出かけた帰り、埋め立ての地舞洲に寄った。
まだその時間までには早いのに、「夕日、きれいやで・・」 帰るまいとして言う夫の言葉の暗示に、
(帰りたいな・・)そんな気持ちを胸に押し込めた。
場所移動して駆け上がった小高い丘。
新夕陽丘はまるでパノラマ、ベストポジション、夕日は多くの人を誘っている。
明石海峡や淡路島、六甲の山並みまでもを染めている。
秋を思わせるような冷たい風を感じて、赤く染まりながら静かに空と海を眺めていた。
一ヶ月前の出来事が信じられないくらいに、まるで夢を見ていたように浮かんでくる。
良かった、本当に。
最近何かと言うと、私を労うような夫の言動や仕草。
返せば夫もまた同じように辛い時間を乗り越えたのである。
「夕日、きれいやで・・」それは私への思いやりと、自分自身への慰労でもあることは分っていた。
(ありがとう・・)
夫のシルエットを確認しながらそっと言った、心の中でそっと・・。