ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

高隈ダム

2021-10-26 15:00:53 | 鹿児島県
2021年10月17日 高隈ダム
 
高隈ダムは鹿児島県鹿屋市上高隈町の肝属川水系串良川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
笠野原地区は大隅半島の中央部に位置し、南北16キロ、東西12キロ、総面積6300ヘクタールに及ぶ九州南部最大のシラス台地となっています。
シラス台地は透水性の高い火山灰土壌で形成され、水利に乏しく灌漑施設の整備は同地区農家の長年の悲願となってきました。
農林省(現農水省)は1958年(昭和33年)より国営畑地かんがい事業第1号となる笠野原地区かんがい排水事業に着手、その灌漑用水源として1967年(昭和42年)に竣工したのが高隈ダムです。
事業全体も1969年(昭和44年)に完了、約4800ヘクタール(現在は約2500ヘクタール)の畑地の灌漑設備が整備され鹿児島県有数の農業生産地に発展しました。
管理は笠野原土地改良区が受託しています。
また2001年(平成13年)には灌漑導水路の落差を利用した高隈ダム発電所(最大820キロワット)による小水力発電が稼働しました。
 
高隈ダムは国道594号線沿いにあります。
下流から正対できる場所はなく下流面はこのアングルのみ、
クレストにジアルゲート4門装備。
左岸側の導流部に河川維持放流用の放流管が2条あり、そのうち1条から放流されています。
その右手の鉄管は2001年(平成13年)に増設された高隈ダム発電所への水圧鉄管です。
 
ゲートをズームアップ。
 
放流管と水圧鉄管。
 
全国での畑かん事業第1号の竣工を称え、左岸の小公園には各種記念碑や水神が立ち並びます。
農業用ダムではおなじみ、農政局長揮毫の記念碑。
 
左は水神、右はその祭文が記されています。
 
農業水利事業の概要碑。
 
管理事務所の水利使用標識
事業竣工当初のかんがい面積は4800ヘクタールでしたが、現在は2452ヘクタール。
ほぼ半減。
 
上流面
灌漑対象が畑地のため年間を通じて水利権の配分があり10月でも満水。
 
かつては天端からダム湖右岸に車道が通じており車の通行もできました。
現在は災害により通行できず天端への立ち入りも禁止。
今回は写真を撮るだけということで徒歩で立ち入りさせていただきました。
右岸湖岸に取水設備がありますが、上記のような理由で写真撮影は叶わず。
 
後付けの水圧鉄管
小水力発電所はダム式ではなく、導水路の落差を利用したダム水路式です。
 
減勢工はシュートブロック、バッフルピア、エンドシルの3点セット。
 
旧国名から『大隅湖』と命名されたダム湖。
総貯水容量1393万立米は西日本の農業用ダムとしては屈指の規模
かつては湖岸で遊覧船なども営業していたようですが、今は昔。
 
(追記)
高隈ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2863 高隈ダム(1718)
鹿児島県鹿屋市上高隈町
肝属川水系串良川
47メートル
136メートル
13930千㎥/11630千㎥
笠野原土地改良区
1967年
◎治水協定が締結されたダム

輝北ダム

2021-10-26 07:51:01 | 鹿児島県
2021年10月17日 輝北ダム
 
輝北(きほく)ダムは鹿児島県鹿屋市輝北町平房の菱田川水系大鳥川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
曽於南部地区は大隅半島の中央部に位置し県内有数の農業地帯ですが、農地の大半は南九州特有の透水性の高いシラス台地で占められており水利に乏しく、畜産と小規模な畑作営農を強いられていました。
1990年(平成2年)に農水省による国営曽於南部地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2005年(平成17年)に竣工したのが輝北ダムです。
事業全体も2008年(平成20年)に完了し、約4000ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備されました。
これにより経営規模の拡大や作物転換がはかられ県内随一の畜産地帯に発展するとともに茶生産でも茶王国鹿児島を支える有力生産地となっています。
管理は曽於南部土地改良区が受託しています。
また利水放流を利用した輝北ダム発電所で最大400キロワットの小水力発電を行っています。
 
ダム下から
洪水吐はクレスト自由越流頂4門、農業用ダムとしては珍しく堤趾導流壁を備えています。
右手は小水力発電所。


導流壁の形状が愛媛の志河川ダムと似ています。


ダムサイトからはこれが精いっぱい。
満水で薄く越流しています。


上流面
四角が際立つ取水設備。


左岸の繋留用浮桟橋と巡視艇。


事業説明板
受益面積は約4000ヘクタール、パイプラインの延長は96キロにも及びます。


水利使用標識。
灌漑対象はすべて畑地のため年間を通じて水利権が配分されています。

まっすぐ伸びるのは取水設備から揚水機場への鉄管
斜面を下るのは電気ケーブル。


満水のため薄く越流
転波が見られます。

 
総貯水容量は820万立米。
湖面は漕艇場としても利用され2023年(令和5年)の鹿児島国体の漕艇競技会場になりました。


アングルを変えて
高台に管理事務所、手前の白い建屋は低水放流設備、奥は小水力発電所と輝北揚水機場。
減勢工にはバッフルピアが2列並び、下流にエンドシル。
管理事務所には土地改良区の職員さんが常駐します。


小水力圧電所
河川維持放流を利用して発電します。


天端は車道。


(追記)
輝北ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2878 輝北ダム(1717)
鹿児島県鹿屋市輝北町平房
菱田川水系大鳥川
41.9メートル
114メートル
8200千㎥/6350千㎥
曽於南部土地改良区
2005年 

谷川内ダム

2021-10-25 23:41:53 | 鹿児島県
2021年10月17日 谷川内ダム
 
谷川内ダムは鹿児島県曽於市財部町北俣の大淀川水系大峯川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
曽於北部地区は透水性の高いシラス台地となっており稲作には不向きで零細な畑作営農を余儀なくされていました。
1996年(平成8年)に農水省による国営曽於北部地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2012年(平成24年)に竣工したのが谷川内ダムです。
事業全体も2014年(平成26年)に完了、約2000ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備され、農業経営の大規模化、効率化が図られています。
管理は曽於市が受託しています。

大規模農道『そおかいどう』から谷川内川沿いに西進するとダムに到着します。
ダム下にはゲートがありますがその位置が微妙。
せめてダムの全景だけでも見せてくれれば…
農水省のダムらしい漸縮型堤体導流壁を備えています。

 
ズームアップ。
せめてあと20メートル!

 
右岸から下流面
クレスト自由越流頂は5門。

対岸法面には多数のアンカー、その上部には建設時のケーブルクレーンの台座が鎮座。
一方擁壁にはソーラーパネが並びます。
これは曽於北部畑かん太陽光発電所で曽於北部土地改良区が管理し最大出力は352.8キロワット。

 
減勢工と放流設備。
受益農地への供給は専用水路を通じて行われます。


天端は立ち入り禁止。


右岸の竣工記念碑。

上流面と管理事務所
貯水池は総貯水容量217万立米と宮崎南部や大隅地域の農業用ダムの中では小ぶり。
補給対象が畑地のため年間を通じ水利権の配分があり10月でも満水。
流域面積14.1平方キロのうち自己流域は4.9平方キロに留まり、その過半は栗谷川からの導水によります。 

 
円形の取水設備。

 
右岸にはケーブルクレーン台座が残されています。
対岸法面上の台座との間でケーブルが渡されていました。

 

ちょっと薄汚れた事業説明板。

 
(追記)
谷川内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2884 谷川内ダム(1716)
鹿児島県曽於市財部町北俣
大淀川水系大峯川
58.5メートル
222メートル
2170千㎥/1920千㎥
曽於市
2012年
◎治水協定が締結されたダム

木之川内ダム

2021-10-25 16:14:04 | 宮崎県
2021年10月17日 木之川内ダム
 
木之川内(このかわうち)ダムは宮崎県都城市山田町山田の大淀川水系木之川内川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
都城盆地は広く霧島の火山堆積物で形成され、透水性が高く水利に乏しいため零細な畑作営農を余儀なくされていました。
1987年(昭和62年)に農水省による国営都城盆地かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2009年(平成21年)に完成したのが木之川内ダムです。
事業全体も2012年(平成24年)に完了し約4000ヘクタールに及ぶ畑地の灌漑設備が整備され農業経営の大規模化や採算性向上が図られています。
管理は都城市が受託しています。
 
県道42号都城野尻線に木之川内ダムを示す案内板があり、これに従うとダムに到着します。
下流から
堤体越しに霧島連峰の高千穂峰が頭を出しています。

 
左岸から下流面
堤高64.3メートル、堤頂長409.7メートルと西日本の農業用ロックフィルダムとしては相当のスケール。 
完成から10年ちょっとしかたっていないのにリップラップにはかなりの草が生えているのはちょっと残念。

天端は徒歩のみ開放。

 
ダムサイトの水利使用標識
流域面積23.5平方キロのうち8割弱の18.4平方キロが水利権のある庄内川からの導水に依ります。
かんがい面積は4000ヘクタール弱の畑地で、年間を通して水利権が配分されています。

 
総貯水容量は627万立米
貯水池越しの高千穂峰は本当に絵になります。
この眺めが見たいがために、当ダムの訪問は快晴を選びました。

 
ズームアップ。

 
右岸から下流面
洪水吐導流部が長く伸びます。

 
減勢工と放流設備・調圧水槽
受益地への供給はパイプラインが使われます。

洪水吐。


横越流式洪水吐。
 

上流面。


左岸の管理事務所、斜樋。

 
洪水吐を上流側から
白い敷石が青空に映えます。

 
ダムからの高千穂峰の眺めは秀逸です。
これだけの眺望なら観光スポットとしての活用法もあるんじゃないかと思うんですが、農業用施設だけいろいろ問題があるのでしょう。
でも本当にいいダムです。
 
(追記)
木之川内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2848 木之川内ダム(1715)
宮崎県都城市山田町山田
大淀川水系木之川内川
64.3メートル
409.7メートル
6270千㎥/6010千㎥
都城市
2009年
◎治水協定が締結されたダム

綾南ダム

2021-10-25 08:35:13 | 宮崎県
2021年10月17日 綾南ダム 
 
綾南ダムは宮崎県木林市須木下田の大淀川水系本庄川(綾南川)にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、本庄川(綾南川)の洪水調節、宮崎県企業局綾南発電所南機での最大1万3000キロワットのダム水路式発電を目的として1958年(昭和33年)に竣工しました。
 
小林市中心部から国道265号線経由で約21キロ、30分のドライブで綾南ダムに到着します。
ダム湖南岸を通る県道26号線沿いに展望スポットがあり、ダムを俯瞰できます。
クレストにラジアルゲート2門を装備、左岸が屈曲しています。
注目すべきはゲート巻き上げ機を被覆するコルゲートパイプを利用したチューブ状のシェルター
同じ宮崎県営ダムの松尾ダム渡川ダムでも同様のシェルターが設置されています。

左岸が屈曲。 
 
アングルを変えて 
対岸に管理事務所があり、宮崎県ダムではおなじみ民間委託の管理人さんが住み込みで駐在されています。 

天端親柱の『綾南堰堤』の銘版。 
 
 
こちらは諸元プレート。
 
奥に巡視船繋留用の浮桟橋が見えます。
さらに右奥、白い点が見えるところに綾第一発電所への取水口があります。
 
天端は車両通行可能
コルゲートパイプのチューブ状シェルターは巨大な猪用の罠のようです。
このシェルター、ダム完成直後からあったものではなく平成に入ってから後付けされたようです。
 
天端から減勢工
水中に没していますが副ダムが見えます。
 
ダム湖は『小野湖』
ダム湖は縦に長く続き総貯水容量は3800万立米。
 
管理事務所。
 
左岸から下流面。
 
ダム下から見れる場所がないなど見学スポットは少ないのですが、右岸高台からの屈曲したダムの俯瞰は個人的には非常に好みのアングルでした。
 
(追記)
綾南ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2819 綾南ダム(1714)
宮崎県小林市須木下田
大淀川水系本庄川
FP
64メートル
194.2メートル
38000千㎥/33900千㎥
宮崎県県土整備部
1958年
◎治水協定が締結されたダム

浜ノ瀬ダム

2021-10-24 23:42:57 | 宮崎県
2021年10月17日 浜ノ瀬ダム 
 
浜ノ瀬ダムは左岸が宮崎県小林市須木島田町、右岸が同市東方の大淀川水系岩瀬川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
西諸地区は火山活動による火砕流台地であるシラス台地が広がり、地味は豊かながら水利に乏しく、生産性向上のため灌漑設備の整備が強く求められていました。
1996年(平成8年)に農水省による国営西諸地区かんがい排水事業が着手され、その灌漑用水源として2014年(平成26年)に竣工したのが浜ノ瀬ダムです。
事業全体も2018年(平成30年)に完了し西諸地区約4100ヘクタールの畑地の灌漑設備が整備されました。
ダムの管理は西諸土地改良区が受託し、ダム完成に合わせて河川維持放流を利用した浜ノ瀬ダム発電所(最大出力1790キロワット)の小水力発電も稼働しています。
 
小林市中心部から国道265号線経由で約25キロ、40分のドライブで浜ノ瀬ダムに到着します。
左岸高台に展望台があり、ダムや貯水池を俯瞰できます。
このダムもシラス地帯に位置するためか?ダムを囲む山留にかなりの苦労がうかがえます。

 
同じ位置からカメラをずらすと
クレスト自由越流頂7門と漸縮型堤体導流壁といういかにも農水省のダムらしいフォルム。
総貯水容量は1030万立米と西日本の農業用ダムでは屈指のスケール。
左岸に大きな駐車場があります。
気になるのは写真右手、湖岸の地滑り。

 
新しいダムですが、上記地滑りの影響で濁水が発生しており導流部がかなり汚れています。

堤体から減勢工に続く導流壁のデザインがちょっと愛媛の志河川ダムに似ている。

 
水利使用標識
かんがい面積は4162ヘクタールとかなり広大
受益農地の大半が畑地のため年間を通じて水利権が配分されています。

下流面。

 
左岸から減勢工
高台の建屋は調圧水槽、下段右手が放流設備で左が浜ノ瀬ダム発電所。

上流面と四角い取水設備

 
天端から下流を見下ろします。
減勢工はシュートブロックとエンドシルの組み合わせ
右手手前が放流設備で奥が小水力の浜ノ瀬ダム発電所
小水力とはいえフランシス水車2基で最大1790キロワットの電気をたたき出します。
右手高台の建屋は調圧水槽。

 
総貯水容量は農業用ダムとしては屈指の1000万立米越え。
正面で地滑りが起きています。

天端は徒歩のみ開放
左岸には管理事務所と繋留施設
管理事務所には職員さんが常駐され管内は立ち入り禁止ですが、裏側のきれいなトイレは開放されています。

 
右岸から
特徴的な堤体導流壁に目が向きます。
やはり志河川ダムに似てる。

 
ダム周辺の山留や湖岸の地滑りなどを見ると厄介な地盤のダムであることが伺えます。
総貯水容量1030万立米ですが、農業用ダムとしては大きな2080万立米の堆砂容量が設定されているのも、そのあたりの事情を受けてのものなんでしょう。
 
(追記)
浜ノ瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

3231 浜ノ瀬ダム(1713)
左岸 宮崎県小林市須木島田町
右岸     同市東方
大淀川水系岩瀬川
62.5メートル
183メートル
10300千㎥/7500千㎥
西諸土地改良区
2014年
◎治水協定が締結されたダム

大淀川第二調整池

2021-10-24 15:30:01 | 宮崎県
2021年10月16日 大淀川第二調整池 
 
大淀川第二調整池は宮崎県宮崎市高岡町浦之名にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なため、戦前から各河川で電源開発が進められてきました。
大淀川では電気化学工業(現デンカ)及び同社傘下の大淀川水力電気により電源開発が進められ、1925年(大正14年)の大淀川第一発電所に次いで1931年(昭和6年)に高岡ダムおよび大淀川第二発電所が完成しました。
併せて第二発電所の上部調整池として同年完成したのが当調整池で、大淀川の高岡ダムで取水された水がいったんここで貯留されたのち発電所に送られます。
一連の発電施設は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しています。
 
大淀川第二調整池には九州電力関連企業のリサイクルセンターが隣接しています。
同センターも含めて敷地全体が立ち入り禁止。
 
これがダムの堤体。
 
さらにズームアップ。
放流ゲートの操作バルブが見えます。
 
リサイクルセンターも厳重にガード
ダムで捕捉した流木などの処理を行うようです。
 
フェンス際に建つ『第二調整池ダム』の標柱。

2805 大淀川第二調整池(1712)
宮崎県宮崎市高岡町浦之名
21.8メートル
149.1メートル
242千㎥/230千㎥
九州電力(株)
1931年

広沢ダム

2021-10-24 07:29:11 | 宮崎県
2021年10月16日 広沢ダム
 
広沢ダムは宮崎県東諸県郡綾町南俣の大淀川水系浦之名川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
大淀川左岸地区の農地は火山灰土壌で形成された畑地帯と沖積平野の水田に二分されますが、共に水利に乏しいため生産性が低く灌漑設備の整備が強く求められていました。
1978年(昭和53年)に農水省による国営大淀川左岸地区土地改良事業が着手され、その灌漑用水源として2000年(平成11年)に広沢ダムが完成しました。
土地改良事業も2005年(平成17年)に竣工し、3市町村にまたがる約1300ヘクタールの農地に灌漑用水が供給されています。
またダムは運用開始後、宮崎市・小林市・綾町が受託管理者となっていますが実際の管理は宮崎市に委任されています。
 
宮崎と小林を結ぶ国道268号線えびのスカイラインに広沢ダムへの案内板があり、これに従って浦之名川沿いを北西に約7キロ進むと広沢ダムに到着します。
堤高62.7メートル、堤頂長199メートルと農業用ダムとは思えない立派な堤体。
クレストには自由越流頂11門がずらっと並び、農業用ダムでは珍しく両岸に堤趾導流壁を備えています。

 
ダム下の調圧水槽。

 
左岸から
逆光で露出が難しい

 
天端親柱の不思議な彫刻?
何をモチーフにしたんでしょう?

 
左岸ダムサイトの水利使用標識と水神。

 
上流面
巨大な四角形の取水設備。

 
天端からダム下を見下ろすと
減勢工にはバッフルピアが2列、さらにその下流に副ダムがあります。
よく見ると背の高い副ダムの向こうにもう一つ副ダムが。
その下流には河川維持放流を利用した小水力発電所があります。


大淀川左岸土地改良区が管理する広沢ダム発電所
利水放流を利用する小水力発電所ですが、有効落差55.8メートルを生かし最大出力640キロワットと小水力とは思えない出力を誇ります。


高台の管理事務所。

 
天端は車両通行可能。 
右岸の林道へと続きます。

農業用コンクリートダムでは堤体導流壁が多いのですが、ここは堤趾導流壁。

 
右岸から上流面
11門のクレスト自由越流頂が並びます。

 
ダム湖は総貯水容量510万立米
ダム便覧では水上スキーのメッカと記されていますがその気配はなし。


 (追記)
広沢ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2838 広沢ダム(1711)
宮崎県東諸県郡綾町南俣
大淀川水系浦之名川
62.7メートル
199メートル
5100千㎥/3800千㎥
宮崎市(小林市・綾町より管理を委任)
2000年
◎治水協定が締結されたダム

瓜田ダム

2021-10-23 23:08:09 | 宮崎県
2021年10月16日 瓜田ダム 
 
瓜田ダムは宮崎県宮崎市高岡町小山田の大淀川水系瓜田川にある宮崎県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、瓜田川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給を目的として1998年(平成10年)に竣工しました。
ダムのある宮崎市高岡町には17世紀初頭に島津氏が建設した天ヶ城址があり1994年(平成6年)に模擬天守が作られました。
瓜田ダムも模擬天守建設と同時期のためか?管理事務所は城郭風、天端は石敷き、高欄は石垣風の化粧型枠が施されるなど色をテーマにした意匠が多くなっています。
またダム直下には夏季限定営業ですが100メートルのウォータスライダーなどを擁する瓜田自然プールが開設され親子連れの人気スポットになっています。
 
ダムの下流面
クレスト自由越流頂4門、自然調節式オリフィス1門のゲートレスダムです。

 
ダム左岸にある城郭風の管理事務所
城郭風というよりもこれはもう『城』。
宮崎県営各ダム同様、当ダムでも住み込みの管理人さんが常駐しておりこちらはさしずめ『城主』。

 
左岸ダムサイトは小さな公園になっており、各種石碑が並びます。

 
天端は徒歩のみ開放 
照明や高欄も凝ったデザイン、足元も石敷き風の化粧型枠が使われています。 
 
石碑は九州ではおなじみ金箔文字。 
 
 
上流面
これで常時満水位


減勢工と放流設備。

 
アングルを変えて
放流設備も武家屋敷風
写真正面奥に夏期限定営業の瓜田自然プールがあり営業期間中はダム下にも立ち入れるようです。

 
貯水池は総貯水容量74万立米
治水ダムですが目的がFNなので不特定利水及び堆砂容量分が貯留されています。

 
右岸から。


天端越しに
こちらから見ると本当の城跡の様。


上流面。
取水設備が見当たりませんが、どうやら城の向こう側にあるようです。

 
城郭風の管理事務所はもとより天端の意匠にも結構お金をかけています。
ダム建設着工は1992年(平成4年)なので、バブルの余韻が残り無駄なことにお金を使う余裕があったんでしょう。
 
(追記)
瓜田ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2841 瓜田ダム(1710)
宮崎県宮崎市高岡町小山田
大淀川水系瓜田川
FN
42メートル
160.4メートル
720千㎥/620千㎥
宮崎県県土整備部
1998年
◎治水協定が締結されたダム

東原調整池

2021-10-23 17:06:17 | 宮崎県
2021年10月16日 東原調整池
 
東原(ひがしばる)調整池は宮崎県西都市穂北、右岸が同市茶臼原にある灌漑目的のアースフィルダムです。
農水省による国営一ツ瀬川かんがい排水事業の農業調整池として1980年(昭和55年)に竣工、運用開始後は一ツ瀬川土地改良区が管理を受託しています。
自己集水域を持たない河道外貯留方式の農業調整池で、一ツ瀬川の杉安ダム湖にある杉安取水口及び支流の瀬江川頭首工で取水された水をいったん当調整池に貯留したのち、約3500ヘクタールの水田・畑地に灌漑用水を供給します。 
ダム建設地点は透水性の高い火山灰土壌となっており、建設に際しては透水対策として貯水池全面を難透水性材料で被覆するブランケット工法が採用されました。
 
ダム下流から
ここから見る限りは普通のアースフィルダム。

下流面は上段と下段で草刈り時期を変えているのか?緑と茶色のツートンカラー。

天端からの眺め。

右岸ダムサイトから
堤体は貯水池の南側から東側にJの字に盛り立てられ堤頂長は303メートルに及びます。


右岸ダムサイトに建つ竣工記念碑。
輪切りのダクタイル鋳鉄管が使われています。

天端
調整池の周りは舗装された周回路になっていますが天端から東部分は車両進入禁止。
周回道路は公式の自転車ロードレース会場として使われます。


貯水池は総貯水容量99万8000立米ですべて一ツ瀬川および瀬江川からの導水で賄っています。
透水性が高い地盤のため貯水池全面が難透水性材料で被覆されています。

用水管理センターを兼ねた土地改良区事務所。


土地改良区事務所入り口わきのモニュメント。
幹線水路で使用された実物のダクタイル鋳鉄管が並びます。

 
右岸にある一ツ瀬川からの杉安導水路流入口。
山の西側の中原ポンプ場から揚水して貯留されます。

 
こちらは調整池北側の瀬江川導水路流入口。

 
調整池の西850メートルにある中原ポンプ場
東原調整池と標高差が約120メートルあり、ここからポンプアップして調整池に貯留します。

河道外貯留ダムのためか?洪水吐は見当たりませんでした。

2836 東原調整池(1709)
左岸 宮崎県西都市穂北
右岸     同市茶臼原
一ツ瀬川水系一ツ瀬川
21メートル
303メートル
998千㎥/910千㎥
一ツ瀬川土地改良区
1980年

松尾ダム

2021-10-23 10:02:41 | 宮崎県
2021年10月16日 松尾ダム
 
松尾ダムは宮崎県児湯郡木城町中ノ又の一級河川小丸川中流部にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1935年(昭和10年)に内務省は河川総合開発の先駆となる『河水統制事業』を採択し全国で治水・利水を一貫した河川開発が実施されることとなりました。
宮崎県では1938年(昭和13年)に県電気建設部により小丸川の治水と発電を目的とした『小丸川河水統制事業』が採択され、4基のダムおよび発電所の建設が着手されました。
このうち浜口ダム(現川原ダム)と川原発電所、戸崎ダムと石河内第二発電所は1940年(昭和15年)に完成しますが直後に日本発送電に接収され、電気事業再編成により1951年(昭和26年)に九州電力が事業を継承しました。 
ついで当ダムおよび石河内第一発電所が1939年(昭和14年)に着工されますが戦況悪化により事業は中断、戦後国庫補助を受けて事業が再開され1951年(昭和26年)に完成しました。
松尾ダムは小丸川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、宮崎県企業局石河内第一発電(最大2万2200キロワット)でのダム水路式発電を目的としています。
小丸川河水統制事業は1956年(昭和31年)の渡川ダムおよび渡川発電所の竣工をもってすべて完了に至りますが、日本発送電の接収もあり石河内第一発電所は宮崎県企業局、第二発電所は九州電力と同水系の同名の第一発電所と第二発電所で事業者が異なる結果となりました。
 
下流の戸崎ダムから県道22号線を北上すると松尾ダムに到着します。
途中樹間からダムを垣間見れますが、写真撮影に耐えるものではありません。
下流面もダム手前のこれが精いっぱい、落葉すれば少しは視界がよくなるんでしょう。
 
ダムサイトからもフェンス越しの撮影となります。
クレストにはラジアルゲート10門を擁していますが見るすべはありません。
天端は渡川ダム綾南ダム岩瀬ダムなど宮崎県営ダムではおなじみ、コルゲートパイプを利用したチューブ状のシェルターで被覆されています。
 
堤頂部をズームアップ。
 
天端
高欄はダイダイゴケなどで茶色に変色、時代感に拍車がかかります。
 
上流面。
 
もう少し上流に行けばゲートを見ることができたのですが、訪問時は管理事務所の改修工事のため叶いませんでした。
 
こちらは石河内第一発電所への取水ゲート
これまた木に邪魔されます。
 
宮崎県営ダムは見学には厳しいダムが多いのですが、ここもその一つ。
もりみず旬間等で見学会など実施していただければいいのですが?
 
(追記)
松尾ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2814 松尾ダム(1708)
宮崎県児湯郡木城町中ノ又
小丸川水系小丸川
FNP
68メートル
165.5メートル
45202千㎥/33699千㎥
宮崎県県土整備部
1951年
◎治水協定が締結されたダム

戸崎ダム

2021-10-23 04:29:21 | 宮崎県
2021年10月16日 戸崎ダム
 
戸崎ダムは宮崎県児湯郡木城町石河内の一級河川小丸川本流にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なことから、戦前から各河川で活発な電源開発が進められてきました。
小丸川水系では1938年(昭和13年)に県による小丸川河水統制事業が着手され宮崎県電気部(現宮崎県企業局)による電源開発が進められました。
まず1940年(昭和35年)に浜口ダム(現川原ダム)と川原発電所が完成、次いで1943年(昭和18年)に完成したのが戸崎ダムと石河内第二ダムです。
しかし完成直後に一連の発電施設は日本発送電に接収され、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業を継承しました。
戸崎ダムで取水された水は石河内第二発電所に送られ最大1万8000キロワットのダム水路式発電を行います。
なお小丸川河水統制事業として戦後、石河内第一発電所が県企業局の手で完成しました。この結果同水系の同名の第一発電所と第二発電所で事業者が異なる状況となっています。
さらに当ダムすぐ下流では2007年(平成19年)に最大出力120万キロワットの揚水式発電を行う九州電力小丸川発電所が完成しました。
地下の発電所から戸崎発電所に隣接して建設されたひむか変電所に通じる電気ケーブルが戸崎ダム直上をトラス橋で跨ぐことになり独特の景観を作り出しています。
小丸川発電所概要図(九州電力HPより)
 
全面越流式ダムで、対岸に発電所への取水口があります。

 
ダム左岸から伸びるコンクリート構造物がトラス橋で対岸へと渡ります。
てっきり職員用の管理通路かと思っていましたが、調べると小丸川発電所からひむか変電所へ通じる電気ケーブルでした。


 
取水口をズームアップ。
2門の取水ゲートはキャタピラゲート。

 
電気ケーブルのトラス橋直上にはアーチ橋の戸崎橋が架かっており、土木好きにはたまらない構図となっています。

 
アーチの戸崎僑
左岸に県道バイパスができたため、利用者は少なくなっています。

 
トラス橋越しに見た堤体上流面。

 
貯水池はほぼ満水。
左岸の様子を見るにかなり堆砂が進んでいるようです。

 
取水口と堰堤右岸のピア。
また堰堤右岸にはゲートピアが残りますがゲートはありません。
もとはゲート装備だったのが撤去され全面越流式になったようです。

 
(追記)
戸崎ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2813 戸崎ダム(1707)
宮崎県児湯郡木城町石河内
小丸川水系小丸川
25メートル
115メートル
544千㎥/408千㎥
九州電力(株)
1943年
◎治水協定が締結されたダム

石河内ダム

2021-10-22 23:45:04 | 宮崎県
2021年10月16日 石河内ダム
 
石河内(いしかわうち)ダムは宮崎県児湯郡木城町石河内の一級河川小丸川本流にある九州電力(株)が管理する重力式コンクリートダムです。
オイルショックに加え家電の普及に伴う電力消費の昼夜間格差の拡大を受け、電力各社は火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。 
九州電力も1980年代より積極的に純揚水発電所建設を進め、同電力3番目の純揚水発電所として2007年(平成19年)に小丸川発電所が完成しました。
石河内ダムは同発電所の下部調整池として同年竣工し、上部調整池である大瀬内ダム・かなすみダムとの有効落差646.2メートルを利用して水力発電では九州最大出力となる120万キロワットの純揚水式発電を行っています。 
また河川維持放流を利用した尾鈴発電所(最大出力350キロワット)で小水力発電も行っています。
 
小丸川ダム発電所概要図(九州電力HPより)
 
残念ながら石河内ダムを明確に展望できるポイントはありません。
小丸川沿いを走る県道22号東郷西都線のなかおづるトンネルと鈴音トンネルの間からダムが垣間見えます。
フェンス越しの撮影となったため写真には黒い筋が入ってしまいました。
 
ズームアップ
日本最大の油圧式ラジアルゲート4門を擁しており、ピアや巻き上げ機のないすっきりとした堤頂部。
 
石河内ダムからさらに上流へ向かうと、小丸川発電所入り口に到着します。
この奥に発電所へ通じるトンネルありますが、もちろん立ち入りはできません。
九電のPR館で見学の予約を受け付けていますが、残念ながら対象は団体のみ。
 
発電所正門前には発電所建設工事で使われたボーリングマシンのカッターヘッドが展示されています。
 
カッターヘッドの説明版。
 
(追記)
石河内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。 

3302 石河内ダム(1706)
宮崎県児湯郡木城町石河内
小丸川水系小丸川
47.5メートル
185メートル
6900千㎥/5600千㎥
九州電力(株)
2007年
◎治水協定を締結したダム

大瀬内ダム

2021-10-22 22:01:17 | 宮崎県
2021年10月16日 大瀬内ダム
 
大瀬内ダムは宮崎県児湯郡木城町石河内の小丸川水系大瀬内谷川源流部にある九州電力(株)が管理するアスファルトフェイシングフィルダムです。
オイルショックに加え家電の普及に伴う電力消費の昼夜間格差の拡大を受け、電力各社は火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。。
九州電力も1980年代より積極的に純揚水発電所建設を進め、同電力3番目の純揚水発電所として2007年(平成19年)に小丸川発電所が完成しました。
大瀬内ダムは副ダムのかなすみダムとともに同発電所の上部調整池として同年竣工し、下部調整池である石河内ダムとの有効落差646.2メートルを利用して最大120万キロワットの揚水式発電を行っています。 
大瀬内ダムは大瀬内谷川源流部、標高800メートル地点にあり透水性の高い地質から上流面のみならず貯水池全般に渡ってアスファルトフェイシングによる遮水処理が施されています。
また西側鞍部に副ダムであるかなすみダムがあります。
 
小丸川発電所概要図(九州電力HPより)
 
九州電力のPR施設であるピノッQ館から大瀬内谷川に沿った山道を西北西に約8キロ走ると大瀬内ダム展望台に到着します。
この先、ダムへ通じるトンネル入り口から先は立ち入り禁止のためここから遠望するのみ。
ここから見る限りは普通のロックフィルダムですが、背後には全面アスファルトフェイシングフィルの貯水池が隠れています。
 
完成から約15年たちますがリップラップには草木一本見えません。
 
左岸に洪水吐と管理棟があり斜水路が一直線に伸びています。
 
展望台の案内板。
発電施設ということでガードが堅いのは止むをえませんが、トンネルの先、せめてダムサイトまで見せていただければなあ…。
 
(追記)
大瀬内ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。 

3300 大瀬内ダム(1705)
宮崎県児湯郡木城町石河内
小丸川水系大瀬内谷川
FA
65.5メートル
166メートル
6200千㎥/5600千㎥
九州電力(株)
2007年
◎治水協定を締結したダム

川原ダム

2021-10-22 20:53:57 | 宮崎県
2021年10月16日 川原ダム
 
川原(かわばる)ダムは宮崎県児湯郡木城町石河内の一級河川小丸川本流中流部にある九州電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
宮崎県は主要河川がいずれも包蔵水力豊富なため、戦前から各河川で活発な電源開発が進められてきました。
小丸川水系では1938年(昭和13年)に県による小丸川河水統制事業が着手され宮崎県電気部(現宮崎県企業局)による電源開発が進められました。
川原ダムおよび川原発電所は同事業初の発電施設として1940年(昭和15年)に完成、当初はダムのある地名から浜口ダムと呼ばれていました。
しかし翌1941年(昭和16年)にダムおよび発電所は日本発送電に接収され、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により九州電力が事業継承しました。
ここで取水された水は約5.7キロの導水路で川原発電所に送られ最大2万1600キロワットのダム水路式発電が行われています。
また2011年(平成23年)には河川維持放流を利用した川原ダム維持放流発電所(最大出力150キロワットの小水力発電)が稼働しました。
 
小丸川沿いの県道26号線から川原ダムが遠望できます。
堤高23.6メートル、堤頂長150メートルの全頂長自由越流頂型式のダムです。

 
ズームアップ。

 
左岸から河川維持放流が行われています。
2011年(平成23年)に維持放流を利用した小水力発電所が増設されました。

 
左右両岸の作りは、まだ導流壁のない昭和10年代のダムの特徴を見せています。
減勢部も戦前らしいコンクリートの叩き。

 
こちらは2011年(平成23年)に完成した川原維持放流発電所の水利使用標識。

 
こちらは川原発電所の水利使用標識。

 
川原発電所向け取水口は2か所ありこちらは下流側の第二取水口
手前が沈砂池、奥にスクリーンがあります。


こちらは上流側にある第一取水口
奥が除塵機とスクリーン、手前は取水ゲートになります。

アングルを変えて。

 
貯水池は総貯水容量322万立米、堆砂が進み有効貯水容量は120万立米。

 
左岸の2か所の取水口をズームアップ
手前が第一取水口、奥が第二取水口になります。

 
(追記)
川原ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2809 川原ダム(1704)
宮崎県児湯郡木城町石河内
小丸川水系小丸川
23.6メートル
150メートル
3220千㎥/1200千㎥
九州電力(株)
1939年
◎治水協定が締結されたダム