ミセスローゼンの上人坂日記

二声の揃ふ鴉や夜の秋


理さんがコルニドレイを弾いた夜。

富士吉田にて、刑部邸ホームコンサートを聞く。ニックのお弟子の和田理さんが二部に出演していた。プログラムが素晴らしかった。
バッハ無伴奏組曲一番
コルニドレイ
アダージオアンドロンド
(アンコール)シチリアーノ
理さんは、ニックの即ちGP先生のレパートリーを一つ一つ習っている。バッハ一番プレリュードの弓使い、指使いはまさに先生と同じ、先生のようなグットーンがいくつもあり、息もビブラートの場所も、顔の向き方も先生と同じ。コルニドレイは特に、チェロの力を借りねば歌えない曲。チェロ7に、チェリスト3だ。そこをわかって弾いていることに感動した。
私が言うと偉そうだが、欲を言うと、GP先生のゆるやかで深くて、寛大な(英語で言うとgenerous)ビブラートは、ぜひマスターして貰いたい。その代わり、ダウンボウスタカートやピアニシモのビブラートはかなりいけてた。特に、ロンドは完成している。一番よかったのは、一音たりとも気を抜かなかったことだ。100%の集中力が彼の体を包んで見えた。よしよし。
100%を超え、全力を出し切って、尚激しく求めると、何かわからぬが、自分以外の力が彼に宿る。神が降りる、と昔の人は言った。先日、俳句対局を見てた時も、それらしい雰囲気があったよ。
一番継いで欲しいものは、このような自分を超える力だ。ニックはそれを求め、一音一音生死をかけて真剣勝負しているから汗まみれになるし、それでもうまくいかない自分との戦いのストレスで、心臓にも負担がかかる。ボクサーやダンサーと寸分変わらない。だから体力作りをしなければならない。
といって、ボクシングとバレエを見に行き、スキーに行きまくるのだ。
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