洋楽レビュー/感想。
圧倒的なまでに洗練されていて、
宗教色が増してシリアスでエレガンスなポップになった、
Vampire Weekendの深化した3rdアルバムのレビュー/感想。
◆Vampire Weekend - Modern Vampires of the City
前作同様にアルバムを印象付ける/象徴するような、
The XXとは別の形で極限まで音を厳選して構成された、
霧掛かった早朝の町を自転車でポタリングしてるような雰囲気の、
1曲目↓の「Obvious Bicycle」を聴けば分かるように、
圧倒的なまでに洗練されており、シンプルでいて実に奥深い…
1stにあった軽快さやアフロビート、
2ndにあったエレクトロ要素も薄れ、ギターの音も減って
レイドバックしてディープでシリアスになっており、
大人っぽくなった…悪く言えば地味になった今作ですが、
「M79」や「The Kids Don't Stand A Chance」など
元々あった室内楽的なクラシック要素が増えており、
パッヘルベルのカノンのようなチェンバロに、
ピアノにオルガンやコーラスがより多く使われ、
教会/宗教音楽要素が色濃く出てますし、
今まで通りワールドミュージック的な要素もありますが
今作はアメリカ…特に彼らの本拠地であるNYをモチーフにして作ったというコメント通り、
ゴスペルにロカビリーにカントリーにフォーク要素と、
アメリカのルーツミュージック要素も色濃く出ており、
曲がいつも以上にバラエティ豊かなんですが、
今までで一番統一感があって最後まで隙らしい隙が無く、
あくまでもポップでキャッチーで分かりやすい内容ながら、
TV On the Radioもビックリの玄人向けの濃い内容にもなってるように、
同時に奥深くてアレンジも凝ってて実に洗練されていて、
オシャレで捻くれたポップから、
シリアスでエレガンスなポップになった感じがあります。
そしてこの作品を語るに避けて通れないのは歌詞ですよ!
「知恵は授かり物。でも君は若さと交換してしまった。
年齢は栄誉ーそれはまだ真実ではないけど」
「私達は死の真実を知っているー全人類の真の道を。
誰もが死んでいこうとしてる。
だけどガール、君はまだそんな年じゃない」
ーStepー
「生まれ変わっても、この世界に正解なんてないんだよ
恩恵の言葉を求めたら、僕にも与えてくれてもいんじゃない?」
「不信心者には地獄の業火が待っている事を知ってるんだ、罪人と同じように
君と僕はまるで線路の上に縛り付けられた不信仰者」
「来世を信じられないけど大丈夫?
これって世界の半分が僕のために計画した運命なの?
僕は君を愛しているけど、彼女は海のほうが好きみたい
その聖水の中には僕のための水滴はありますか?」
ーUnbelieversー
※ちなみに詩の中でイスラム教の聖典であるコーランに出てくる言葉が引用されてたりします。
いつも通りのHip hop的な言葉遊び要素も多分に含みながら、
他のアーティストや本などなど様々な物からの引用が多く、
いくらでも深読み(幾通りの訳し方)が出来ますし、
今作は音楽だけではなくて歌詞もかなり宗教色が強く、
アメリカの固有名詞が多く登場するように、
同時にかなり政治/社会的でもあり、
世界中を周っていろんな人や文化や宗教に触れた、
ルーツがユダヤ人のEzraがアメリカを通して感じたであろう、
「もっと広い視野で物事を見てもいいんじゃないの」というメッセージが込められた、
いろんな風に解釈出来る知的で練られてる奥深い歌詞は素晴らしく、
同じ人間という種族で名前は違えど同じ神様という者を愛していながら、
宗教が違うという理由で争う事や、
不信仰者と信仰者という違いで全く別の見方をする事、
多文化の中で一つの信仰に縛られる事の怖さなどなど、
内容は多岐に渡ってますし、
大袈裟に言うなら、
まるで啓示のようですらあるし、達観してる感じさえある。
「ああ、愛しきものよ、
ザイオン(シオン)はあなたを愛していない
バビロンもあなたを愛していない
それでもあなたは全てに愛を捧げる
おお、聖者よ、
アメリカはあなたを愛していない
だから僕もあなたを絶対愛せない
全ての創造主なのに」
「母国はあなたを愛していない
祖国もあなたを愛していない
本当に全てを愛しているんですか?
ああ、素晴らしい神よ
無神論者はあなたを愛さない
科学者もあなたを愛さない
きっとこれからも変わる事はない」
ーYa Hey-
※ちなみに「Ya Hey」とは旧約聖書の神/ユダヤ教の神「Yahweh」をもじってます。
そしてユダヤ教徒は神の名を直接発語するのは畏れ多いとして口にはしないため
「Yahweh」という言葉は正確に発音出来ないとされてます。
よって、サビの「Yahweh」と歌われてる所が
エフェクトで明確に聞こえないようになってるようです。
少年だった1st。青年だった2nd。大人になった3rd。
例えるならこんな感じなんで、
年齢によって好き嫌いは大きく別れるかもですが、
前述のようにいろいろと考えさせられる深み溢れる歌詞は素晴らしいですし、
生きる/成長する過程において苦悩や痛みや悲しみは付き物ですが、
それをちゃんとシリアスに受け止めながら、
同時に笑い飛ばしているかのような作品で、
最終的には全てを包み込むような暖かい雰囲気なのも素晴らしく、
読み解こうと思えばいくらでも読み解けるような濃厚さもありますし、
圧倒的な成長を感じる凝りに凝った深化した素晴らしい作品だと思う。名作!
※↑の若気の至りで後先考えずにやりたい放題してるMV見れば分かるでしょうが、
「Diane Young」は「Dying young(若死に)」をもじってますので、
日本語訳MVを少し補足するなら、
「ダイアン・ヤングに洗脳されそうなら(若死にしたくないなら)、
ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、時間を正しく(今を大切に)」
みたいな感じになると思われます。
あと「過去なんかどうでもいい。過去より未来が大切。」という人が多い中、
「未来のことなんて誰にも分からない
歳を重ねていくだけの人生なんて最悪なのに僕の人生は自己防衛ばかり。
だって僕は過去が好き。不確定なものは嫌いだから。」
という最後の歌詞を書いたEzraはやっぱり面白い奴だと改めて思いましたww
「過去が好き」なんていうロックミュージシャンは彼だけだと思うw
ちなみに「Step」という曲では、
「僕はとにかく過去の話は全部無視した」という真逆の歌詞があったりします。
PS
歌詞読み解くのにネットで情報集めたり本調べたりしたので、
この記事書くのに過去最高の時間(いつものレビュー記事の3~4倍)掛かってますww
でも個人的にもかなり勉強になったんで良しとしようw
圧倒的なまでに洗練されていて、
宗教色が増してシリアスでエレガンスなポップになった、
Vampire Weekendの深化した3rdアルバムのレビュー/感想。
◆Vampire Weekend - Modern Vampires of the City
前作同様にアルバムを印象付ける/象徴するような、
The XXとは別の形で極限まで音を厳選して構成された、
霧掛かった早朝の町を自転車でポタリングしてるような雰囲気の、
1曲目↓の「Obvious Bicycle」を聴けば分かるように、
圧倒的なまでに洗練されており、シンプルでいて実に奥深い…
1stにあった軽快さやアフロビート、
2ndにあったエレクトロ要素も薄れ、ギターの音も減って
レイドバックしてディープでシリアスになっており、
大人っぽくなった…悪く言えば地味になった今作ですが、
「M79」や「The Kids Don't Stand A Chance」など
元々あった室内楽的なクラシック要素が増えており、
パッヘルベルのカノンのようなチェンバロに、
ピアノにオルガンやコーラスがより多く使われ、
教会/宗教音楽要素が色濃く出てますし、
今まで通りワールドミュージック的な要素もありますが
今作はアメリカ…特に彼らの本拠地であるNYをモチーフにして作ったというコメント通り、
ゴスペルにロカビリーにカントリーにフォーク要素と、
アメリカのルーツミュージック要素も色濃く出ており、
曲がいつも以上にバラエティ豊かなんですが、
今までで一番統一感があって最後まで隙らしい隙が無く、
あくまでもポップでキャッチーで分かりやすい内容ながら、
TV On the Radioもビックリの玄人向けの濃い内容にもなってるように、
同時に奥深くてアレンジも凝ってて実に洗練されていて、
オシャレで捻くれたポップから、
シリアスでエレガンスなポップになった感じがあります。
そしてこの作品を語るに避けて通れないのは歌詞ですよ!
「知恵は授かり物。でも君は若さと交換してしまった。
年齢は栄誉ーそれはまだ真実ではないけど」
「私達は死の真実を知っているー全人類の真の道を。
誰もが死んでいこうとしてる。
だけどガール、君はまだそんな年じゃない」
ーStepー
「生まれ変わっても、この世界に正解なんてないんだよ
恩恵の言葉を求めたら、僕にも与えてくれてもいんじゃない?」
「不信心者には地獄の業火が待っている事を知ってるんだ、罪人と同じように
君と僕はまるで線路の上に縛り付けられた不信仰者」
「来世を信じられないけど大丈夫?
これって世界の半分が僕のために計画した運命なの?
僕は君を愛しているけど、彼女は海のほうが好きみたい
その聖水の中には僕のための水滴はありますか?」
ーUnbelieversー
※ちなみに詩の中でイスラム教の聖典であるコーランに出てくる言葉が引用されてたりします。
いつも通りのHip hop的な言葉遊び要素も多分に含みながら、
他のアーティストや本などなど様々な物からの引用が多く、
いくらでも深読み(幾通りの訳し方)が出来ますし、
今作は音楽だけではなくて歌詞もかなり宗教色が強く、
アメリカの固有名詞が多く登場するように、
同時にかなり政治/社会的でもあり、
世界中を周っていろんな人や文化や宗教に触れた、
ルーツがユダヤ人のEzraがアメリカを通して感じたであろう、
「もっと広い視野で物事を見てもいいんじゃないの」というメッセージが込められた、
いろんな風に解釈出来る知的で練られてる奥深い歌詞は素晴らしく、
同じ人間という種族で名前は違えど同じ神様という者を愛していながら、
宗教が違うという理由で争う事や、
不信仰者と信仰者という違いで全く別の見方をする事、
多文化の中で一つの信仰に縛られる事の怖さなどなど、
内容は多岐に渡ってますし、
大袈裟に言うなら、
まるで啓示のようですらあるし、達観してる感じさえある。
「ああ、愛しきものよ、
ザイオン(シオン)はあなたを愛していない
バビロンもあなたを愛していない
それでもあなたは全てに愛を捧げる
おお、聖者よ、
アメリカはあなたを愛していない
だから僕もあなたを絶対愛せない
全ての創造主なのに」
「母国はあなたを愛していない
祖国もあなたを愛していない
本当に全てを愛しているんですか?
ああ、素晴らしい神よ
無神論者はあなたを愛さない
科学者もあなたを愛さない
きっとこれからも変わる事はない」
ーYa Hey-
※ちなみに「Ya Hey」とは旧約聖書の神/ユダヤ教の神「Yahweh」をもじってます。
そしてユダヤ教徒は神の名を直接発語するのは畏れ多いとして口にはしないため
「Yahweh」という言葉は正確に発音出来ないとされてます。
よって、サビの「Yahweh」と歌われてる所が
エフェクトで明確に聞こえないようになってるようです。
少年だった1st。青年だった2nd。大人になった3rd。
例えるならこんな感じなんで、
年齢によって好き嫌いは大きく別れるかもですが、
前述のようにいろいろと考えさせられる深み溢れる歌詞は素晴らしいですし、
生きる/成長する過程において苦悩や痛みや悲しみは付き物ですが、
それをちゃんとシリアスに受け止めながら、
同時に笑い飛ばしているかのような作品で、
最終的には全てを包み込むような暖かい雰囲気なのも素晴らしく、
読み解こうと思えばいくらでも読み解けるような濃厚さもありますし、
圧倒的な成長を感じる凝りに凝った深化した素晴らしい作品だと思う。名作!
※↑の若気の至りで後先考えずにやりたい放題してるMV見れば分かるでしょうが、
「Diane Young」は「Dying young(若死に)」をもじってますので、
日本語訳MVを少し補足するなら、
「ダイアン・ヤングに洗脳されそうなら(若死にしたくないなら)、
ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、時間を正しく(今を大切に)」
みたいな感じになると思われます。
あと「過去なんかどうでもいい。過去より未来が大切。」という人が多い中、
「未来のことなんて誰にも分からない
歳を重ねていくだけの人生なんて最悪なのに僕の人生は自己防衛ばかり。
だって僕は過去が好き。不確定なものは嫌いだから。」
という最後の歌詞を書いたEzraはやっぱり面白い奴だと改めて思いましたww
「過去が好き」なんていうロックミュージシャンは彼だけだと思うw
ちなみに「Step」という曲では、
「僕はとにかく過去の話は全部無視した」という真逆の歌詞があったりします。
PS
歌詞読み解くのにネットで情報集めたり本調べたりしたので、
この記事書くのに過去最高の時間(いつものレビュー記事の3~4倍)掛かってますww
でも個人的にもかなり勉強になったんで良しとしようw