朝、7時。いや6時だったんだろうか・・・・
うなされた。なんだか誰かにいじめを受けている小学生のようだった。
夢を見た気分じゃないんだけれど、ただとても不安な気持ちがいつものように僕を襲ってきたんだ。
とにかく声を出さずにいられなかった。
「深夜食堂」なんて映画を観たんだ。
小林 薫。
結構好きだったんだけれど・・・・しばらく観なかったんだ。彼の映画。
なんだか、高倉健の「居酒屋 兆治」の焼き直しか?
そんな気分でチケットを買って、座席に座った。
いつものようにひとりっきりで映画館に入って座席に座る。
薄ら寂しいけれど、とても落ち着くんだ。
本当に好きな事、してる。
そんな感じなんだろうね。
で、映画だけれど、なんだか夢みたいな話なんだ。
正体不明の居酒屋の店主。
12時過ぎに集まる客。
誰もが人生の躓きを感じながらも、不安定に折り合いをつけて
自分に重いフタをして暮らしている。
一気通貫で流れているのは店に置き忘れた「骨壺」。
電車の中での忘れ物の話は聞いたことがあったけれど、居酒屋に置き去りにされた骨壺の話は聞いたことがなかった。
少し、この映画でそそられる冒頭の逸話だった。
寡黙だから話しやすいのか、優しいから心の内を話せてしまえるのか・・・
誰からも悩みを打ち明けられてしまう「オヤジ」。
身体を開く前に心を開かれちゃう。
とにかく、こんなヤツが自分だったら・・・と思うと・・・・しんどくなっちゃう。
けれど、こんな食堂だったら帰りについ寄っちゃいそうな店なんだ。
深くは問いただしたりせずに、人の話を聞き流しながら
相手の気持ちを推し量って、相手に負担のかからなようにカタチを作り上げてしまう。
そう、無銭飲食した年若い娘に自分の手が腱鞘炎にかかったからと言って
治るまでの間と言う「言い訳」を作って雇う。
店にはメニューらしきものはない。
朝、仕入れたものでできるものを出す。
わがままといえばそうだし傲慢と言えばそうなんだろう。
客が常連だからできるんだ。しかし、常連だって最初はあるのだ・・・・
多分、「ウィンナー炒め、喰うかい?」
なんてコトを言いながら作って売っていたんだろう。
そんな店がこの周辺に住む人たちに気に入って貰えたんだろう。
自分一人が食っていければそれでいい仕組みなんだ。
でも、何とか一人ぐらいは喰わせられる・・・そんな店。
いかにも、場末の町に似合う「めしや」。
飲食店のホスピタリティの神髄なのかもしれない。
知らぬ者同士が少しだけ深入りした関係になったりするけれど、
ホントのホントのところは誰にも言いたくない。
怖いからね。
そんな気持ちを汲み取って、知らんぷりしながら付き合う。
距離感なんて言葉では表せない微妙な繋がりかたがリアルに描かれていた。
その象徴的なセリフが、
「あんたね、欲しいものはね、たったひとつしか手に入れられないんだよ。」
だった。