ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

矢櫃ダム

2022-12-20 18:00:00 | 岩手県
2022年10月21日 矢櫃ダム
 
矢櫃ダムは岩手県岩手郡雫石町西安庭の北上川水系矢櫃川にある農地防災目的のロックフィルダムです。
雫石町南西部の御所地区(旧御所村)では地区を南北に貫流する鶯宿川、南畑川、外桝沢川、矢櫃川沿いに1000ヘクタールを超える農地が広がっていますが、4河川ともに蛇行を繰り返す急流河川となっており豪雨の際には洪水被害が頻発していました。
そこで岩手県は1950年(昭和25年)に農林省(現農水省)の補助を受けた御所防災ダム事業を採択、各河川上流部への4基の農地防災ダム建設が着手されました。
そして1957年(昭和32年)の鶯宿ダム、1961年(昭和36年)の外桝沢ダム、1968年(昭和43年)のレン滝ダムに次いで1981年(昭和56年)に完成したのが矢櫃ダムです。
当ダムの完成により事業着手から31年の年月をかけた御所防災ダム事業はようやく竣工に至りました。
4ダムは完成後は雫石町が管理を受託し、4河川流域約670ヘクタールの農地防災を担っています。

御所湖から矢櫃川沿いの県道を約8キロ南下すると矢櫃ダムに到着します。
他の御所防災ダムはいずれも重力式コンクリートダムなのに対し、ここは唯一ロックフィル。
右岸ダムサイトに広大な広場があり3ダムとは様相が異なります。
対岸には安山岩の断崖。


右岸の洪水吐越しに下流面を望む。
ロックフィルですが下流面は芝が張られています。
寒冷地でよく見られる凍上対策と思われます。


アングルを変えて
堤高33.5メートルで提体はさらに下方に続きますが、地山が邪魔で全貌は見えません。


洪水吐導流部
この先でさらに流下します。


他の3ダムとは異なり立派な竣工記念碑が設置されています。


洪水吐に架かる管理橋の先に天端が続きますが、残念ながらこの先は立ち入り禁止。


右岸の横越流式洪水吐
奥の建屋は艇庫。


上流から
洪水吐の先の取水塔は常用洪水吐となる放流設備。


上流面はもちろんロックフィル。


艇庫とインクライン
普段ダム湖に水を溜めない防災専用ダムですので、巡視艇が出るのは洪水調節後ダム湖に水が堪った時だけ。


総貯水容量92万7000立米のうち堆砂容量17万立米分だけ貯留されているはずですが、ここからは見えません。
取水塔の基部に孔あき方式の常用洪水吐があり平時は流入量はそのまま放流されます。


なお岩手県内には一関市に同名の砂防ダムがあり、ダム便覧でも誤った写真が投稿されています。
こちらは河川法のダムですが、一関の物件は砂防ダムとなりダム便覧への掲載もありません。

(追記)
矢櫃ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0254 矢櫃ダム(1924)
岩手県岩手郡雫石町西安庭 
北上川水系矢櫃川 
 
 
33.5メートル 
140メートル 
927千㎥/757千㎥ 
雫石町 
1981年
◎治水協定が締結されたダム