ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

稲村ダム

2021-12-05 20:00:00 | 高知県
2021年11月23日 稲村ダム
 
稲村ダムは高知県土佐郡土佐町瀬戸の吉野川水系瀬戸川にある四国電力(株)が管理するロックフィルダムです。
1970年代以降、電化製品とりわけエアコンの普及による電力消費の昼夜間格差の拡大を受け、電力各社は火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる巨大蓄電池としての揚水発電に着目します。
四国電力も1982年(昭和57年)に同社初の純揚水発電所である本川発電所を建設、稲村ダムは同発電所の上部調整池として同年竣工し、下部調整池である大橋ダムとの有効落差528.4メートルを利用し最大61万キロワットの純揚水式発電が稼働しました。 
稲村ダムの天端標高は1127.5メートルで四国最高地のダムとなっています。
今回は早明浦ダムから国道439号線から県道6号を経由、瀬戸川渓谷を遡上して稲村ダムに至りましたが、一般には大橋ダムから稲村トンネルを抜けるルートが無難かと思います。
 
ダムは稲村山登山口になっており左岸ダムサイトには大きな駐車スペースがあります。
しかしダム下へ通じる管理道路や天端は立ち入り禁止のため見学は左岸からにとどまります。
堤高88メートル、堤頂長353メートルのロックフィルダム
吉野川上流域は三波川変成帯で構成されており、ロックフィルダムとしては珍しくリップラップには結晶片岩や黒色片岩が使われています。


もう一枚
朝日を受け片岩特有の独特の光沢を放ちます。


広い天端ですが立ち入り禁止。


音声解説付きの説明板
この手の音声解説はボタンを押しても反応しないことが多いのですが、ここはちゃんと説明が始まります。


早朝の訪問ですが、堤体中央の線が満水位で水位はかなり低め。
近年太陽光発電のシェアが上がったことで揚水式発電の運用も大きく変化し、日中に太陽光の余剰電力で揚水し、太陽光の出力が落ちる宵の口から深夜に発電するという運用が一般的になっています。
夕方に向けて太陽光の余剰電力で揚水されると思われます。

洪水吐内側は護岸のため一段高くなっています。


横越流式洪水吐
奥は管理事務所。


逆アングルで。

竣工記念碑。こちらも片岩。


管理事務所
遠隔操作で職員の常駐はありません。


水利使用標識。


左岸上流側のこの施設
繋留設備かと思ったら河川維持放流用の取水設備でした。


ダム湖周辺は片岩で形成された独特の岩稜が続きロケーションも悪くないですが、天端等の立ち入り制限は発電施設としてはやむなし。
稲村山はアケボノツツジが有名で、花の季節にはダムサイトの広い駐車場がいっぱいになるほどの登山者で賑わうようです。
 
(追記)
稲村ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2326 稲村ダム(1758) 
高知県土佐郡土佐町瀬戸
吉野川水系瀬戸川
88メートル
352メートル
5800千㎥/5100千㎥
四国電力(株)
1982年
◎治水協定が締結されたダム

早明浦ダム(元)

2021-12-05 15:00:00 | 高知県
2021年11月23日 早明浦ダム(元) 
 
早明浦ダム(元)は左岸が高知県長岡郡本山町吉野、右岸が土佐郡土佐町田井の一級河川吉野川本流にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
『四国三郎』の異名を持つ吉野川は、四国最大の河川ながら日本屈指の暴れ川でその治水は歴代為政者の至上命題となっていました。一方、四国瀬戸内海沿岸地域は少雨に加えて大河がなく水量豊富な吉野川からの導水が江戸時代からの悲願となっていました。
戦後、建設省を軸に『吉野川総合開発計画』が企図されますが利害の対立もあり調整は難航します。
1966年(昭和41年)に『吉野川水系水資源開発基本計画』(フルプラン)が採択され、吉野川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになりした。
そして香川用水をはじめとした各種計画の水源として、1974年(昭和49年)に竣工したのが早明浦ダムです。
早明浦ダムは水資源機構法(当時は水資源開発公団法)による多目的ダムで、吉野川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得灌漑用水への補給、吉野川北岸用水香川用水高知分水を通じた各地への利水供給、電源開発(株)早明浦発電所(最大出力4万2000キロワット)でのダム式水力発電を目的としています。
 
総貯水容量3億1600万立米は四国最大、全国9位の規模で文字通り『四国の水ガメ』となっており、ダムは日本ダム協会により日本100ダムに、ダム湖の『さめうら湖』はダム湖百選に選ばれています。
一方でダム完成後も渇水被害や計画を超える洪水が多発、とりわけ治水については放流設備の増強が必至となっていました。
これを受け、2018年(令和元年)に利水容量の一部の洪水調節容量への振り替え、予備放流の導入、放流設備の増強を柱とする『早明浦ダム再生事業』が採択されました。
具体的には堤体右岸を掘削して新たな放流設備及び減勢工が増設されることになり、2028年(令和20年)の竣工を目標にダム再開発事業が進行中です。

 ダム下流から
早朝の訪問でしたが、ちょうど朝日が堤体を照らしやや黄金色がかった美しい眺めとなりました。
堤高106メートル、堤頂長400メートルと日本を代表する重力式コンクリートダム。
放流設備はクレストローラーゲート6門とホロージェットバルブ2条を装備
武骨で質実剛健と言った風 
再生事業が本格化すればこの眺めも見納めとなります。


左岸から
左岸ダム下には電源開発(株)早明浦発電所があります。
右岸側のホロージェットバルブから放流中。


 バルブをズームアップ。

右岸から
再生事業が始まれば、この場所からの見学も当面できなくなります。


香川用水の取水ダムである池田ダムと同様鉄骨トラス製ピア。


管理事務所のある右岸ダムサイトに上がります。
ここには各種説明板や石碑が並びます。
これは四国の形をした『四国のいのち』の碑
池田ダムにも四国の形をした碑がありますがあちらは『四国は一つ』
左手はダム湖百選のプレート。


銅製の諸元プレート。


再生事業の説明板。


 上流面
こちらもあまり飾り気はありません。
左手は表面取水設備
濁水対策として表層水の取水目的で後付けされました。


天端から。
減勢工が渦巻いています。




鉄骨トラス製のピア。


左岸から下流面。

 
堤体から突き出た水圧鉄管と早明浦発電所。


後付けの選択取水設備。


左岸高台のケーブルクレーン台座跡
今は展望台になっています。


展望台から
ダム湖の『さめうら湖』は総貯水容量3億1600万立米で四国最大、日本第9位。


早明浦ダム再生事業により、間もなく堤体右岸への掘削工事が始まります。
古い早明浦ダムの姿を見れるのも今のうち。
竣工予定は2030年(令和12年)とまだまだ先。
 
(追記)
早明浦ダム(元)には洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2322 早明浦ダム(元)(1757) 
左岸 高知県長岡郡本山町吉野 
右岸 高知県土佐郡土佐町田井 
吉野川水系吉野川 
FNAWIP 
 
106メートル 
400メートル 
316000千㎥/289000千㎥ 
水資源機構 
1968年 
◎治水協定が締結されたダム 
-------------------- 
3702 早明浦ダム(再) 
左岸 高知県長岡郡本山町吉野 
右岸 高知県土佐郡土佐町田井 
吉野川水系吉野川 
FNAWIP 
 
106メートル 
400メートル 
316000千㎥/289000千㎥ 
水資源機構 
2018年~ 

汗見ダム

2021-12-05 10:00:00 | 高知県
2021年11月23日 汗見ダム
 
汗見ダムは左岸が高知県長岡郡本山町七戸、右岸が同町瓜生野の吉野川水系汗見川にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
早明浦ダム建設事業に発電業者として事業参加した電源開発は、発電容量確保のためダム下流で吉野川に合流する汗見川から早明浦ダム湖への導水を図ります。
その取水ダムとして1972年(昭和47年)に建設されたのが汗見ダムです。
汗見ダムでは毎秒最大7立米の水が取水され約4キロの導水路で早明浦ダムへ送られます。
 
早明浦ダムから汗見川沿いの県道264号線を約8キロ北上すると汗見ダムに到着します。
堤体は全面越流式。
手前に放流ゲートや取水ゲートがあり、バルブが見えます。
 
 
ダムの敷地は立ち入り禁止。
 
 
水利使用標識。
 
堆砂が進み貯水池はほぼ土砂で埋め尽くされています。
ダム便覧では総貯水容量7万9000立米に対して有効貯水容量2万9000立米となっていますが、実際にはもっと堆砂が進んでいるように見えます。
 
堤体右岸にある放流ゲート
その右手に取水口があるようですがカメラで捉えることはできません。
 
3618 汗見ダム(1756) 
左岸 高知県長岡郡本山町七戸 
右岸        同町瓜生野 
吉野川水系汗見川 
 
 
18.5メートル 
63.5メートル 
79千㎥/29千㎥ 
電源開発(株) 
1972年

舟谷池

2021-12-04 20:00:00 | 高知県
2021年11月22日 舟谷池
 
舟谷池は高知県香美市土佐山田町船谷にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1913年(大正2年)に舟谷地区の事業で竣工と記されている一方、現地記念碑には事業者として『舟谷池耕地整理組合』の名があります。
記念碑の内容から起源は江戸期に遡り大正期に受益農家の持ち出しで改築されたのは間違いなさそう。
一方ダム便覧には経緯度が記載されていますが位置未確認となっています。竣工記念碑に『舟谷池』の名がありここが舟谷池なのは間違いないでしょう。
一方、ため池データベースでは堤高14.8メートルとなっておりダムの要件を満たしていません。

県道371号線を北上し、工業団地の突き当りの隘路を北に詰めると舟谷池に到着します。


左岸に洪水吐導流部があり、


減勢工にはシュートブロック、バッフルブロック、エンドシルの3点セット。


こちらは右岸ダム下にある底樋管。


堤体を斜行して道路が登ります。
標識を見ると管理者は『舟谷池田役組合』、田役組合は水利組合と同意です。


天端には轍が残ります。


総貯水容量は便覧12万立米、ため池データベース11万5000立米。


左岸の洪水吐はラビリンス越流頂。


アングルを変えて。


ついつい何枚も撮っちゃいます。


上流面中ほどに斜樋があります。


湖畔の記念碑。
事業者として舟谷耕地整理組合の名があるので、上記『舟谷池田役組合』の標識と併せてここが舟谷池であることは間違いないでしょう。
碑文によれば池の起源は江戸初期の正保2年(1645年)に遡り、大正期に耕地整理組合が設立され増築が行われたと刻されています。
ただし増築は『大正ニ年十月二十日起工、三年四月十日竣工』となっており、これを竣工年度とするなら便覧の1913年とは1年ずれることになります。


2296 舟谷池 (1755) 
ため池コード 392120002 
高知県香美市土佐山田町船谷 
物部川水系舟谷川 
 
 
15メートル(ため池データベース 14.8メートル 
64メートル(ため池データベース 94) 
120千㎥/120千㎥(ため池データベース 115千㎥) 
舟谷池田役組合 
1913年(ダム便覧) 1914年(現地記念碑) 

休場ダム

2021-12-04 14:00:00 | 高知県
2021年11月22日 休場ダム
 
休場(やすば)ダムは左岸が高知県香美市土佐山田町東川、右岸が同町平山の国分川本流にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力は戦後の復興や高度経済成長による電力需要拡大に対処するため各所で新たな電源開発を進めます。
高知県中央部では1963年(昭和38年)に吉野川右支流の穴内川に穴内川ダムと繁藤堰堤を、国分川に休場ダムを建設します。
まず穴内川ダムを上部池、繁藤堰堤を下部池とする穴内川発電所(最大出力1万2500キロワット)で混合揚水式発電を行いその放流水はさらに繁藤堰堤から平山発電所(最大出力4万1500キロワット)でダム水路式発電を行った後、流域変更して国分川の当ダムに導水されます。
最後に新開発電所(最大出力8700キロワット)でダム水路式発電が行い、合計最大6万2700キロワットの電力を生み出します。
国分川への流域変更はより大きな有効落差を得るため、また穴内川発電所で混合揚水式発電を採用したのは、豊水期に揚水し渇水期に発電放流を増やすことで河川流量の季節変動を平準化させ平山発電所での発電効率を向上させるためで、これらは先に完成した仁淀川分水発電事業とほぼ同じシステムです。
 
休場ダム左岸を県道253号線が通っています。
左岸から
放流設備は自由越流頂3門と排砂ゲートだけ。
集水の大半は穴内川からの導水に依るもので、自己流域はわずかです。
そのため、越流もほとんどないのでしょう、導流部はびっしり苔でおおわれています。
手前は自動集塵機が集めたごみの集積場です。
 
 
水利使用標識。
 
天端は開放されています。
 
排砂ゲートをズームアップ
河川維持放流はここで行われるようです。
 
右岸から
どうしても苔に見とれてしまいます。
 
ズームアップ。
 
対岸(左岸)には管理事務所と取水口、除塵機があります。
 
ダム中央には排砂ゲートの操作バルブ。
 
上流から 
総貯水容量は29万2000立米、有効貯水容量25万4000立米 
集水の大半を穴内川からの導水に頼っていることから、取水ダムではなく調整池と呼ぶのが妥当でしょう。 
 
 
(追記)
休場ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2316 休場ダム(1754) 
左岸 高知県香美市土佐山田町東川 
右岸          同町平山 
国分川水系国分川 
 
 
18メートル 
64.2メートル 
292千㎥/254千㎥ 
四国電力(株) 
1963年 
◎治水協定が締結されたダム 

穴内川ダム

2021-12-04 10:00:00 | 高知県
2021年11月22日 穴内川ダム
 
穴内(あなない)川ダムは高知県香美市土佐山田町樫谷の一級河川吉野川水系穴内川にある四国電力(株)が管理する発電目的の中空重力式コンクリートダムです。
吉野川水系では1958年(昭和33年)に建設省(現国交省)、電源開発(株)、四国電力により『吉野川総合開発事業』が着手され、当ダム建設地点では当初建設省による多目的ダム建設が計画されました。
しかし関係者間の利害調整が難航したことで、早急な電源開発に迫られていた四国電力は同事業から離脱し、独自のダム建設にかじを切り1963年(昭和38年)に吉野川水系穴内川に穴内川ダムと繁藤堰堤を、国分川に休場ダムを建設します。
まず穴内川ダムを上部池、繁藤堰堤を下部池とする穴内川発電所(最大出力1万2500キロワット)で混合揚水式発電を行いその放流水はさらに繁藤堰堤から平山発電所(最大出力4万1500キロワット)を経たのち、流域変更して国分川の休場ダムに導水され、新開発電所(最大出力8700キロワット)でダム水路式発電を行い、計最大6万2700キロワットの電力を生み出します。
国分川への流域変更はより大きな有効落差を得るため、また穴内川発電所で混合揚水式発電を採用したのは、豊水期に揚水し渇水期に発電放流を増やすことで河川流量の季節変動を平準化させ平山発電所での発電効率を向上させるためで、これらは先に完成した仁淀川分水発電事業とほぼ同じシステムです。
加えて国分川下流域は高知平野最大の穀倉地帯となっており流域変更により吉野川水系の水を高知平野の灌漑用水として有効利用することが可能となりました。
 
穴内川ダムは四国電力が先に完成させた大森川ダム同様、中空重力式コンクリートダムですが、そのフォルムは他の中空ダムと一線を隔す特徴的なものとなっています。
まず目につくのは左岸から伸びるジャンプ台式洪水吐で中空ダムで唯一洪水吐斜水路を擁しています。
また提体下流面スロープも上段で傾斜角度が変わる独特の形状。
さらにクレストラジアルゲートは日本で唯一の単脚ラジアルゲート、取水ゲートも希少なキャタピラゲートとダム愛好家にとっては見所満載のダムとなっており、日本ダム協会により『日本100ダム』にも選ばれています。
 
下流から
左岸にジャンプ台を備えた洪水吐斜水路が伸びるダムは、中空ダムのみならず重力式ダムでもほとんど見かけません。
ジャンプ台の下では放流ゲートが口をあけています。

 
ゲートをズームアップ
日本で唯一の単脚ラジアルゲート、ゲートの前面にトンカチがついているよう。

 
左岸から超広角で。
上段で傾斜角度を変えるこれまた特異なスロープ
超広角のデフォルメ効果で異形のダムの特徴が一段と誇張されます。

整然と並ぶタコ足スリット
12本のタコ足がずらっと並ぶ様は壮観。


ダムサイトの説明板。

水利使用標識。


四国電力ではおなじみ、○○堰堤と記されたプレート。


対岸の取水塔と管理事務所。
今は遠隔操作のため、職員は常駐していません。

左岸アバットメントを支えるバットレス
こちらも否が応でも目につきます。

 
地山を利用したジャンプ台式洪水吐と減勢工
ジャンプ台の下から一本導流壁が伸びる一方、左岸がは強固なアバットメント。


日本唯一、単脚のラジアルゲート。


総貯水容量4626万立米。
直接的な発電は穴内川発電所での混合揚水発電ですが、メインは最大出力を誇る平山発電所の発電効率の向上、さらに間接的に国分川流域農地への補給も賄っています。


右岸から
堤体にはHGダム特有の丸穴が並びます。


まるでバットレスのような狭い堤頂。



ずらっと並ぶタコ足スリットはもはや芸術品。

取水ゲートはこれまた希少なキャタピラゲート。


訪問前から楽しみにしていた穴内川ダム。
雨後の澄んだ空気の中で見た異形の中空ダムは怪異ともいえるような独特な存在感を十二分に発揮していました。
 
(追記)
穴内川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2317 穴内川ダム(1753) 
高知県香美市土佐山田町樫谷 
吉野川水系穴内川 
 
HG 
66.6メートル 
251.9メートル 
46260千㎥/43300千㎥ 
四国電力(株) 
1963年 
◎治水協定が締結されたダム 

春遠第1ダム

2021-12-03 20:00:00 | 高知県
2021年11月21日 春遠第1ダム
 
春遠(はるどお)第1ダムは高知県幡多郡大月町春遠の貝ノ川川水系家ノ谷川に高知県土木部の事業で建設予定の多目的重力式コンクリートダムです。
1994年(平成6年)に建設省(現国交省)の小規模ダム補助事業を活用した春遠生活貯水池ダム事業の建設実施計画調査が着手されましたが、バブル崩壊以降の社会状況の変化や公共工事見直し機運が強まる中、国交省による検討対象ダムとなります。
2012年(平成24年)に家ノ谷川への春遠ダム建設及び左右の支川に分水堰を設け導水トンネルで春遠ダムに導水する案で事業継続が決定しました。
その後の再検討により2021年(令和3年)に家ノ谷川に多目的ダムである春遠第1ダム、左支川の谷の奥川に流水型治水ダムである春遠第2ダムを建設する1事業2ダム案に計画変更され、2022年(令和4年)からの春遠第1ダム本体工事着工が決定しました。
 
訪問時は本体工事に先駆け取り付け道路の路面改良が行われていました。
 
ちょうどコンクリートの硬化中
このため、ダム建設地点まで立ち入りできません。
 
 
高知県土木部所管のダムとしては2024年(令和6年)竣工予定の和食ダムに続く、新ダム建設となります。

3239 春遠第一ダム 
高知県幡多郡大月町春遠 
貝ノ川川水系家ノ谷川 
FNW 
 
31メートル 
112メートル 
630千㎥/600千㎥ 
高知県土木部 
1994年春遠ダム実施計画調査着手 
2021年ダム計画変更

宮ノ越ダム

2021-12-03 14:00:00 | 高知県
2018年 3月28日 宮ノ越ダム
2021年11月21日
 
宮ノ越ダムは高知県幡多郡大月町姫ノ井の周防形川水系姫ノ井川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧によれば1960年(昭和35年)に月灘土地改良区の事業で建設されました。当初は『姫ノ井池』の名称で掲載されていましたが、2019年の編集でダム名が『宮ノ越ダム』に変更されました。
ため池データベースでは所有者は「自然人」となっており、個人所有のため池ということになりますが、この規模の溜池が個人所有とは思えません。
法人格のない水利組合もしくは地域の管理と見るのが妥当でしょう。
当ダムには2018年(平成30年)3月に訪問しましたが、その後の耐震補強工事で風貌が一変したことから2021年(令和3年)11月に再訪しました。
 
まずは改修前の宮ノ越ダムの風景から 
フィルダムとしては珍しく堤体下流面上にポンプ設備があります。
 
天端
丸石の記念碑が3基立っていますが、池の由来等は書かれていません。
 
上流面は谷積の石で護岸。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
貯水池対岸に斜樋が見える一方、湖面にはフローティング式の取水設備が浮かんでいます。
斜樋が壊れたのでフローティング式取水設備を導入したのか?
両方を活用しているのか?は不明です。
 
ここからは改修後2021年(令和3年)11月の写真になります。
ダム下から
新調された右岸洪水吐、白いコンクリートが目立ちます。
 
耐震強化のため、盛土が厚くなった堤体。
ただ表面に芝などが張られていないため、堤体が雨に浸食されています。
 
高い位置から俯瞰。
 
下流面と洪水吐導流部を超広角で
導流部は右岸を湾曲しながら流下します。
前回訪問時にあった下流面上のポンプ室などはなくなっています。
 
堤体上部は草がついていますが、下部や右岸側は丸裸
雨で浸食された跡が幾筋も見られ所によってはかなり抉られています。
素人目にもきちんと芝を貼るべきだと思いますが。
 
洪水吐導流部。
 
新調された横越流式洪水吐。
 
貯水池は総貯水容量17万1000立米。
 
上流面に新設された斜樋。
 
上流面はウレタン防水シートで護岸されています。
 
耐震強化工事ですっかり様相が変わった宮ノ越ダムです。
ただただ、芝を貼っていない下流面の土砂の流出が気になるばかり。
 
2314 宮ノ越ダム(1331) 
ため池コード 394240002 
高知県幡多郡大月町姫ノ井 
周防形川水系姫ノ井川 
 
 
23メートル 
80メートル 
171千㎥/171千㎥(ため池データベース172千㎥) 
管理者は自然人
1960年竣工 
2020年改修工事竣工 

横瀬川ダム

2021-12-03 10:00:00 | 高知県
2018年 3月27日  横瀬川ダム
2021年11月21日
 
横瀬川ダムは高知県宿毛市山奈町山田の渡川水系中筋川左支流横瀬川にある国交省四国地方政局が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
中筋川の治水・利水を目的として中筋川本流および支流の横瀬川への多目的ダム建設事業が着手され、まず1998年(平成10年)に中筋川ダムが完成します。
しかし経済情勢の変化による利水需要の低減や公共事業に対する世論の厳しい目を受けて横瀬川ダム建設事業は当初計画から規模を縮小し、2016年(平成28年)にようやく本体工事に着手し2019年(平成31年)に竣工しました。
横瀬川ダムは国交省渡川ダム統合管理事務所により直轄管理される特定多目的ダムで、最大毎秒140立米の洪水をカットし中筋川ダムと併せて中筋川下流基準地点で最大毎秒350立米の洪水調節を行います。
また安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、四万十市への上水道用水の供給を目的としています。 
横瀬川ダム建設に際して、ダム建設予定地直下の水神が宿るとされる滝や雨乞いの祠、照葉樹林を保護するためにダム下に減勢工は置かず、世界で初めてダム中段の側水路で減勢を行う『側水路減勢方式』が採用されました。

横瀬川ダムにはまだ建設中の2018年(平成30年)3月に初訪、2021年(令和3年)11月に再訪しました。
2018年(平成30年)はまだ建設工事中の為、ダム右岸上流の見学所からの見学に留まりました。
タワークレーンを使って絶賛打設中。
 
ズームアップ。
 
ここから先はダム完成後の2021年(令和3年)11月訪問時の写真となります。
県道60号線からダムまで立派な取り付け道路ができており、一か所だけダムを望めるポイントがあります。
クレスト自由越流頂6門、自然調節式オリフィス2門装備のゲートレスダムです。
 
横瀬川沿いの旧道を遡上するとダム直下近くまで接近できます。
右手は仮排水路
この奥に保護された滝と雨乞いの祠がありますが、関係者以外は立ち入りできません。
 
取付道路は右岸ダムサイトにある管理事務所へつながります。
堤体は右岸側が緩やかに湾曲しています。
ダム湖の総貯水容量は730万立米と国交省直轄ダムとしては比較的小規模なダム湖。
 
下流面
超広角で撮ったためデフォルメされていますが、クレスト及びオリフィスを越流した水はいったん中段の側水路で減勢し、側水路にある子穴から導流壁のカスケードを伝って流下します。
カスケードで垂直方向の減勢を、ぎざぎざの堤趾導流壁で水平方向の減勢を行います。
 
中段の側水路。
 
導流部最下部
河川維持放流を活用した小水力発電所が行われています。
 
堤体右岸にクライミングウォールがあります。
慈善に観光協会への予約が必要。
 
天端から
超広角のためデフォルメされていますが、二つの細長い穴がオリフィス。
カスケードに合わせてギザギザに作られた導流壁も当ダムならでは。
本来減勢工がある位置にそれがないため、ダムからいきなり河川となります。
 
左岸から
とにかく角度のないところからの撮影なので超広角の出番が増えます。
 
左岸から見た側水路。
 
天端は車両通行可能。
簡略な建屋がいかにもアフターミレニミアムのダム。
 
上流面
右から右岸クレスト3門、オリフィス取水口、選択取水設備、左岸クレストと並びます。
 
世界初の側水路減勢方式採用のため、事前の実証実験から建設に至るまで多くの苦労や紆余曲折があったようです。
ちょっと他所では見ることのない異形のダム、越流の際の水の流れや減勢方法を想像するだけでも楽しくなる横瀬川ダムです。
 
(追記)
横瀬川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
3060 横瀬川ダム(1328) 
高知県宿毛市山奈町山田 
渡川水系横瀬川 
FNW 
 
72.1メートル 
188.5メートル 
7300千㎥/7000千㎥ 
国交省四国地方整備局 
2019年竣工 
◎治水協定が締結されたダム 

津賀ダム

2021-12-02 23:00:00 | 高知県
2021年11月21日 津賀ダム

津賀ダムは左岸が高知県高岡郡四万十町大正大奈路、右岸が同町下道の渡川水系檮原川にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
愛媛県新居浜で金属精錬を行っていた住友鉱業(株)(現住友金属鉱山(株))は精錬用電力確保のため大正半ばより四国各所で電源開発に着手します。
渡川水系では傘下の渡川水力(株)を通じて電力開発が行われ、当ダムも1939年(昭和15年)に着工されますが、直後に電力管理法により日本発送電に接収されました。
ダムが未完成のまま1944年(昭和19年)に津賀発電所(最大出力1万8650キロワット)が稼働しダム便覧ではこれを津賀ダムの竣工年度としていますが、ダムが正式に竣工したのは戦後1951年(昭和26年)まで下ります。
そして同年の電気事業再編成により津賀ダムおよび発電所は四国電力(株)が事業継承しました。
その後、河川維持放流による小水力発電を行う津賀発電所3号機(最大550キロワット)が増設されました。
 
今回は土佐大正から国道439号線を北上して津賀ダムに至りました。
下流面が見れるのは右岸のみ


クレストにはラジアルゲートが10門並び、減勢工は左右両岸に絞りが入った昭和10年代設計らしいすり鉢状。



 
下流面。

右岸に繋がれた巡視艇。

 
右岸上流側に集落があり、天端は左岸の国道と右岸を結ぶ生活道路になっています。
上流側には巻き上げ機が並びますが、フェンスで厳重に隔離。


天端から
減勢工は四方形のすり鉢状。
この絞りの形状はほぼ同時期に着工された長沢ダムと酷似しています。

 
河川維持放流の義務化によって増設された津賀発電所3号機
最大550キロワットの小水力発電を行います。

 
ダム湖は上流に細長く続き総貯水容量は1930万立米に及びます。

 
水利使用標識。

 
四国電力おなじみの発電所説明版。

 
左岸から上流面
対岸に管理事務所と取水口があります。

 
管理事務所と取水口をズームアップ。

 
(追記)
津賀ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2305 津賀ダム(1752) 
左岸 高知県高岡郡四万十町大正大奈路 
右岸         同町下道 
渡川水系檮原川 
 
 
44.5メートル 
145メートル 
19300千㎥/14000千㎥ 
四国電力(株) 
1944年発電開始 
1951年ダム完成 
◎治水協定が締結されたダム 

西久山池

2021-12-02 20:00:00 | 高知県
2021年11月21日 西久山池
 
西久山(にしひさやま)池は高知県高岡郡四万十町上宮にある灌漑目的のアースフィルダムです。
上宮地区は四万十川が大きく蛇行した河岸段丘上にある集落で、揚水技術のない時代は目の前を流れる大河を指をくわえ見るのみ、水利は沢水を溜めた溜池に頼るしかありませんでした。
ダム便覧には四万十町上宮の所在地は記されているものの経緯度の記載はなく位置未確認案件となっていますが、四万十町ため池ハザードマップで位置の特定ができます。
ダムの起源については、ダム便覧には1923年(大正12年)に上宮土地改良区の事業で竣工と記されており、土地改良区の前身となる水利組合の事業、つまり受益農家の持ち出して築造されたと思われます。
一方、諸元についてはダム便覧では堤高15メートルとなっている一方、高知県のため池データベースでは堤高11.5メートルとなっており河川法上のダムの要件を満たしていません。
 
右岸から下流面
定期的に草刈りが行われているようです。
 
天端は町道。
\
 
上流面
需要期が終わったせいか、訪問時は水が抜かれていました。
中段に土留の杭が並び、この辺りが満水位のようです。
 
右岸の簡易な洪水吐。
 
堤体右岸に沿って導流部が流下します。
 
歩いて池下に降りられますが、自重しました。
池から補給を受ける農地はこの下流の四万十川沿い段丘上に広がります。
 
池下の底樋桝。
 
水が抜かれた貯水池
逆L字型に折れ曲がった総貯水容量6万立米の小さな溜池です。
 
水が抜かれていたので、湖面に降りてみました。
法面上部は石張りで護岸され、その下に土留めの杭が並ぶ昔ながらの作り。
 
左岸の取水設備。
木栓を差し込む昔ながらの池栓です。
もとは石樋だったんでしょうが、さすがに樋はコンクリートでした。
右手の擁壁も石積み。
 
水が抜かれていたおかげで池側面の石積み擁壁、上流面の石積み護岸と土留めの杭、さらには木栓を差し込む池栓など昔ながらの池の形態を目の当たりにすることができました。
 
2299 西久山池 (1751)
高知県高岡郡四万十町上宮
渡川水系四万十川左支流
15メートル(ため池データベース 11.5メートル 
60メートル(ため池データベース 67メートル) 
60千㎥/40千㎥
上宮地区
1923年

佐賀取水堰

2021-12-02 10:00:00 | 高知県
2021年11月21日 佐賀取水堰
 
佐賀取水堰は左岸が高知県高岡郡四万十町家地川、右岸が同町弘瀬の渡川水系四万十川にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリート堰堤です。
愛媛県新居浜で金属精錬を行っていた住友鉱業(株)(現住友金属鉱山(株))は精錬用電力確保のため大正半ばより四国各所で電源開発に着手します。
渡川水系では傘下の渡川水力(株)による電源開発が進められ、1937年(昭和12年)に竣工したのが佐賀取水堰で、ここで取水された水は佐賀発電所に送られ最大1万5700キロワットの水路式発電が稼働しました。
その後、ダムおよび発電所は日本発送電の接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により四国電力が事業継承しました。
堤高8メートルと河川法上のダムの要件を満たしていませんが、『最後の清流』と称される四万十川本流唯一の河川工作物であるとともに、四国堰堤ダム88箇所巡り番外札所に選ばれていることから今回足を延ばすことにしました。
 
取水堰はJR予土線家地川駅が目印となり、取水堰周辺は家地川公園として整備されています。
下流の弘瀬橋から
ローラーゲート4門で四万十川を閉め切り、左岸に魚道、右岸に自由越流頂があります。
 
ゲート扶壁前面のテラスに巻き上げ機が置かれ、ゲート支柱を経由したワイヤーでゲート昇降を行います。
これは中国電力や四国電力の発電ダムで多く見られるスタイル。
 
ダムサイトには佐賀発電所で使われていた水車ランナーが展示されています。
 
上が発電用取水口と沈砂池
手前は魚道ゲート。
 
沈砂池下流側
左手に取水用スクリーンが見えます。
右手のゲートは余水ゲート。
ここから約7キロの導水路で佐賀発電所に送水され、放流水は流域変更して伊与木川を通じ太平洋に流れます。
河川維持放流が義務化されていない時代、佐賀取水堰から梼原川合流地点までの約16キロは無水区間でした。
 
天端から下流の眺め
1枚目の写真は下流の弘瀬橋から撮ったものです。
 
『昭和十二年十月竣工』の銘。
 
下流側のテラス。 

天端は歩行者及び二輪車のみ通行可  
足元は板張りのため、ちょっと吊橋気分が味わえます。 
ゲート支柱上段には管理用の鉄骨トラス製歩廊が渡されています。 

貯水池右岸に繋がれた巡視艇。
 
右岸側は護岸のためでしょう、自由越流頂になっています。
ここには後付けのフラップがあり、これで水位の微調整を行うようです。
 
取水堰周辺は家地川公園として整備され、周辺では屈指の桜の名所だそうです。
訪問時は紅葉がいい感じで色づいていました。
 
ダム反対派は『四万十にはダムがないから清流が保たれている』と口にしますが、堤高15メートルに満たないものの四万十を閉め切る佐賀取水堰は構造物としてはダムと変わりありません。
ダムが環境にまったく負荷を与えないとは言いませんが、ダムの有無が川の清濁全てに関わるという考え方には賛同しかねます。
事実四万十よりも水質がよい仁淀川にはハイダムが4基作られているのだから。 

佐賀取水堰 
左岸 高知県高岡郡四万十町家地川
右岸         同町弘瀬 
渡川水系四万十川 
 
 
8メートル 
112.5メートル 
---千㎥/925千㎥ 
四国電力(株) 
1937年 

杉田ダム

2021-12-01 20:00:00 | 高知県
2021年11月20日 杉田ダム
 
杉田(すいた)ダムは左岸が高知県香美市土佐山田町杉田、右岸が同町有谷の一級河川物部川本流にある高知県公営企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1934年(昭和9年)に『物部川河水統制事業』が採択され物部川の総合開発が着手されます、戦後河水統制事業は『物部川総合開発事業』に衣替えしこれに高知県企業局(現高知県公営企業局)が発電業者として事業参加、杉田・吉野両ダムおよび発電所建設事業が進められました。
杉田ダムは1959年(昭和34年)に竣工し、ダム式発電所の杉田発電所で最大1万15004900キロワットのダム式発電が行われています。
杉田ダム・発電所の完成により高知県企業局は計3万9200キロワットの発電能力を有するに至りました。
 
杉田ダムは国道195号線沿いにあり、ダム下流側の農道を辿るとダムと正対できます。
吉野ダムと同じミントグリーンのゲートが4門並びます。
 
ズームアップ
西向きのダムで、ちょうど西日を受けてゲートが美しく輝いています。
 
水利使用標識と発電所概要。
 
ダムそばを走る国道195号線にはJRバス『杉田ダム』バス停があります。
 
ダム式発電の杉田発電所取水口
これは吉野ダムとほぼ同じ構造。
 
右岸にある取水設備 
これは既得取水権を持つ農業用の取水設備で上流の永瀬ダムの不特定利水容量からの補給を受けます。  

天端は軽車両まで通行可能。 
こちらも吉野ダム同様緑と黄色の組み合わせ。 

天端からダム式発電の杉田発電所を見下ろします。
こちらは吉野発電所と異なり半地下式で落差35メートルを利用して最大1万1500キロワットの発電を行います。
発電所頭上にはガントリーが鎮座。
 
減勢工と副ダム。
 
ダム湖は総貯水容量1053万2000立米、有効貯水容量573万2000立米
堆砂率は46%。
 
(追記)
杉田ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2312 杉田ダム(1750) 
左岸 高知県香美市土佐山田町杉田 
右岸          同町有谷 
物部川水系物部川 
 
 
44メートル 
140.5メートル 
10532千㎥/5732千㎥ 
高知県公営企業局 
1959年 
◎治水協定が締結されたダム 

吉野ダム

2021-12-01 14:00:00 | 高知県
2021年11月20日 吉野ダム
 
吉野ダムは左岸が高知県香美市香北町吉野、右岸が同町永野の一級河川物部川本流にある高知県公営企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1934年(昭和9年)に『物部川河水統制事業』が採択され物部川の総合開発が着手されます、戦後河水統制事業は『物部川総合開発事業』に衣替えしこれに高知県企業局(現高知県公営企業局)が発電業者として事業参加、杉田・吉野両ダムおよび発電所建設事業が進められました。
このうち吉野ダムは同事業初のダムとして1953年(昭和28年)に竣工し、ダム式発電所の吉野発電所で最大4900キロワットのダム式発電が開始されました。
その後、1956年(昭和31年)に永瀬発電所が、1959年(昭和34年)に杉田ダムと杉田発電所が完成し、高知県企業局は計3万9200キロワットの発電能力を有するに至りました。
 
国道195号線のJRバス吉野発電所バス停がダムへの入り口です。
左岸沿いの道路からダムと発電所が見下ろせます。
グリーンのゲートが西日に照らされ美しく輝いています。
実は事前にこのゲートに魅せられ、西向きの吉野ダムと杉田ダムに陽が当たる午後に訪問できるよう計画していました。
 
ピアのグリーンとイエローの配色は見事というほかありません。
手前の建屋が吉野発電所で、色はくすんでいますが放流ゲートもグリーンです。
 
 
 
ゲート横に取水口が2門あります。
 
親柱の『高知縣』の銘もグリーン。
 
ダム湖は総貯水容量209万1000立米ですが、堆砂のため有効貯水容量47万4000立米にとどまります。堆砂率78%。
 
天端は徒歩のみ開放されています。
対岸(左岸)高台に管理事務所と開閉所(変電所)があります。
 
右岸親柱の『吉野ダム』の銘板もグリーン。

右岸から見た吉野発電所 
落差16メートルを利用して最大4900キロワットの発電を行います。 

(追記)
吉野ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2307 吉野ダム(1749) 
左岸 高知県香美市香北町吉野 
右岸        同町永野 
物部川水系物部川 
 
 
26.9メートル 
115.5メートル 
2091千㎥/474千㎥ 
高知県公営企業局 
1953年 
◎治水協定が締結されたダム

永瀬ダム

2021-12-01 10:00:00 | 高知県
2021年11月20日 永瀬ダム 
 
永瀬ダムは左岸が高知県香美市香北町永瀬、右岸が同市物部町柳瀬の一級河川物部川本流にある高知県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
物部川は集水域の年間降水量が3000ミリ超と日本屈指の多雨地帯の一方、河川流量の季節変動が大きく洪水や渇水が頻発していました。
県は1934年(昭和9年)に物部川河水統制事業を採択しダム建設を軸とした河川開発事業に着手しますが、戦争激化により具体的な進展はありませんでした。
戦後、河水統制事業は『物部川総合開発事業』に衣替えし建設省直轄事業として1956年(昭和31年)に永瀬ダムが竣工、完成後に高知県に移管されました。
永瀬ダムは現在高知県土木部が管理し物部川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、高知県公営企業局永瀬発電所(最大出力2万2800キロワットでのダム水路式発電を目的として運用されています。
京都府の大野ダムや秋田県の皆瀬ダム、宮城県の大倉ダムとなどととも建設省施工ののち県に移管されたダムの一つですが、永瀬ダムの竣工は特定多目的ダム法施行前になるため、分類としては兼用工作物と言う括りになります。
 
永瀬ダム両岸を県道が走っていますが、湖岸はいずれも隘路のため下流から県道220号を北上するのが無難です。
ダムと正対するポイントはありませんが、右岸県道217号線から下流面を望めます。
洪水吐はクレストラジアルゲート5門だけ。
ピア上のゲート巻き上げ機は被覆されています。
左岸ダムサイト(向かって右手)の建屋が管理事務所。

 
ゲートをズームアップ
左右両端のゲートにはカバーがついています。
実は護岸のため両端のゲートは開けることがなく、放流設備としては実質3門となっています。

 
天端は車両通行可能
ゲート部分はクランク。

県管理のダムですが、施工は建設省
竣工銘板にも建設省中国四国地方建設局の名があります。

 
ダム銘板。
管理者にかかわらず四国では『〇〇堰堤』と記された銘板をよく目にします。


減勢工は緩やかに左にカーブしています。
河床は放流水の圧力がかかる右岸側が厚くなり、副ダムも右岸側が階段状に強化されています。


副ダムをズームアップ。


豪雪地帯以外では珍しくピアのゲート巻き上げ機は被覆されています。
この建屋は後付けのようです。


ダム湖は『奥物部湖』
総貯水容量は4909万000立米。

 
左岸から。


左岸堤体直上の浮桟橋と巡視艇。

左岸ダムサイト擁壁に嵌め込まれた銅板。
ダムの説明と諸元が記されています。

ダム湖右岸の柳瀬公園パーキングから湖畔に降りることができます。
上流面を遠望。

 
ゲートをズームアップ
両端のゲートにカバーがついているのがよくわかります。

 
取水設備を探しましたが見当たりません。
帰宅後調べたところ発電用の取水口はダムの南約1.6キロ、支流の舞川にあることがわかりました。
後の祭り…
 
(追記)
永瀬ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2309 永瀬ダム(1748) 
左岸 高知県香美市香北町永瀬 
右岸     同市物部町柳瀬 
物部川水系物部川 
FNP 
 
87メートル 
207メートル 
49090千㎥/41470千㎥ 
高知県土木部 
1956年 
◎治水協定が締結されたダム