そしてキース・ジャレットです。 ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットと組んだトリオは「スタンダーズ」と呼ばれ、数多くのスタンダード・ナンバーを彼らの感性で蘇らせました。 その中で体の奥から感動したのが、「Standards vol.1」に収められた「God Bless The Child」です。 初めて聴いた時から気持ちを激しく揺さぶられました。文字通り虜になりました。 自分の気持ちを代わりに音で表現してくれたような気がする不思議な感覚、あるいは自分の内面に潜んでいる音楽の指向を引き出されたような感覚、と言ったらいいのでしょうか。 ゴスペル・ロック風のアレンジと、三人の渾身のソロは、いまだに聴くたびに胸をアツくさせてくれます。 CDのクレジットでは15分32秒の長尺ですが、長いと感じたことは一度もないですね。「Let It Be」や「My Back Pages」などと並んで、間違いなくぼくは死ぬまでこの曲を聴き続けるでしょう。
そういう意味ではスリー・ドッグ・ナイトというロック・バンドには音楽的な垣根を取っ払ってもらったかもしれません。 このバンドは黒人音楽をリスペクトする白人6人+黒人1人の7人編成です。いわばぼくとR&B系音楽を「とり持ってくれたバンド」です。 ぼくは「Old Fashioned Love Song」や「Joy to the World」で彼らが好きになり、どんどん聴き漁っていくうちに「Try a little tenderness」に出会いました。ブラック・ミュージックをリスペクトしているだけあって、スリー・ドッグ・ナイトの「Tenderness」の黒っぽさがたまらなく好きだったのですが、それでもオーティス・レディングが歌うバージョンは、まだ自分には濃すぎて馴染めなかったんですね。 そういうところをガラリと変えてくれたのが、ダニー・ハサウェイの「Live」です。
京都のベーシスト、中嶋明彦さんの弓での演奏が大好きです。 中嶋さんが参加している関西のユニークなジャズ・グループ「Freedom Jazz Sprits」の「In a sentimental mood」におけるアルコ・ソロはそれこそ好きすぎて、いまだにああいうふうに弾けるようになりたい、と心の中で追いかけ続けています。(全く追いつけません)
そのうちジャズならではの熱い演奏、遊び心に満ちた演奏に徐々に出会い、楽しさ面白さに惹き込まれるようになりました。 例えば、佐山雅弘(piano)さんの演奏。大坂昌彦(drums)さんとのライブを聴きに行ったことがありますが、その時に聴いた「Swinging on the Star」は忘れることができません。 とくに佐山大坂の両氏によって繰り広げられた4bars(4小節ソロ交換)は激しく熱く、そして抱腹絶倒。必死の形相で演奏するふたりの音はあまりにも凄まじくあまりにもユーモラスで、客席は爆笑と喝采の渦でした。演奏だけであんなに人を笑わせられるのか、とある意味衝撃だったなあ。
この「Kojikanatsuru3」のラストを飾っているのは、ボブ・ディランの書いた「My Back Pages」。 この曲、いやこの演奏がもう好きすぎて、「My Back Pages」だけを繰り返し繰り返し聴いているうちに夜が明けてしまったことがあります。 いつだったか「ぼくがあの演奏をいかに好きか」「あれは今まで聴いたMy Back Pagesの中で最高の演奏である」、と恥ずかしげもなく金澤さんに力説したことがありました。 金澤さんは「あれは抜群にいいだろ?」と力強く言っておられました。ぼくが、あのMy Back Pagesだけを聴いていて夜明かしをしてしまったことがあるという話をすると「ホントかよ~」と言って相好を崩しておられましたが、本当にぼくはあの熱さとスピリットに、いまだに参ったまんまなんです。