【Live Information】
シンガーソングライターの伊太地山伝兵衛さんが亡くなりました。
まだ56才の若さなのがよけいにいたましい。
縁があって、一度だけ「共演」の機会がもつことができました。
ぼくが演奏真っ只中の時に、伝兵衛さんが偶然お店に入って来られたのです。
すぐに「セッションしようよ」ということになって、何曲か一緒に演奏させていただきました。なんの曲だったか記憶がさだかではないのですが、「On The Sunny Side Of The Street」を演奏したことだけは覚えています。
その後、ひとりで「What A Wonderful World」を弾き語っておられました。その時のMCで、「これを3連ノリのロッカバラードでやる人が多いんだけど、ほんとうはこの歌はサラリと、とつとつと歌わなきゃならないんだ。そうでないとこの曲の本当の意味は伝わらない」とおっしゃっておられたのもはっきり覚えています。それ以後、この曲を演奏する時には、ほとんど必ずその言葉がぼくの頭をよぎります。
ぼくが伝兵衛さんのライブを聴きに行ったのもごくごくわずかです。
一昨年12月、村上ポンタさん、石井康二さん、成瀬明さんとのライブが、伝兵衛さんを体験した最後です。
だから、ぼくはあまり伝兵衛さんについて語ることはできないのですが、伝兵衛さんの友人である、ぼくが懇意にしていただいているライブハウスのオーナーFさんが受けた衝撃はただごとではなかったようです。
Fさんのお店がオープンして以来の肝胆相照らす仲、いわばある意味「戦友」でもあったわけですから。
「ヤンチャ」というか、「傍若無人」な振る舞いをする、あるベテラン超有名ミュージシャンが、伝兵衛さんの影響で謙虚さが見えてきた、とか、とくにメディアに乗って名前が売れたわけでもないのに、伝兵衛さんを慕うひとたちがその死をとても惜しんでいて、全国各地で自発的に追悼ライブが行われている、とか、いろんな話をFさんから伺いました。
「本当に人生って何が起こるかわからないですよね」ということをふたりでじみじみ話し合いました。
だから「やりたいことは、やりたいと思ったらどんどんやっていかなくては」、というようなことも。
その時思ったんです。
ぼくは、自分の亡くなったボスから「いつも『今夜が最後のステージや』と思って演奏せなあかん」ということを教えられてきました。そしてもちろんその言葉を心に刻んできたつもりではありました。
けれど、甘かったなあ、まだ考え方が狭かったなあ、って。
「これで最後だと思うくらいの覚悟」が必要なのは演奏だけじゃない。
今日、この時がそうなんです。
誰かに会う時も「これで最後かもしれない」と思っておかなくては。
そう思ったら、自分のわがままな気持ちを無分別に他人にぶつけることもなくなるでしょう。
それに、別れ際には怒った顔や悲しい顔は見せられない。
そんな顔を、たとえば友達のぼくに対する記憶の最後に刻ませてはいけない。
最後に見せる顔は笑顔でありたい。
そう思いました。
難しいことですが、今日からはそういうふうにして人と関わっていくつもりです。
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