「あのさ・・あれ・・あれ・・あの・・」
打ちっぱなしに行くと言う夫が、着替えをしようとしていた。
「あっ、あれは一番右の引き出しの、一番上の段の真ん中の筋の奥です」
「よっしゃ、あった」
肌寒い日、セーターの下に着ようというユニクロの薄いハイネックのインナー。
私には何を着て行こうとしていたかピンときた。
参ったかい、夫。
「お~い、あれ取ってくれい」
「は~い」
あれって何よとは言わないで、これだろうなと動き手渡す。
「おう!」
めっきり増えてきた代名詞、私も多分にもれず。
夜を二人で過ごす時・・
「熱いお茶入れましょうか」
私も欲しかったが、多分夫もそうなのでは・・・と
「おう、今それ言おうと思うたんや」
冷蔵庫の冷たい烏龍茶でなく、急須で入れる飲み頃を吟味した熱いお煎茶。
日常の、互いの思いが合った瞬間、
昔はツーカーとか? それはもう古い?
そのツーカーがいくつも・・いくつも、重なった日、
それが妙に嬉しい64歳の妻。