非日常が心を柔らかくする。
決まりきった直線の日々はカラダを硬直させてしまう。
神戸の定宿。
このホテルの客担当の動きは、なごませてくれる。
僕の客としての扱い方にだ。
そう、例えばチェックインの時、すでに2回目ぐらいの宿泊のとき、
フロントへ近づく僕に対して、アクションは起こさない。
いきなり荷物を持とうとやって来る客室担当。
僕としては嫌な気分になる・・・・。
そんな大荷物でもないのに・・・・。これ見よがしに、サービス満点でしょ!なんて声だかに叫んでいるようだ。
大切なものが入っているバッグを誰が他人に委ねたりするものか。
そんな客の気持ちなど想像できぬのだ。
彼女は違う。
カウンターに近づく僕をジッと観察している。
声を掛けるタイミングを見極める。
必要がないと判断したらじっと待っている。
部屋に案内する時も無駄口はない。
天気の話も、宿泊人数の話も・・・・尋ねれば、最小限の答えは返ってくる。
やがて、部屋の入り口に立ちカードキーを差し込む。
説明はない。2度目だからだ。
常連客だと判断した彼女の態度に僕はどことなく優越感を覚える。
部屋に入る。
前回の部屋と変わっていれば説明はするかもしれない。
今回はない。
日本旅館のように夕食時間の確認などはない。
当たり前。ここはホテルなのだから・・・・。
そう、僕はできるだけ構われたくない。
しかし、少しだけ寂しい気分も味わいたいのだ。
彼女の働くホテルが気に入っている。
軽やかに動き回り、周囲を観察しつくし、邪魔にならぬように、自分のサービスが相手に負担にならぬように
気配りをする。
そうなんだ。
最高のホスピタリティは客に負担を掛けぬ気配りを言うのだろう。