みゆみゆの徒然日記

日本の伝統芸能から映画や本などの感想、
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『空飛ぶ広報室』 有川浩

2013年02月20日 | 本・マンガ
 昨年夏に発売されて、基本文庫待ちの私にしては珍しく表紙に惹かれてハードカバー版を買ったのに積読になっていました(暑くて読書する気にならなくて、そのままに・・・笑)直木賞候補にもなったり、春からドラマにもなるということで慌てて読みました。自衛隊に興味を持ってから、有川さんを読むようになりました。有川作品の自衛隊モノでは、自衛隊三部作といわれる『塩の街』『空の中』『海の底』や自衛官の恋愛を描いたベタ甘な作品『クジラの彼』『ラブコメ今昔』も読みました。三部作にも「ベタ甘要素」はあったので、今回もそんなのを想像していましたが、今までで一番甘くありませんでした。多少あるけれど、今までの作品に比べたら、ないに等しいです。

 不慮の交通事故でP免(パイロット罷免)になり、内定していたブルーインパルスのパイロットになることへの夢を絶たれる。そんな彼は新米広報官として、航空自衛隊航空幕僚監部広報室に勤務しているのが主人公の空井2尉です。そんな彼は、自衛隊を長期取材することになった自衛隊嫌いの女性テレビディレクターの担当になります。
 
 そんなキャラクター設定もあるので、この作品自体が「自衛隊の広報」小説となっていて、うまいな~と思いました。このブログを読んでくださっている方たちは私がアンチの立場なんて思われないでしょうし、マニアまではいかなくても自衛隊ファンなな今の私ですが・・・白状すると、過去に空を飛んでいる自衛隊装備品(陸自ヘリとかも)は全部空を飛ぶから「航空自衛隊」だと思っていたことがありました(笑)全く知らない人、自衛隊嫌いの人(は、そもそもこれを読むのか疑問ですが)に読んでほしい!と思いました。私の周りにも実際にリカみたいな人はいますし、リカはそんな人たちを代表するキャラクターでしょう。そんなリカがだんだんと自衛隊のことを勉強したり、理解を示していく様子は、こちらも読みながらホッとしますし、リカみたいな人たちが増えれば、「広報」な小説として成功でしょう!

 何をやっても色々叩かれがちな自衛隊の広報としての広報活動の裏が少しでもわかりました。(きっともっといろいろあるでしょうがね)アイドルがブルーインパルスに乗るって・・・キムタクが乗った時のかな?(たまたまリアルタイムで見ていたけど、平然と余裕の笑顔で5番機に乗っているキムタクはすごかった!)と想像してしまいました(笑)

 そして、東日本大震災で被災した松島基地のことを書き下ろしで描いた「あの日の松島」は、まるでノンフィクションを読んでいるような感じでした。空井もリカも出ているけれど。震災直後、松島基地の取材に対応していた松島の広報の方が、津波に流された救難ヘリを目の当たりにし「これ(救難ヘリ)が飛んでいれば・・・・たくさんの人たちを助けられたかと思うと・・・」とカメラの前なのに悔し泣きしているのを見て・・なんともいえない気持ちになりました。自分たちだって被災者なのに、被災地を助けるために被災地を復興するために行動している姿には、感謝の言葉しか出てきませんでした。(そういえば、津波で流されて格納庫に突っ込んでいるF-2をブルーインパルスと言っていたニュースがあったなぁ・・・・テレビの前でツッコミを)
 「自衛官が冷たい缶飯を食べていることばかりクローズアップしないでほしい、自衛隊がいたら被災者は温かいごはんをたべっれるということ(被災者に温かいごはんを届けることができる能力がある)を伝えて欲しい」と空井がリカにお願いするのが最後のページにありますが、これは自衛官たちの本音なんだろうなと思います。そして、リカやオッサンが入った残念な美人の柚木の仕事のことはもちろん、生理問題(『海の底』でもあったね~)をさらっと書けるあたり、やはり有川さんは女性だと思いました。(私もあの震災以来、常に買いだめはしています)

 空には不思議な生物もいないし、でかいザリガニも出てこない、ベタ甘もないですが、だからこそ、私は有川さんの自衛隊作品の中では一番好きな作品となりました。いろいろな人はいますが、私も賛美はしなくても、自衛隊さんたちには感謝したいですし、これからも応援しようと思います。

 さてさてドラマはどうなるのかな?ブルーインパルスなんかも取り上げるのかな?なんて期待もしてしまいますが、この小説同様に実直に描いて欲しいですね。