徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

大型本の愛し方/「ジャパン・アヴァンギャルド--アングラ演劇傑作ポスター100」

2008-05-22 23:54:51 | Books
現在刊行されている紙製の出版物は、ペーパー・メディアではあっても、書物であるとはいい切れない。繰り返すが、書物は容器(うつわ)であり、容器である以上、そこに予約された役割は<内容を盛ること>のほかに考えられない。簡単にいえば、書物が内容を輝かせるのである。(中略)もしも名書を定義するのに、美的観点だけでなく、容器としての完成度を加味するとすれば、第一に名書は読む者を呑み込む吸引力を持たねばならない。(中略)読者を頭から食いつくしてしまうほど強力な容器。とすれば、書物はやはり、人間を食えるだけの大きさを、とりあえず備えていなければならない。(『本の愛し方 人生の癒し方 ブックライフ自由自在』荒俣宏/集英社文庫

そこで荒俣さんは18世紀、19世紀の<名書量産時代>の“サイズ”として半畳ほどの書物を例に挙げるのだが、さすがにそんなものを個人で所有するのは難しい。そこでオレは、荒俣さん曰く<家畜化された20世紀の書物>を手にするしかないのだが、今日購入したのが『ジャパン・アヴァンギャルド--アングラ演劇傑作ポスター100』。半畳書物とは比較にならないが、一応A3なので21世紀的にはこれも立派な大型本。60年代から70年代の小劇場運動を、文字通り飾った公演ポスターが100枚収録されている。日本の演劇ポスターの革命時代の名作揃い。その意味ではもっと重厚な装丁でもよかったかもという感じもするもだけれども、これは立派に<内容を盛っている>でしょう。このポスター群の当事者である唐十郎、横尾忠則をはじめとして、まだまだ現役の劇作家、アーティストが多いのも凄いことだけれども、世界(世間)に喧嘩売ってる感じがいい。