徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

2006-03-19 00:47:03 | 素日記
ライターの八本正幸さんから、高輪台のギャラリーオキュルスで22日から28日まで開かれる『ヘンリー・ミラー展 ―不埒で上等な遊び―』の小冊子が届く。小冊子には八本さんも短文を寄稿されている(「鏡の国のヘンリー・ミラー」)。
ギャラリーオキュルスは、10年ほど前に「探偵小説の世界」というようなテーマで取材させていただいた、世界最高齢の探偵作家であった渡辺啓助先生(残念ながら2002年に101歳で永眠)の娘さんが経営されている画廊。

取材でお会いした敬助先生は鴉の絵ばかり書いていた。

<私のカラス好きはみんなに知られている。私自身の持っていないもの、あのアッケラカンとして物に動じない生活態に憧れて、しかも生物中一番頭がよく、長生きで、イヤ、何よりも黒いということが気に入った――それで私は、カラスと同類であることを自認したのである。>(渡辺敬助『鴉白書』東京創元社より)

ニール・ヤングの歌う、『マイ・マイ、ヘイ・ヘイ(アウト・オブ・ザ・ブルー)』~『ヘイ・ヘイ、マイ・マイ(イントゥ・ザ・ブラック)』(ニール・ヤング&クレイジー・ホース『ラスト・ネヴァー・スリープス』)というのは、こういうことだと、オレは思う。まあ当時のニール・ヤングは「錆びてしまうくらいなら燃え尽きたい」って歌っていたけれども。
そして敬助先生は同書で東北の詩人、村上昭夫の詩を引用する。これも好きな詩。

<あの声は寂寥(せきりょう)を食べて生きてきたのだ
 誰でも一度は鴉だったことがあるのだ
 人が死ぬと鴉が一羽何処かで死ぬのだと隣の部屋の老人が言った
 あたかも七十年生きてきたその秘奥を始めてうちあけるように>
(村上昭夫『動物哀歌』「鴉」より)

八本さんから小冊子を送って頂いていろいろを思い出した。
ヘンリー・ミラーと鴉は関係ないかもしれないけれど。

『ヘンリー・ミラー展 ―不埒で上等な遊び―』
Ⅰ期 3月22日(水)~28日(火)
Ⅱ期 5月8日(月)~15日(月)
●午前11時~午後6時30分(会期中無休)
●会場/ギャラリー オキュルス(東京都港区高輪3-10-7-1F)