ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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フジ予習:ウィルコ

2011-07-25 20:54:08 | フジロック
WILCO / WILCO (THE ALBUM)

フジ予習企画も佳境に入ってきました。第8弾はウィルコです!

オルタナ・カントリーの先駆的バンドと賞されるアンクル・テュペロを前身に94年に結成されたイリノイ州シカゴのバンド。レコード会社などからの圧力に屈せず、自らの信念を貫き通すことで、ウィルコ以外の何物でもないアイデンティティーをものにした、現在最も信頼出来るロックバンドと言えるでしょう。

このウィルコを今年のフジの目玉に据えてる方って結構多いんじゃないですかね。まさに待望の出演ですよね。しかも最終日のホワイトのトリですからね、当初はオレンジのトリを務めるバディ・ガイと被るのではと危惧していましたが、タイムテーブルが発表されると、これが意外と被らない! バディ・ガイを観た後、ホワイトへ移動しても、かなりがっつりウィルコを堪能出来そうです。素晴らしいですね!濃密な3日間をウィルコで締めるという極上のエンディングですよ!

彼等の最新作、といっても09年の作品ですが「WILCO (THE ALBUM)」(写真)がまた傑作なんです! バンド名を冠したタイトルから、彼等の自信の程が伺えますよね。これまでもウィルコの作品は名作揃いですが、どこか難関なニュアンスが含まれている印象でした。ですがいよいよ通算7枚目にして、今作はウィルコが自ら堂々とウィルコと名乗る王道を感じさせてくれる作品に仕上がっています。

アルバム・タイトルに呼応するような1曲目「Wilco (The Song)」。“wilco wilco”と囁くように歌うサビも印象的ですが、何よりも縦割りのざっくりとした大きなグルーヴ感が最高。まさにウィルコの辿り着いたスケール感を遺憾なく発揮していますね! オルタナ・カントリーの旗手でありながらそれを過去へ葬り去ったウィルコだからこそのうねりを持ったリズム。この作品のウィルコが凄いのは、こういった飾らないグルーヴが全体を大きな波のようにうねらせているところ。ウィルコの懐の深さというか、バンドとしての大きさを感じさせられますよね。

それはもちろん楽曲の良さがあってのことであり、やはりジェフ・トゥイーディのソング・ライターとしての魅力も特筆もの。「One Wing」や「I'll Fight」辺りの感傷的なメロディ・ラインはジェフならではですし、ドリーミーに揺れるような「Deeper Down」も秀逸。そしてスロー・ナンバー「Country Disappeared」なんかも相当滲みる。こういう曲を歌うソウルフルなジェフの歌唱も大好きですね!この曲は苗場で聴けたらうれしいな~!

さらに天晴な程ジョージ・ハリスン的な「You Never Know」も良いですね。ウィルコ流のポップ・センスが光る「Sunny Feeling」なんかも文句無しに格好良い! ここではスライド・ギターと鍵盤が良い仕事してます。こういう曲はライヴで盛り上がるでしょうね! 終盤のネルス・クラインのギター・ソロにも痺れます!ネルス・クラインと言えば、「Bull Black Nova」の終盤で、まるでノイズを編み上げて行くかのようなスペクタルなプレイは凄まじい格好良さ!これなんかもライヴで聴かされたら完全にトリップしちゃいますね。やはり現在のウィルコにおけるネルス・クラインの存在は大きいですよね。

そして「Bull Black Nova」の混沌としたエンディングの後、暖かくも爽やかなフォーク・ソング「You And I」が始まる。この展開も秀逸ですね。ここでジェフと素敵なデュエットを演じているのはカナダの才女ファイスト。この曲も良い曲なんですけど、ライヴでは無理ですかね~。ラストを締める「Everlasting Everything」も感動的。

このアルバムを聴いてると、やはりバンドとしての充実振りを感じさせられずにはいられませんね。まさに紆余曲折を経て辿り着いた、ある種の境地でしょう。現在のウィルコを野外フェスで観れるのは本当に幸せなことかもしれません!





UNKLE TUPELO / 89/93-AN ANTHOLOGY
ジェフ・トゥイーディが参加していたアンクル・テュペロのアンソロジー盤。カントリー・ロックです。このアンクル・テュペロからフェイ・ファーラーが脱退しサン・ヴォルトを結成、残されたジェフがウィルコを立ち上げたのでした。元々、フェイ・ファーラーとジェフはパンク・バンドを組んでいたそうで、パンクからカントリーへ接近してアンクル・テュペロが生まれ、それが現在のウィルコに繋がっていると言うのはなかなか興味深い話ですね。



WILCO / A.M.
記念すべきウィルコのデビュー作。スカッとしたカントリー・ロックを聴かせてくれます。どっちが好きかと聴かれれば、もちろん現在のウィルコの方が好きですか、こちらには現在のウィルコにはない心地良さがあるのも事実。でも最新作「WILCO (THE ALBUM)」には、この初期の頃への揺り戻しも少しあるように感じます。



BILLY BRAGG & WILCO / MERMAID AVENUE
ビリー・ブラッグと共にウィルコが伝説のフォーク・シンガー、ウディ・ガスリーの未発表詩に曲を付けた作品。これは名盤なんですよね~。ウィルコがこういう作品に手を染めている事実も特筆ものですが、英国の個性派ビリー・ブラッグとの共同作業と言うのがまた深いですよね。



WILCO / YANKEE HOTEL FOXTROT
ジム・オルークを招いて製作されたインディー・ロック史に残る記念碑的傑作。もともとオルタナ・カントリーの枠に収まるようなバンドではなかったウィルコが、ジムの助力を得て自我を突き詰めた作品。音響的な広がりと内省的な深みがいびつに絡み合うような、ある種、混沌としながらも、優しく暖かい音空間が素晴らしい。もはやカントリー・ロックではないポスト・ロック。ですがシングル・ヒットを欲するレコード会社に契約を切られ、ホームページでの無料ダウンロードに踏み切った後に、ノンサッチへ移籍し無事発売されたという、そういう経緯も格好良い! と言ってしまったらいけないか…。



WILCO / SKY BLUE SKY
これも名盤ですよ!なんだかんだで個人的にはこのアルバムが一番好きかも。ウィルコにはビートルズ的なポップ・センスの影響も感じるんですが、このアルバムは特に「ホワイト・アルバム」期のソウルっぽい感性に通じる雰囲気があるんですよね~。シンガーとしてのジェフが最もその感受性豊かな歌心を開花させた作品ともいえるでしょう。「Hate It Here」は名曲中の名曲。




インディー・ロックと言うものが、一体何を指す言葉なのかいまいちよく分かりませんが、“独立”や“自立”を意味するのであれば、このウィルコほどインディー・ロックと言う言葉が良く似合うバンドはないでしょうし、ウィルコの存在は、インディー・ロックの勝利を意味すると言っても過言ではないかもしれませんね。何せ彼等ほど辛辣に自身の道を歩んできたバンドはないでしょうし、その道程からファンの信頼を勝ち取り、現在では米国を代表するロックバンドとなっている訳ですから。そしてもはやインディー・ロックと言う言葉も彼等には小さすぎますね。



Wilco - Wilco The Song - Lowlands 2009



"Bull black nova" Wilco (Primavera Sound 2010)





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