ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

聴かないひとたち

2009年11月23日 | 価値観
     ライヴハウスの様子。
     聴く人もいれば踊り出す人もいて・・・楽しみ方は人それぞれですよね(^^)
     あ、ちなみにこのベーシストはワタクシです(*´∀`*)


 皆様、三連休をいかがお過ごしでしょうか。
 ぼくは金曜の夜は飲み会でした。
 メンバーは以前記事にしたこともある前年度の上司Nさん、現在ぼくと同じ部署のNo.2であるKさん、そして、以前部署が同じだったA先輩の、計四人です。
 ぼく以外の三人は、仕事に厳しく、前向きで、人間性もしっかりしているので、話をしているととても楽しく、同時に人生に対する意欲も増すのです。もちろんお酒もハズんで、あっという間に時は経ち、日付が変わったところでお開きになりました(^^)
 その反動(?)で、土曜から今日(月曜)までは基本的に家でCDを聴きながらボーッとして過ごしてしまいました。精神的なモロさと波があるため、まだまだ一定の気力を保つ力が乏しいのですが、それでも金曜のような楽しい飲み会ならまたぜひ参加したいな~


 さて話はコロコロリンと変わって・・・
 ぼくがよく出没する夜のスポットに「ライヴハウス」があります。(ここではテーブル席があり、料理や飲み物を楽しみながら生演奏に浸ることのできる、ジャズ系のライヴハウスを指します)


 世の中いろんな人がいますよね。
 もちろん常識の範囲内で接することのできる人がまだまだ多いんですが、今話題になっている「モンスター・ペアレント」とか「クレーマー」など、全くまともな話が通じない人も増えてきている様子・・・。
 もちろん「ライヴハウス」にもいろんなお客がきます。
 「生演奏を提供して、お代を頂く」のがライヴハウスですから、基本お客さまは、音楽好きな方、生演奏を体感してみたい方が圧倒的多数です。
 しかし、この中にも意表を突いてくるようなお方が、時として紛れ込んでいるわけですね(^^;)


 生演奏を提供しているお店でも、例えばホテルのラウンジみたいなところではBGMがわりに演奏するというスタンスのところもあります。
 当然、お客さまの主目的はおいしく飲食をして、お連れさまと会話を楽しむことなので、こういう場合ぼくらは店のインテリアと化して、ひたすら雰囲気を出すように務めます(といいながら、実験的なアドリブやインタープレイなんぞを密かに試したりして・・・笑)
 だから、悪い言い方をすれば「無視」されても平気なんです。BGMがわりなのでお客さまの邪魔にさえならなければそれでいいや、と割り切ってもいます。
 でもたまに拍手を頂いたり、お志を包んで頂いたりすると、「あぁ、音楽をも楽しんでくれた人がいたんだ~」とこちらが嬉しくなったりするものなんですね。
 ラウンジのスタッフが「MINAGIさん、お客さまが名前尋ねられたからお教えしましたよ」っていうから、「どんなお客さん(?_?)」と聞き返すと、「阿川泰子さんです」と返されてビビッたこともありました(^^;)


 これがライヴハウスになると、「音楽を聴きに」お越しになる方が圧倒的多数ですから、ある意味プレッシャーもかかります。
 でも、ぼくは、おいしい料理やお酒を頂きながら、かつ演奏中にも会話(ただし常識外れの大声はカンベン・・・^^;)を楽しむことは全く悪いことだとは思ってません。むしろ料理・お酒・音楽の三点セットでリラックスしているからこそ、その空間で心地よく会話もしながら過ごして下さっているんじゃないかな、と思うのです。


 しかし、一番ヒドいのは、タイトル通り「聴かない人」です。
 一時は、「演奏が良くないから聴いてくれないんだ」と大反省し、もっと気合いを入れて弾きまくってましたね~。
 でもある時、あるピアニストに言われましたよ。
 「MINAGI君、聴こうとせんヤツは何したって聴かんでぇ。ハナっから聴く気のない客は、どんなスゴイことやったって振り向かせるのはムリや」
 あ~、そんなモンかぁ・・・。
 そういや、「たとえ歌い手が美空ひばりでも、100人いたら100人を惹きつけることは難しいもんなんや」って言ってた人もいたっけ。
 たしかに聴く方にも好みがあるし、聴いて貰えないのは仕方のないことかも、とも思う反面、ギャラを頂きながらお客さまを楽しませられない、っていうのはやはり悔しいものです。


 ところが、もっとタチのワルいのがいるんですよ(^^;)
 聴かなくてもフツーにしてくれているぶんにはまだいいんですが、前述の「全くまともな話が通じないない人たち」にはもうお手上げです。最初から聴く気がないのになんで演奏してるとこに現れるの?
 というか、もうギャラはいらんから帰ってくれぃ!ヽ(`Д´)ノ、なーんて思ってしまうこともしょっちゅうでした。


 カウンターだけの、とあるライヴハウスがあります。カウンターの中に無理矢理グランドピアノとドラムセットを置いた小さなお店で、20人ぐらいですぐ満席になるくらいのささやかなキャパです。
 もともと「ジャズのライヴハウス」と謳っているにもかかわらず、そこには「聴かない人たち」がよく出没してたなぁ・・・(汗)
 必死で演奏している前で大声で連れの女性にオモシロクもない冗談を連発する男性(口説こうとしてる)、演奏中に薀蓄(というかバカにしたような批判)を披露しまくる「ジャズ通」らしき男性、宴会の二次会の流れでやってきて、大騒ぎをやめない4~5人連れ、などなど。共通するのはみんな「大声・バカ笑い・拍手しない」ってことです。(でも大声で演奏のジャマされて拍手だけされたら、それはそれでイヤなもんなんですよ・・・汗)
 生演奏を聴く店なんだから、聴く気がなかったり、話したいなら最初からそういうお店へ行けばいいのに、と内心ムカついたりしてました。静かに聴いている他のお客にメイワク、っていうことに気がつかないんです、そういう人たち。


 ある時、あんまりアタマにきたので、ベース・ソロの時少しずつ音を小さくしたことがありました(狭いお店なので、ウッドベースを生音で弾いてたんです)。
 でも目の前の大声の客は話をやめない。で、ぼくも意地になってどんどん音量を下げる。以前、「騒がしいお客に大音量で対抗したら、お客は音に負けないようにもっと大声になるよ」って注意されてましたので。。。(^^;)
 そして最後には全く音を出すのをやめて、弾くフリだけしたんですけど、ダメでした(笑)
 そういえば、大声でイチャついてるカップルに「あと少しで終わりますからねー。ガマンしてくださいねー(^^)」と笑顔で言い放ったヴォーカルさんもいたっけ・・・。


 今までで一番強烈にジャマだったのは、ある70前後くらいのオジイサン。
 実は、OL風のふたり連れをナンパしようとして、ずっとその女性たちをつけて来て、このライヴハウスに入ってきたらしく、最初からその女性ふたりの隣に陣取って、常に話しかけてるんです。
 「ワシ、今仙台から帰ってきたばっかりなんじゃ。老人会(かなんかだった)の大会があったもんじゃからの」 
 「アンタら、良かったらなんか飲まんか?」
 「うわ~、いいんですか、ありがとうございまーすキャッキャッ」
 なんてOL風も悪い気はしてないみたい。
 これが演奏中に延々と続くんですが、そのうちこのジイサマ、
 「老人会(かなんか)でワシが良く演るんが手品なんじゃ。アンタら、見せてやろうか?」
 「エーッ、見たい見たいキャッキャッ」 
 「・・・・・」←演奏中のバンドさんたち 
 で、仙台帰りらしく、旅行カバンの中からホントに手品道具を取り出して、

 は じ め や が っ た !

 さすがに店のマスターが「ここはライヴハウスですし、今演奏中なのでご遠慮くださいモゴモゴ」と注意したんですが、、、
 手品はやめてもナンパは止まらん(T-T)
 最初はおごって貰えてそれなりに相手してたOL達も、
 「オネエサン、家はどのへん?」
 「帰りはワシが送って行くわ」
 「いんや、泊まりに来んか?フヒヒw」
 などとシツコクなってくると、無言でシラけた様子。


 「夕べはこうこうこういうことがあったんですよ~」
 翌日、ぼくは自分の心のボスである加古川在住のピアニスト・有末佳弘さんに電話でグチりました。
 「たいへんやったなぁ、まぁそんなんも居てるわ、気にすんな」とか「どんな場合でも惑わされんよう弾かなアカンで」的な返事が返ってくるかと思いきや、さすがはプロ中のプロの有末さん、
 「アホやな、MINAGI君。そういう時に手品なんかを始められたらやな、すかさず
     オリーブの首飾り

 でも演奏したったらええねん」


 有末さん、さすがあなたはぼくが心から慕っていたお方だけありますわ!(^^)



人気blogランキングへ←クリックして下さいね
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一日早い「文化の日」

2009年11月08日 | Weblog~雑記
 
 気がつけばもう11月ですか~
 前回の記事からすでに5ヶ月も経っている・・・(汗)
 携帯電話から手軽にネットの世界を覗いてはいたんですが、そのせいかPCを開ける時間そのものが減ってしまっていました。気力もあまりなかったし・・・。
 エネルギーを記事のアップに回すこともなんとなくしんどかったりしてたんですが、自分が周りの人に支えられていることを実感できることがあったりして、そのおかげか、体調も少し良くなってきた気がします。


 秋は一番好きな季節です。気候も穏やかで過ごしやすく、空気を吸うだけで清清しかったりしますよね。
 気分的にも落ち着いてきたそんな時、大の仲良しのなおちゃんから「マイケル・ジャクソンの『This is it』観に行かない?」というお誘いを頂きました。
 実はぼくはマイケルの曲をじっくり聴いたことはなかったんです。ヒットしてるから一応押さえておく、みたいなスタンスでしか接してなかったんですね。でもマイケルが亡くなったニュースはやはりショックだったし、彼のことは非常に優れたタレントだとは思ってたから、彼の映画があるなら「ぜひ動くマイケルを観てみたい」と思って、大喜びでお誘いを受けました。


 夕方に大阪駅で待ち合わせ。そこから歩いて5分ほどで目的の「梅田ブルク7」へ到着。
 上映期間限定の話題作でもあるし、飛び石連休のさなかでもあるので、席が確保できるかどうか不安でしたが、ゆったり座れて満足でした。


 もうご覧になった方も多いと思いますが、「This is it」はマイケルのツアーのリハーサル風景を凝縮したドキュメンタリー映画です。
 「リハって早く言えば練習でしょ?練習風景なんか観て楽しいの?」と思う方もいらっしゃると思います。実際、リハではステージの流れだけを確認するタイプのミュージシャンもいるのですが、マイケルは違いました。リハの段階から全力を尽くして、全身で表現しているのです。ここに彼の生き様の一部を見た気がしました。
 ぼくが耳にしていた曲も多く、それはつまりマイケルもステージでかつて幾度となく歌った曲ばかりということなのでしょう。でも「慣れからくる手抜き」は全く見られなかったですね~。つねに最善を尽くして、観る者聴く者を異次元に連れて行こうとしてくれる、そんなマイケルの命がけの熱い想いがひしひしと伝わってきました。


 マイケルの根底にあるのは「愛」だなぁ。。。
 愛が詰まってないと、あんなハートフルなステージにはならないよね~
 スタッフを愛し、オーディエンスを愛し、音楽を愛し、自然を愛し、地球を愛し・・・。そんなマイケルを愛し、心からリスペクトしているバック・ダンサーやミュージシャン、照明さん・音響さん・衣装さんなどのスタッフたち。
 彼らがファミリーとなり、一体と化して、心をこめて作り上げようとしている壮大な世界、それが感動的にならないわけがないです。こんなことをしみじみ思わされました。


 上映時間は111分。あっという間の111分でした。
 今更ですが、マイケルってほんっと「稀代のスーパー・スターにして最高のエンターテイナー」です!
 観終わったあと、なおちゃんと「良かったね~」と話し合いながら、余韻に浸りました。なおちゃんも「芸術人間」なので、感激もひとしおだったみたい。
 迫力に引き込まれ、感銘を受けたあとだったので、すぐにはいろんな言葉が出てこなかったんですが、「マイケルは流行のポップ・スター」というぼくの認識は見事に覆されて、尊敬の念さえ沸き起こってました。


 マイケルの映画を観たあとはジャズです。
 大阪市北区にあるライヴ・ハウス「ミスター・ケリーズ」に、西山瞳トリオを聴きに行ってきましたよ。


     
     ミスター・ケリーズ     


     
     西山 瞳(pf)


 最近の日本のジャズ・ピアノ界は「美人・ハイテク・ジャズ・ピアニスト」が次々と頭角を現しているのですが、西山嬢もそんなブームの中に身を置いているひとりです。
 あちこちで名前をお見かけするので、ぜひ一度聴いてみたいと思っていたんですが、ちょうどこの夜「ケリーズ」に出演することを知り、すぐ予約を入れてたんです。
 メンバーは、ベースが佐藤"ハチ"恭彦さん、ドラムスが小前賢吾さん。とくに佐藤さんはあちこちで引っ張りだこの多忙なベーシスト、ぜひ一度生で聴いてみたいと思っていたので、このブッキングは願ったりかなったりです。


 演奏は19時半からと21時15分からの2セット。密度の濃いステージでしたよ。
 ぼくは、漠然と「ヒートアップして弾きまくる」姿を想像して、楽しみに開演を待ってました。


 実際の西山嬢のピアノは「ヨーロピアン」な感じでした。テクニカル、と言うよりは、「瀟洒で知的」とでも言ったらいいのでしょうか。本人もMCでビル・エヴァンスの名を出してたけど、やっぱり影響受けてるのかな。面白かったのは、リリカルながらも常にどこか飄々とした雰囲気が漂っていたこと。内面では熱くなっているんでしょうけれど、ずーっとそんな雰囲気なんです。といって決して冷ややかなピアノではなく、西山嬢の温かい「歌」が店内に響き渡っていましたよ。さながらキャンバスに絵を描く過程を見せてもらっているようでした。


 面白い、と言えばドラムスの小前さんのプレイ。つねに小前さんが何かを仕掛けて、曲をどんどん発展させようとしているみたいでした。生きたリズムを三人で共有しているのが前提なので、単調にリズムを刻む場面ってあまりなかったですね。その分、それぞれが自己表現スペースを作って、思い思いに表現を重ねているように聴こえました。そこが自由度の高いジャズの面白さのひとつなんですよね。
 佐藤さんのベースは、とっても巧み。しなやかさの裏に堅実さが備わっているような。でも低音部を支える、というよりは(もちろんそういう役目も担っていますが)三人の出す音を溶け合わせる感じでしたね。ビートを出しつつもさりげなく自己主張してたりして、懐の広いベーシストだと思いました。


          


 楽しい時間ってあっという間に終わっちゃいます。
 2セットじっくりジャズを堪能できました。しかもそのサウンドが生きていて、聴いているぼくたちの気分さえも心地良く支配するんです。そこにおいしい料理とお酒が入って、演奏後のおしゃべりもとっても楽しいものでした。
 なおちゃんも「音楽大好き」で、しかもいろんなアンテナを張っていて、知的好奇心旺盛なので、話題が尽きません。結局、閉店時間を過ぎるまで話し込んでしまいました。


 マイケルの映画とジャズの生演奏、波長の合う大切な人とのアツい会話、まさに「一日早い文化の日」にふさわしい時間でした。
 ぼくは「おひとり様」でライヴハウスに出没することも多いのですが、なおちゃんみたいな「楽しむことを知っている人」と一緒に音に浸るのもとても刺激的でした。月並みな表現ですが、とても密度の濃い、楽しい時間でした。


 やはり「ナマ」で見聞きするのは良いですね~
 自分が音と映像と会話で磨かれたような気がします。
 気力がある時はまた出かけるぞ~(^^)
 皆さまもどうぞ「芸術の秋」を存分に堪能してくださいまし!



人気blogランキングへ←クリックして下さいね
コメント (18)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする