徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

最後の鴉/鴉の肖像~渡辺啓助の世界

2008-05-06 04:41:15 | Documentary
八本正幸さんから“最後の探偵作家”渡辺啓助翁の晩年のインタビューを中心に構成したドキュメンタリーDVD「鴉の肖像~渡辺啓助の世界」が届く。企画・制作・撮影・編集・脚本・監督、すべて八本さんである。
啓助先生とは一度だけ、中洲通信1995年9月号の取材でご自宅へ伺ってお会いした。そのときの記憶がよみがえって来るような内容だ。
啓助先生は自らを<時間外居住者>、そして<鴉>と名乗る。

以前も引いたけれども、もう一度引用しておこう。

<私のカラス好きはみんなに知られている。私自身の持っていないもの、あのアッケラカンとして物に動じない生活態に憧れて、しかも生物中一番頭がよく、長生きで、イヤ、何よりも黒いということが気に入った――それで私は、カラスと同類であることを自認したのである。>(渡辺敬助『鴉白書』東京創元社より)

<あの声は寂寥(せきりょう)を食べて生きてきたのだ
 誰でも一度は鴉だったことがあるのだ
 人が死ぬと鴉が一羽何処かで死ぬのだと隣の部屋の老人が言った
 あたかも七十年生きてきたその秘奥を始めてうちあけるように>
(村上昭夫『動物哀歌』「鴉」より)

最近なぜか、その取材のときに啓助先生からいただいた鴉の絵を部屋に飾っている。これも何かの縁だろう。
真夜中だってのに、今晩はやけに外で鴉が啼いている。

「黒い太陽」ではないけれども、そろそろ<鴉のように黒く>生きてみたいもんですな。