今回も、音楽記事です。
1998年の映画GODZILLAで使われている音楽が豪華だという話をしてきましたが、エンドロールに並ぶ名前を見て、もう一つこれは捨て置けないというバンドがありました。
それは、Foo Fighters。
ということで、今回はフーファイターズについて書こうと思います。
たまたまですが、フーファイターズの名前は去年の暮れにアップした記事にも出てきていました。
ドラムのテイラー・ホーキンスが死去したという話……そこではさらりとしか触れませんでしたが、このバンドもまた90年代最強バンドの一つといっていいでしょう。
中心人物は、デイヴ・グロール。
いうまでもなく、グランジの伝説 Nirvana でドラムを叩いてた人です。
フーファイターズでは、ボーカル/ギター。ただ、ときにドラムに回ることもあり、その場合テイラー・ホーキンスがボーカルをつとめたりもしていました。
その例として、動画を一つ。
レッド・ツェッペリンの Rock and Roll のカバーです。
なんと、本家ツェッペリンからジミー・ペイジとジョン・ポール・ジョーンズがゲスト参加するという豪華なパフォーマンス。
Foo Fighters - Rock And Roll (Live At Wembley Stadium, 2008)
もう一曲、同じくペイジとジョンジーを迎えたツェッペリンのカバー Ramble on。
ここでは、デイヴ・グロールとテイラー・ホーキンスがポジションを交代しています。
Foo Fighters - Ramble On (Live At Wembley Stadium, 2008)
このメンツに囲まれて、物おじせずにボンゾの役回りをやってのけるのがテイラー・ホーキンスという人のすごいところです。
デイヴ・グロールは、かのニルヴァーナでドラムを叩いていたというだけあってドラムには非常にこだわりがあります。
過去フーファイターズに在籍していたドラマーには、デイヴのダメ出しを受けて脱退したという例もあり……そのデイヴのもとでこうしてポジションを交代するテイラー・ホーキンスの存在感はたいへんなものがあります。
そのテイラー・ホーキンスが死去したことは、バンドにとって大きな痛手でしょう。
バンドを今後どうするのかということはまだ未定のようですが、昨年テイラーへの追悼イベントが行なわれています。
そこで、デイヴ・グロールはThem Crooked Vultures のドラムとして登場しました。
Them Crooked Vultures - Goodbye Yellow Brick Road - Taylor Hawkins Tribute Concert (09/03/22)
このThem Crooked Vultures というのは、いわゆるスーパーバンド的なもので、ベースを弾いているのはジョン・ポール・ジョーンズ。このへんからつながりがあるわけです。
ちなみに、歌っているのはクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジのジョシュ・オム。
ここからは、デイヴ・グロールのほうに話を移しましょう。
デイヴ・グロールという人は、意外とメディアへの露出が多く、YouTubeなんかを観ているとあちこちに顔を出しています。
たとえば、BBCラジオで披露したAC/DCのカバー、Let There Be Rock。
Foo Fighters - Let There Be Rock (AC/DC cover) in the Live Lounge
ガンズ&ローゼズとの共演。
Foo Fighters & Guns N' Roses at Firenze Rocks 6.14.17
ガンズとはニルヴァーナ時代に 確執もありましたが、その後和解しています。
まあ、もともとデイヴ・グロールはちょっとこっちよりなところがあると私は思ってますが……
その方向性をさらに推し進めて、エアロスミスのスティーヴン・タイラーが加わったパフォーマンスもありました。
曲は、エアロの Walk This Way です。
Steven Tyler, Slash, Dave Grohl, & Train “Walk This Way” Live (2014)
これはハワード・スターン・ショーという音楽番組で、その司会者であるハワードの誕生日を祝うステージということだそうですが、デイヴ・グロールは、このハワード・スターン・ショーの常連になっているようです。
下は、同番組でマウンテンのMississippi Queen をカバーした動画。
Foo Fighters Cover “Mississippi Queen” Live on the Stern Show
マウンテンの中心人物であるレズリー・ウェストが死去した後に、追悼の意味合いをこめたパフォーマンスです。
レズリーの死は、彼のマネージャーからコンタクトがあり、電話番号を教えてもらって連絡しようとしていた矢先のことだったそうです。
マウンテンというのも、方向性としてはガンズに近いものがあるでしょう。
そして、それ以上に“アメリカンハードロックの祖”というところが重要であるようにも感じられます。
やや方向性に違いはあるものの、前回とりあげたレイジと同様、デイヴ・グロールという人もロックの王道を踏まえているのです。
やはりジミー・ペイジが出てきて、ジョンジーが出てきて……と、ロック史の重要人物がからんでくるのはそういうことでしょう。
ロック史の重要人物ということでいえば、きわめつけはこの人。
昨年デイヴは、ポール・マッカートニーと共演しています。
Paul McCartney - Band on the Run (feat. Dave Grohl) (Glastonbury 2022)
デイヴのほうも、ある種現代のロックをしょってたつというような気概を持っているように私には思えます。
たとえば、先に紹介したレッド・ツェッペリンの Rock and Roll。
あれは、サードアルバムでアコースティックの方向を打ち出してファンの戸惑いと批評家の酷評にさらされたツェッペリンが次作で発表した曲です。「ロックンロール」という、そのまますぎるタイトルの曲を作る気概と覚悟がそこにありました。
あるいは、AC/DCの Let There Be Rock。
これは、旧約聖書の天地創造になぞらえて「ロック、あれ」という歌です。この選曲にも、どこかロックンロールを代表するというような、そんな気負いがあるやに感じられます。デイヴ・グロールは、そうしてロックンロールを代表するだけの実績を持っているのです。
いつだかフーファイターズがアリス・クーパーと共演した動画を紹介しましたが、デイヴ・グロールがむかっているのはアリス・クーパーの立ち位置なのかもしれません。
ロックという音楽が次第にマジョリティでなくなりつつある時代に、その船のかじをとるキャプテンというか……
Foo Fighter とは、第二次大戦中に目撃された未確認飛行物体のことです。
どこかの国の秘密兵器なんじゃないかとも噂された、幻の戦闘機……デイヴ・グロールは、そんなロックンロールの最終兵器を操ろうとしているんじゃないでしょうか。そのあたりが、私にはキャプテン・ハーロックにも重なって見えます。ロックの魂が滅びつつある世界で、その魂を守って闘うという……
最後に、映画GODZILLAで使用されていた曲、A320に触れておきましょう。
A320とはエアバスの飛行機のことで、「飛行機が怖い」と歌われるなんだか情けない歌です。
重力がこの高さから俺を引きずり下ろすかもしれない
いつか墜落するとしたら どうすればいい
さよならをいうこともできないままさ
目を閉じて願おう 平穏な空の旅になることを
さまざまに解釈されうる歌詞ですが、フーファイターズ=ロックンロールの最終兵器という見方に立てば、また違った味わいも出てきます。
ロックが失われつつある地球で、果たして最終兵器フーファイターはどう戦い抜くのか――その航跡を、しかと見届けたいと思います。