しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

「奥の細道」閑かさや岩にしみ入る蝉の声  (山形県山寺)

2024年08月19日 | 旅と文学(奥の細道)

40年ほど前に、会社の慰安旅行で初めて、知らないまま「山寺」に行った。
なんで、わざわざ、日本全国のどこにでもある”山の寺”に行くのか?
それが不思議だった。

行ってみると、
これはすごいお寺だ。
山をくるぐる石段を上って登山のよう、
しかも参道の左右、上下、その雰囲気や眺めがいい。
芭蕉が有名な句を、ここで詠んだのもうなずける。
自分も一句詠もうと思った。(思っただけ)

芭蕉の時代も、現代も、立石寺(山寺)は見る価値がある、
特に”眺め”と”岩”がいい。健康にもいい。

・・

 

・・・

旅の場所・山形県山形市大字山寺「立石寺」  
旅の日・2019年6月29日          
書名・奥の細道
原作者・松尾芭蕉

 

・・・

「奥の細道の旅」 講談社 1989年発行

山形領に立石寺と云ふ山寺あり。
慈覚大師の開基にして、殊に清閑の地也。
一見すべきよし、人々のすすむるに依りて、尾花沢よりとつて返し、
其の間七里ばかり也。
日いまだ暮れず。
梺の坊に宿かり置きて、山上の堂にのぼる。
岩に厳を重ねて山とし、松栢年旧り土石老いて苔滑かに、
岩上の院院扉を閉ぢて物の音きこえず。
岸をめぐり岩を這ひて仏閣を拝し、佳景寂寞として心すみ行くのみおぼゆ。

閑さや岩にしみ入る蝉の声

・・・

・・・


「わたしの芭蕉」 加賀乙彦 講談社 2020年発行

しづかさや岩にしみ入蝉の声

これは名句としてよく知られていて、出てくる場所はどこか、鳴いている蟬はにいにい蝉だとか、
蝉しぐれのように鳴いているのか、一匹だけが鳴いているのか、とかいろいろな意見がある。
そして多くの人々の研究によって大体の定説ができている。
静かさを表現するのに閑という一文字で言い放ち、それを岩に対比しているのだから、
蝉しぐれのような騒がしい鳴き方ではない。
山形市山寺にある宝珠山立石寺がそうだというのだが、その寺の名前と芭蕉の句は不思議に響き合っている。
人の行かない、打ち棄てられたような山寺で蝉の声だけが己を主張しているが、
それも山寺の静寂のなかで、むしろ無力でさびしいと芭蕉は感じた。
弟子の曾良が書きとどめた最初の一句はつぎのようだった。
山寺や岩にしみつく蝉の声

・・・

・・・

「日本詩人選17 松尾芭蕉」 尾形仂  筑摩書房 昭和46年発行


閑かさや岩にしみ入る蝉の声

旅中、山寺での吟。
『おくのほそ道』きっての絶唱の一つに数えられる。
山寺と通称される宝珠山立石寺は、東北きっての天台宗の名刹で、慈覚大師入寂の地として知られるが、
当時、寺領千四百二十石、約百万坪に及ぶ境内は全山凝灰岩より成り、山門より 奥の院まで、おおむね石階をもって畳まれている。
芭蕉がここを訪れたのは、元禄二年五月二十七日(陽暦七月十三日)のことで、
その際、曽良の『俳諧書留』に「立石寺」と前書して見える、
山寺や石にしみつく蝉の声

 

・・・

 

 

(JR仙山線「山寺駅」の駅前)

・・・・


「山寺」は山形県の、ひなびた山の中にあるお寺ではなくて、
県都・山形市にあり、宮城県仙台市かも交通便利な場所に位置している。

 

・・・

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする