令和3年11月14日(日)
「予もいずれの年よりか・・・。」
からの現代訳。
予も何歳の時からか、
小さな雪が風に乗って飛んでいくのを
うらやみ、漂泊の望みが絶えず、
『笈の小文』の旅のように、
海辺をさすらい、
去年の秋、
川辺のあばらやの蜘蛛の古巣を払って、
やがて年の暮れ、
春になって、霞の空を見る頃には、
浮かれ神が身辺に取り憑いて、
心を浮き立たせ、
道祖神の旅の誘いに遭って、
何事も手につかず、
股引の破れを縫い合わせ、
笠の緒を付け替え、
健脚になるという灸点の三里に灸を据え、
最高の名所松島の月が見たくて、
心が焦り、
住んでいた庵は人に譲り、
弟子の杉風の別宅に引っ越して
一句詠んだ。
草の戸も
草の戸も
住替る代ぞ
ひなの家
娘や孫のいる人に庵を譲ったので、
娘や孫のいる人に庵を譲ったので、
やがて雛を飾っている家になるだろう?
という連句の発句を
庵の柱に掛けておいた。