健太「ナビスコで結構ベストに近い布陣でずっと戦ってきたというのも(中略)今シーズンは予選を突破するんだという強い意志でずっとここまで戦わしてきたんで、まあそういうツケは当然出てるという風に思ってますし、まあここ2年ぐらい予選通過できなかった悔しさというのも選手当然持ってたと思いますんで、まあその辺の強い想いが結果には出てるんじゃないかなという風には思ってます」(
Sの極み 5月25日付)
日曜日。日本平でナビスコカップグループB第3節
「清水対磐田」戦。
強い風で雨雲も通過し、心配されていた雨もすっかり上がり、富士山の中腹も見え隠れするような気持ちのいい天候になった。ただゲームが始まっても、やはり風は強い。
その風で最初の得点は生まれた。
DFを背負いながら一樹が片手を大きく挙げる。和道はそこに目掛けてゆるいフィードを送る。追い風に乗ったボールはGKと一樹の間で落下し、一樹はワンタッチでGKを交わすとそのままボールを押し込む。前半14分という理想的な時間帯での先制だったが、トゥーロン国際に出場しているアオ、岡ちゃん、ホンタク、海人の五輪組に加え、テル、イチが怪我で離脱し、かなりフレッシュなメンバーになっていたため、動きの硬さが見える。特に久々のスタメンになった真希と純平の動きにははらはらした。純平などは前日のコメントでかなりイケイケな感じだった(
Sの極み 5月23日付)のにバランスを気にするあまり、消極性が目立って見えた。
前半終了間際には同点に追いつかれ、さすがに健太から檄が飛ばされた模様。
淳吾「後半の頭から、監督を黙らせるようなプレーをしようと思っていた」(
スポーツナビ 5月25日付)
後半はチームリーダー淳吾の積極的なプレーから開始早々にPKをゲット。続けざまに西澤の“らしい”ボレーを叩き込み(スタンドで無意味に野次を飛ばすアンチ西澤を黙らせたのは喜ばしい限り)、完全に主導権を握る。
そしてこの日一番の盛り上がりを見せたのが、大前元紀の投入だ。その数分前からゴール裏、そしてメイン、バックと大きなざわつきが伝わってきた。どんだけ新卒に期待してんだよ(そこまでウチの選手層は薄くないよ)と思わなくもないのだけれども、まあここのところのチームの煮詰まり感、閉塞感を考えればその気持ちもわかる。完全にゲームの勝敗は決してしまったけれども、ついに、久々に清水に加入した高校サッカーの大スター、大前元紀投入。
元紀「とくに何も言われていなかったけど、途中から入った選手はしっかりボールを追ったりしないといけないと思っていたので」(
J's GOAL 5月25日付)。
アウレリオ、おまけにこれまでまったく出場の機会のなかったマルコス・パウロまで投入され、ピッチ上は一気にサテライトのような状況になる。前のゲームに続いてアウレリオは可能性を感じる動きを見せていたが、パウロは一体どうなのか。短い時間で評価はできないけれども、スピード、運動量で健太が不満(不安)を抱くのも仕方がないようにも見えた。
終了前、ゴンに
ナビスコカップ最年長ゴールを叩き込まれてしまったところはまだまだ甘いが、ほぼ、危なげなく勝利。まあこの辺り、「ボロボロの磐田DF相手に点を取っても勝利に価値はない」という見方もあるかもしれないけれども、それは裏を返せば「お互いが完全な状態での対戦でなければ価値がない」とも言えるわけだ。しかしそんな短絡的な評価は、正直言ってJリーグの下らないベストメンバー規定にも通じるアホらしい見方である。まずは、きっちり勝てたことを評価すべきなのだ。
後半20分あたりに磐田DFのGKへのバックパスを一樹が追い、さらにエダがGKからDFへのパスを追い、淳吾が奪い取るという絵に描いたような、理想的な「前からのディフェンス」を見せた場面があった。結局ボールはタッチに流れてしまったが、スタンドからは大きな拍手が起こった。こういう積極的なプレーができていれば、そのゲームの価値は相手の出来云々で左右されるものではないと思う。大事なことは、そのプレーを持続していけるか、ということなのだ。
次の対戦は、意外にも今季はコンスタントに結果を出しているFC東京戦。引き分け以上でグループリーグの勝ち上がりはほぼ確定する。この日の後半のような積極性を見せられれば、どのメンバーが出場しようが、結果はついてくるはずだ。
最後に一言。
「Sの極み」のヴェルディ戦の戦評(2008-05-24 J1・13節 清水 1対4 ヴェルディ)で大場氏は、<三保で仲良しクラブのチームが、試合のときだけ「戦う集団」になれるとは到底思えない。>と書いている。<戦う集団>の反語が<仲良しクラブ>ならば、お題目だけの<戦う集団>を目指すよりも、もはや清水はJリーグ最高の<仲良しクラブ>を目指すしかないではないのではないか。このゲームでも淳吾が中心になってベンチ組、ゴール裏を盛り上げようとする姿を見ると、それも決して悪くはないと思えなくもないのだ。もちろん健太体制以前に清水というクラブを凋落させたのも<仲良しクラブ化>だったのは事実だろう。それを健太は一度壊し、そして建て直した。そこに何の違いがあるのか。これには、健太のスタンスやクラブの性格、静岡の土地柄も含めた構造的な問題を孕んでいると思うのだけれども、これはいずれ改めて。
ひとまずこれで予選突破は見えてきた。今季何度目かの「きっかけ」をしっかり掴んで欲しいところだ。泥臭くとも何らかの結果を出し続ければ、ここのところ見失いそうだった道筋も見えてくるだろうと思う。