昨夜放送がはじまったテレビドラマ『探偵・由利麟太郎』を観ました。
横溝正史の由利先生シリーズに、主演・吉川晃司……両者とも、過去にこのブログで取り上げてきました。これは観ないわけにはいくまいということで、ひさびさにテレビドラマをリアルタイムで観た次第です。
以前書いたように、由利先生シリーズは戦前を舞台としていますが、今回のドラマは現代劇に翻案されています。せっかくなら戦前を舞台にしてほしかったというのが正直なところですが、まあ、いろいろと難しいところもあったんでしょう。
今回の「花髑髏」のエピソードは、由利先生に挑戦状が届くところからはじまる物語。
原作を未読なので、どれだけオリジナルに忠実なのかはわかりませんが……いかにも横溝らしい、おどろおどろしい人間の情念が描かれていたと思います。
冒頭、運送された冷凍庫のなかからナイフを突き立てられた人間が出てくるというのは、あの古典ミステリー『樽』をほうふつとさせます。そういうミステリーの様式美を踏まえつつ、しかしその人物が死んではいないというひねりがくわえてあり、それが事件の核心にかかわってきます。これも、いかにも横溝らしい趣向といえるでしょう。
最近このブログでは3DCGをやってますが、今回は、blender で「花髑髏」をイメージした動画をつくってみました。
花髑髏
最後に、リアリティという点について一言。
もしかすると、今回のドラマを観てリアリティという点に文句をつける人がいるかもしれません。
このドラマには、戦前ならともかく現代では成立しないだろうと思える部分も多々あります。そもそも民間人がこんなにナチュラルに警察の捜査活動にくわわっているのはおかしいともいえるでしょう。しかし、そんなことはどうでもいいんです。まあ、私自身もよくそういうことをいわれるので、それに対する反論でもあるんですが……ミステリーというのはある種のファンタジーであって、そこをリアリティという尺度ではかるべきではないだろうと。民間人の探偵なんかが刑事と一緒に事件現場に入ってあれこれ意見を述べるというのは、ファンタジーの世界で魔法使いが魔法を使うぐらいに当たり前のことなのです。
こと横溝御大の場合、彼一流の怪奇ワールドを前にしてはリアリズム云々などという批判は意味をなしません。ただ、現実のほうが横溝の幻想怪奇にひれ伏すのみです。