演劇書き込み寺

「貧乏な地方劇団のための演劇講座」とか「高橋くんの照明覚書」など、過去に書いたものと雑記を載せてます。

江戸の産業ルネッサンス

2020年05月05日 14時30分36秒 | 読書

中公新書、小島慶三の江戸時代における江戸時代の再評価。

「逝きし世の面影」(渡辺京二)と同時期に発売されており、この時期エコノミックアニマルと呼ばれた日本の風潮と、バブル期の批判として江戸時代の再評価が比較的似た手法によって行われたと思われる。
渡辺の手法が、幕末から明治に日本を訪れた、異邦人による訪日記を読破。日本近代が失ったものの意味を根本から問い直したものであるのに対し、小島は同様な手法に加えて産業の発達史を考察し、日本がなぜ急速に近代化できたのかを説明している。
ただ、どちらもバブル期に出されたもののせいか、エコノミックアニマル化した日本人を憂いているところがある。
その後の災害を経て、今の日本を考察したらどう書き方が変わっていたのか、もちろん果たせないことだが、興味がある。









この世の春

2020年05月05日 14時06分00秒 | 読書

宮部みゆきの時代小説。
上下2巻と分厚い。しかし、宮部みゆき初の恋愛ものとは思わなかった。そういえば恋愛の出てくる話は少ないかもしれない。というよりも、読んだのに記憶から消えている作品が多いのだ。

話は、架空の下野国の北見藩藩主の乱心による藩主交代と隠居した元藩主をめぐる人々の話となっている。最初は多重人格の話かと思っていたが、そうでもなく、ストーリーはとても面白かった。主人公の各務(かがみ)多紀は出戻りの美女で、姑にいびり出されて心に傷を負っている。この設定が、小説のいろいろな場面でさりげなく効果を出していると思う。ラストには別のラストもあっていいのでは、というレビューが結構見られた。少しだけ、その気持ちはわかる。これは読むときに誰に心入れしていたかで、変わってくるのだと思う。


ついでに、宮部みゆきのほかの本のレビューをネットで観たのだが、題名は思い出せても中身を思い出せない作品が多くあることに気が付いた。ほとんど読んでいるはずなのだが、思い出せないのだ。これも老化現象の一つであろうか。