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モダン・フォーク・フェローズ「朝焼けの中に」

2022-11-20 23:12:43 | 音楽批評


今回は音楽記事です。

ちょっと間が空きましたが……このカテゴリーでは日本のフォークソングについて書いています。
前回は、ザ・リガニーズという本邦フォーク草創期のグループについて書きました。その流れで、今回もその時代の代表的なグループの一つについて書こうと思います。

紹介するのは、モダン・フォーク・フェローズ。

先述のとおり、フォーク最初期に出てきたグループの一つです。

結成は1965年。
いわゆるカレッジフォークの文脈に位置づけられるバンドの一つで、以前紹介したブロードサイドフォーと似たような感じでしょう。

メンバーは何度か変更があったようですが、そのなかで、ベースとして景山民夫という人が在籍していたことがあります。
この景山さんは、後に作家となっています。しかも、ただ小説家というだけでなく、直木賞も受賞しているという大物。直木賞受賞作である『遠い海から来たCOO』は、アニメ映画化もされたので、実際読んだり見たりしたかどうかは別としてタイトルを聞いたことがあるという人は少なくないでしょう。あの原作者が、かつてフォークグループで活動していたということなのです。
ブロードサイドフォーでは、黒澤明の息子がボーカルをやってたなんてこともありましたが、このあたりの何でもあり感というのが、いかにもこの当時のフォークというふうに感じられます。

それは。まさに自由。

彼らの代表曲の一つ「朝焼けの中に」では、こう歌われます。

  朝焼けの中に若者はいる
  まぶしげな眉が輝くとき
  若者は誓う 今日の 今日の幸せ

  金色に輝く道を胸張って

  青空の中に若者はいる
  たくましい肩が輝くとき
  若者は叫ぶ 明日に 明日にむかって


この歌を聞いていると、まさに自由の空気が感じられます。
広大な平原を前にして立っているような、そんな自由です。
何もない平原だけれど、何もないからこそ、そこに新たな道を自分達が切り拓いていくことができる……それは、ブロードサイドフォーが歌った歯を食いしばって歩く若者たちの姿であり、フォーククルセダーズが歌った荒野をめざす青年の姿でしょう。

その後フォークが発展していくとそこに“しきたり”ができていきます。
何もない荒野も、人が通っていくうちにやがて道らしきものができていく。それはよくいえば洗練でしょうが、しきたりがアーティストを縛るようにもなっていきます。道がきれいに整備され、この決められた道を歩かなきゃいけないということになってくる。フォークたるものこうでなければならんという人たちが出てきて、自由が失われていくわけです。
そんなしきたりができあがってしまう前の、自由。
「朝焼けの中に」は、そういう60年代的自由の空気を封じ込めた名曲なのです。