ロック探偵のMY GENERATION

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高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの

2021-07-18 23:51:07 | 日記


福岡市美術館で行われている高畑勲展にいってきました。

今日が最終日……なんとか滑り込んだ感じです。



高畑勲さんといえば、スタジオジブリで『火垂るの墓』、『おもひでぽろぽろ』などを手がけた監督。その業績を紹介する展示です。

宮崎駿さんと比べると、高畑さんは実験的なところがたぶんにみられる印象ですが、それは今回の展示でも如実に感じられました。
意外なところでは、『ドラえもん』のアニメ版を企画したのが高畑勲だったとか……そんな話も紹介されていましたが、やはり高畑さんの本質はその実験性にあったと思えます。
それがたとえば、ごく初期の作品である『太陽の王子ホルス』。これなんかは後に宮崎駿さんが集大成的大作として手がけた『もののけ姫』を先取りしているようにも感じられます。

その『ホルス』は、膨大な制作資金と制作時間をかけたにもかかわらず興行的には不振に終わり……こういったところも、「実験的なクリエイター」あるあるでしょう。
これは、東宝特撮における坂野義光さんに通じるところがあるかもしれません。
ただ『ゴジラ対ヘドラ』というカルト的作品で干されてしまった坂野さんの場合とちがって、高畑さんはその後もアニメ監督として活動をつづけました。
宮崎駿さんらとともに東映動画を去り、新たにAプロダクションへ。
しかし、そこでやろうとしていた『長靴下のピッピ』は原作者の許諾を得られず企画が頓挫。その後も、ブラッドベリが脚本を手がけた日米合作アニメ映画に携わりながら結局その作品を自らの手で完成させることはかなわず……と、煮え湯を飲まされることも多かったようです。

ただし、その日米合作アニメ(原作は『リトル・ニモ』という漫画。後に『NEMO/ニモ』として映画化)において高畑・宮崎コンビが出したアイディアの中には“王女ナウシカ”や“天空の城”などがあり、それらが後の宮崎駿作品につながっている側面があるようです。また、ブラッドベリが書いた脚本には、主人公が二人の別人格として登場してくるという構成があり、これが『火垂るの墓』や『おもひでぽろぽろ』に応用されているともいいます。

これこそが“実験性”ということの神髄です。

それ自体は表に出てこないけれど、後に出てくるブレイクスルーの揺籃として働くという……それが、高畑勲というアニメ監督の業績だったんじゃないでしょうか。




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