され1991年(平成3年)に同事業が竣工し現在に至っています。
ダムは受益者で組織される志度橋・割道共同水利組合が管理し、約140ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
なおダム便覧では竣工が1912年(明治45年)となっていますが、この根拠は不明なためここでは竣工記念碑の1918年を採用します。

能代市大森地区から鵜川川沿いの農道を約1.7キロ南東に向かうと菅の沢ダムに到着します。
ダムは能代市に位置しますが、受益地となる志度橋・割道両区は隣接する三種町となります。
堤高は15.8メートル、前面傾斜コア型アースダムです。


貯水池側に柵が設置されていますが、天端への立ち入り規制はありません。


上流面はコンクリートで護岸。


天端から。


提体の階段を下りてみます。
左岸を洪水吐導流部が流下します。
夏に草が刈られたようですが、ダム下は草が伸び底樋管は確認できませんでした。


総貯水容量32万立米。
貯水池の土地所有権があいまいなまま建設されたことから、紛争が60年近く継続しました。


左岸の斜樋。


左岸から上流面
秋田らしく対岸には杉林。


左岸に建つ改修工事の記念碑。
ダムの由来が詳細に書かれています。こういうの本当にありがたい。


洪水吐導流部
減勢工にバッフルブロックが並びます。


横越流式洪水吐。

3389 菅の沢ダム(1909)
ため池コード
秋田県能代市大森
馬場目川水系鵜川川
16メートル(ため池データベース15.8メートル)
111メートル(ため池データベース119メートル)
320千㎥/320千㎥ 
志戸橋・割道水利組合
1918年

水沢ダム

2022-12-08 14:08:46 | 秋田県
2022年10月24日 水沢ダム
 
水沢ダムは秋田県山本郡八峰町峰浜の水沢川本流にある秋田県建設部が管理する多目的ロックフィルダムです。
水沢川は白神山地に源を発する流路延長約20キロの二級河川で、古くから流域の貴重な水源となってきましたが、渇水による干ばつや洪水被害が多く防災や安定した灌漑水源確保が求められていました。
1977年(昭和52年)に秋田県農林水産部は農水省の補助を受けた県営防災ダム事業及び県営かんがい排水事業山本郡地区に着手、1994年(平成6年)に竣工したのが水沢ダムです。
水沢ダムは水沢川流域398ヘクタールの農地防災、488ヘクタールへの灌漑用水の供給を目的とし、運用開始後は県建設部が管理を受託しています。
建設部が管理していますが、農水省の補助事業で建設されたため補助多目的ダムとはなりません。
一般に農水省補助事業で建設された農地防災ダムは農林水産系部署や受益自治体が管理を受託することが多いのですが、当ダムは建設部が受託管理している点がポイントです。

アプローチとなる町道が右岸ダムサイトに通じています。
残念ながらダムを下流から正対するポイントはありません。
先ずは右岸側の洪水吐を跨ぎます。


非常用洪水吐となる右岸の円形越流式洪水吐
越流した水は上の写真へと流下します。
奥に管理事務所や取水設備などが見えます。


洪水吐と堤体の間にある管理事務所。
普段は職員の常駐はないようですが、訪問時は電気系の工事が行われており職員が駐在されていました。


こちらは取水設備建屋
この向こう側に取水設備があるのですが、残念ながら見ることはできません。


下流面
全般に薄く草が生えていますが、意図的に芝を張った感じ。


天端は徒歩のみ立ち入り可能。
堤頂長は235メートルになります。


上流面
手前は艇庫。


ダム湖は峰水(ほうすい)湖で総貯水容量は300万1000立米。
奥に聳えるのが水源となる水沢山でその奥は白神山地核心部へと続きます。


ダム手前の分岐を辿るとダム直下に出ました。
特に立ち入り禁止等の規制はありません。
左が洪水吐導流部、右手は常用洪水吐を兼ねる取水設備からの水路。


左奥に取水設備からの吐口がありバッフルブロックを経て水沢川に流下します。
灌漑用水は当ダムから伸びる大久保岱用水路と水沢川下流の先堰用水路の2系統になっており、写真右手のバルブで分水します。

上からの写真をズームアップすると。
右上方に続くのが大久保岱用水。
現在は非灌漑期のため放流水はすべて水沢川へと流します。

 
0390 水沢ダム(1908)
秋田県山本郡八峰町峰浜
水沢川水系水沢川
FA
46.5メートル
235メートル
3001千㎥/2596千㎥
秋田県建設部
1994年