前回は出版にいたるまでの経緯について書きましたが、今回から、『ホテル・カリフォルニアの殺人』の内容について紹介したいと思います。
タイトルからもわかるとおり、この作品は、イーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア」をモチーフにしています。
また、12の章からなっているのですが、その各章の章題もすべてイーグルスの曲名。目次をみると、イーグルスのベストアルバムといった感じになるようにしました。
作品の舞台は、アメリカ西部に広がるモハーベ砂漠。
この砂漠のただなかに建つ、超豪華ホテル「ホテル・カリフォルニア」に、日本人ミュージシャンのトミーこと富井仁が流れつくところから物語は始まります。
トミーと同行者のジミー・クロフォードは、モハーベ砂漠で道に迷い、彷徨の末、偶然このホテルにたどりついて、宿泊させてもらうことに。そしてそのホテルで密室殺人が……という筋立てです。本作に対する評としてよくいわれることですが、ミステリーの“古典”的な作風がイメージとしてあって、登場人物のせりふ回しなんかもそこを意識しています。
ちなみに、作中に出てくる「ホテル・カリフォルニア」は、もちろん架空のホテルです。
実際には、モハーベ砂漠にそんなホテルは存在しません(たぶん)。イーグルスのアルバム『ホテル・カリフォルニア』のジャケット写真は実在のホテルですが、これも「ホテル・カリフォルニア」ではありません。
ただし、「ホテル・カリフォルニア」を名乗るホテルは存在していて、名曲のモデルであるかのようにふるまっていたところ、今年になってイーグルス側から訴えられたというのは記憶に新しいところです。
それはともかく……
ここで、自己PR的なこともしておきたいと思います。
(本来なら自分で書くことじゃないんでしょうが、誰もいってくれないので、仕方なく自分でいいます)
本作『ホテル・カリフォルニアの殺人』の最大のアピールポイントは、音楽と絡めた謎解きです。
“ロック探偵”と銘打っているとおり、主人公のトミーは音楽の知識をもとにして謎を解いていきます。
音楽を謎解きに使うミステリーはこれまでにもあると思いますが、音楽を主軸に据えて展開し、重要な場面では逐一音楽を手がかりにするミステリーというのは、新しいといえば新しいといえるんじゃないかと自分では思っています。
もっとも、この点に関しては、「音楽に偏重しすぎ」、「音楽に興味がない人にはわからない」といった厳しいご意見をいただくことも少なくありません。
しかし私は、個性というのは、それによって忌避されることも込みのものだと考えています。
ある特徴を個性として前面に出せば、それを嫌う人もいるでしょう。でも、それを覚悟のうえで、これが自分のカラーだと思う服を身に着けるのが、表現ということだと思います。公の場に作品を発表するということは、批判や誹りを受けることも覚悟したうえで、自分で選んだシャツを着て、自分で選んだ靴を履いて、堂々と通りを歩くということではないでしょうか。
……とまあ、大げさなことを言いましたが、要は、そこは趣味の問題ということで、広い心で見てほしいということです。
もとより、この本を発表するということを決めた時から、強い批判を受けるであろうことは予想していました。サンドバッグになる覚悟は固めています。そうした批判はもちろん批判として受け止めますが、基本的には、こういう作風が好きだという人に届いてくれればいいなというのが私のスタンスです。
今はとにかく、少しでも多くの人にこの本を手に取って読んでもらいたいと思っています。
そして気に入っていただけてたら、これにまさる幸せはありません。