ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

ビートルズ記念日とBLM

2020-06-29 16:24:25 | 時事


今日6月29日は、ビートルズ記念日なんだそうです。

1966年のこの日にビートルズが来日を果たしたということで……2月4日に“ビートルズの日”というのがあるんですが、それとは別に記念日になってます。

ビートルズやそのメンバーについては、このブログでこれまで何度も書いてきたので、今さら記念日だからどうこうということもないんですが……今回は、ビートルズの Blackbird という歌についてちょっと書きたいと思います。

勘のいい方は、そのタイトルだけで気づいたかもしれません。
そう、昨今アメリカで持ち上がっている人種差別問題についての話です。

Blackbird はビートルズ10枚目のアルバム The Beatles (通称「ホワイトアルバム」)に収録されています。
blackbirdとはクロウタドリという鳥の名前ですが、black とついているところから、当時盛り上がりをみせていた公民権運動について歌った歌という解釈がなされます。
その公式動画があったので、貼り付けておきましょう。


Blackbird (Remastered 2009)

  真夜中に歌うクロウタドリ
  傷ついた翼で 飛ぶことを学び
  君はずっと
  このめざめの瞬間をただ待っていたんだ

  真夜中に歌うクロウタドリ
  やせ細った目で 見ることを学び
  君はずっと
  この自由の瞬間をただ待っていたんだ

  クロウタドリよ、飛べ
  暗い夜を 光にむかって


Blackbird は、実質的にポール・マッカートニーの歌です。ポールが作り、ポールがひとりで演奏し歌っています。
彼は、以前このブログで紹介したスティーヴィー・ワンダーとのコラボ曲 Ebony and Ivory からもわかるとおり、人種差別問題にも深い関心を寄せています。プロデューサーのジョージ・マーティンに政治的な歌を歌わないようにいわれていたことから、ビートルズは直接そういう歌は歌っていませんが、彼らは社会に対する問題意識を持っていました。そうした背景を考えれば、Blackbird は、あきらかに黒人の権利についての歌だとわかるでしょう。

60年代アメリカの公民権運動は、一定の成功をおさめました。
しかし、それからおよそ半世紀たった今、ジョージ・フロイド殺害事件によって、人種差別の問題がアメリカに深く根付いているということが示されています。
先日は、トランプ大統領が白人至上主義者の動画をツイートして問題になったりもしました(その後、ツイートは削除)。差別というのは、そう簡単には根絶できない問題なのでしょう。
ただ、かなり深い部分での意識の変化が起きていることもうかがえます。
先日紹介した Lady Aの件もそうでしょう。その後、似たような話として、ディクシー・チックスが名前を「チックス」に変えるというニュースもありました。Lady Antebellum が antebellumという単語を問題視したのと同様に、“ディクシー”という言葉に奴隷制を認めていたかつての南部を美化する響きがあるということで……こうした流れをみていると、意識下の部分まで変えていこうという動きが進んでいるようです。
これには、反発もあるでしょう。ディクシーがだめだということになったら、ディクシーランド・ジャズや、今でも広く親しまれているDixie's Land や、エルヴィスがそれをとりあげた「アメリカの祈り」なんかはどうなるんだという話もなってきます。
しかしそれは、“自由の瞬間”のための胎動なんでしょう。その胎動をこえて、人種差別問題が克服されることを願うばかりです。