多島斗志之の『黒百合』を読んだ。
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舞台は昭和27年夏の六甲山。父の旧知の浅木家の別荘に招かれた14歳の寺本進は、同い年の浅木一彦とともに夏休みを過ごす。二人は知り合った同い年の倉沢香とともに、六甲の別荘地で三人で夏休みを過ごすのだが、夏休みの終盤に香の叔父が何者かに殺されて・・・。
昭和10年の出会いと、昭和15年から20年の香の叔母の日登美の恋物語が並行して描かれ、最終盤に収束していくのだが、若者三人を描いた青春小説とミステリー的な要素が中途半端にまじりあってなんだかなぁ。著者の意図がくみ取れなくて正直残念な印象、おはなしの中心に殺人事件がないので、真相と著者のミスリードがわかっても「ふーん」ていう感想しかない。以下ネタバレなので未読の方は読まないように。
進と一彦の父親がベルリンで出会った相田真千子が日本に戻って宝急電車の運転士になり、戦争の混乱に紛れて日登美の兄を殺し、さらに昭和27年現在で日登美の次兄を殺したのが真相。著者によるミスリードは、真千子を日登美の亭主と勘違いさせること。両者とも足が悪い点と、ひどいなぁと思うのは真千子が人妻と情事をするという描写。そりゃ真千子が日登美の恋する男性だと思うでしょ。最後まで一彦の父の再婚相手だというのはかたられなくて、ホントになんだかなぁだ。
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