東京大学/国立天文台の王 涛(ワン・タオ)特任研究員らの研究チームは、可視光線と近赤外線で観測するハッブル宇宙望遠鏡の画像には写っていないが、それよりも少し波長が長い赤外線で観測するスピッツァー宇宙望遠鏡の画像には写っている天体63個を観測対象として選び出し、そして、アルマ望遠鏡を用いてそれらを観測し、39個の天体からサブミリ波を検出した。
解析の結果、39個の天体はいずれも、110億年以上前の宇宙に存在する星形成中の巨大銀河であることが分かった。
典型的な宇宙膨張に従った銀河進化に関する多くの理論では、初期の宇宙に星形成中の巨大銀河がこれほど多く存在することは想定されておらず、この観測結果は宇宙や銀河の進化の理解に大きな謎を投げかけるもの。
銀河の質量は、太陽の数百億倍から1千億倍と、天の川銀河と同等かやや小さい程度だが、昔の宇宙では例外的に大きいもの。
星を生み出すスピードも天の川銀河の100倍以上と推定されている。やがてこれらの銀河は、巨大楕円銀河へと進化していくものと考えられる。
これまでの宇宙膨張モデルに基づく理論的予測では、このように星を活発に生み出す巨大な銀河は、宇宙の初期には存在できないと考えられてきた。今回の観測によって、銀河進化の理解にはまだまだ未解明な点が多いことが浮き彫りになった。
アルマ望遠鏡や近未来の新しい観測機器でのさらなる観測研究が待望される。