今日6月29日は、「ビートルズ記念日」です。
ビートルズが初来日を果たした記念日ということで、毎年このブログではビートルズ関連記事を書いています。
2月4日に「ビートルズの日」というのが別にあるわけですが……今年はそこで、60年前、1964年にビートルズがリリースした2枚のアルバムのうち A Hard Day's Night について書きました。そこで今回は、もう一枚のほうBeatles for Sale について書こうと思います。
人気絶頂の中で、ヒットするべくしてヒットした作品……
しかしながら、この作品あたりから、ビートルズは少しずつ変化を見せ始めているようでもあります。
前作ではまだその片鱗しか見せていなかった要素が、おぼろげに形をとりはじめたというか……
それがもっとも端的に表れているのが、I'm a Loser。
ボブ・ディランの影響を受けたといわれる曲です。
中期以降のビートルズが内省的な側面をみせはじめる萌芽ともいえるでしょう。
I'm A Loser (Remastered 2009)
シングル曲にもなった Eight Days A Week。
The Beatles - Eight Days A Week
この動画では普通にはじまっていますが、レコード音源ではフェードインになっています。
フェードインというものがポップミュージックで使われたのはこれが最初ということで……そこに先進性や実験性といった部分をみてとれるかもしれません。
「パーティーはそのままに」。
ジョニー・キャッシュの長女ロザンヌ・キャッシュのカバーで。
I Don't Want To Spoil The Party
パーティーを台無しにしたくないから僕は出ていくよ……というこの歌は、たとえばレディオヘッドのCREEPなんかに通じるところがあるんじゃないでしょうか。そんなふうに見ると、ここにも内省的な側面がみえるといえます。
しかし、こうして新たな世代への変化を見せつつも、まだビートルズは古典期ロックンロールの世界に片足を置いています。
前作では全曲オリジナルでしたが、Beatles for Sale ではロックンロールレジェンドたちのカバーをいくつか収録しています。制作期間が短かったためにすべてをオリジナルにはできなかったということなんですが……次作以降は基本的にオリジナル曲のみになっていくことを考えると、これらのカバーは古典期ロックンロールへの別れの挨拶のようでもあります。
そのカバー曲のなかから、カール・パーキンスのカバー、Honey Don't。
この曲は、ビートルズのメンバー全員がソロでカバーしている唯一の曲だそうです。その中から、Beatles for Sale バージョンでリードボーカルをつとめたリンゴ・スターのライブバージョンを。カール・パーキンス本人も参加しています。
Honey Don't
最後にもう一つカバー曲、チャック・ベリーのカバーで、Rock and Roll Music。
Rock And Roll Music (Remastered 2009)
日本では独自にシングルカットされていて、日本におけるビートルズのシングルで最も売れたのはこの曲なんだそうです。
チャック・ベリーというレジェンドの、「ロックンロール・ミュージック」というそのものずばりなタイトルの曲、「ロックンロールじゃなきゃだめなんだ、僕と踊りたいならね」という歌詞……これはまさに、ロックンロールへのリスペクトと、自分たちがその最前線に立ったという自負を表明したものじゃないでしょうか。そしてこれ以降のビートルズは、その最前衛からロックンロール自体を新たな次元へ導いていくことになるのです。