サイボーグ009が60周年を迎えました。
今日7月19日が「サイボーグ009の日」だというのはだいぶ前に一度書きましたが、今年は特別です。1964年の7月19日に『週刊少年キング』誌上で連載が始まってから、ちょうど60年。サイボーグ009が還暦を迎えたということになります。
そんな特別な記念日ということで、このブログで009について何か書こうかと思い……シリーズ中でもクライマックスといえる「地下帝国ヨミ編」を読んでみました。
これは、仮面ライダーでいうショッカーにあたる悪の組織「黒い幽霊団」(ブラックゴースト)と一応の決着をつけるエピソード。その最終話のラストシーンは見たような記憶がうっすらあるんですが、なにしろ009を読んでいたのは子供のころのことなので、あまりはっきりとは憶えていないのです。そこで、今回あらためて読んでみました。
で……読んでみたところ、これが実に面白い。
まず、バトル漫画として非常によくできています。メインはサイボーグ戦士とブラックゴーストの戦いなわけですが、地下帝国にはザッタンという種族がいて、このザッタンもからんだ三つ巴の戦いになります。三つの勢力が、ときに互いを利用したり裏切ったりしながら展開していくストーリーは、この手の王道バトル漫画の歴史においても比類ない面白さじゃないでしょうか。そしてその末に、いよいよブラックゴーストの首領と009の一騎打ち……ここはまさに、サイボーグ009シリーズのハイライトといえるでしょう。
ブラックゴーストは、いわゆる“死の商人”です。兵器産業で儲けるために世界各国で戦争を起こさせる工作を行っている組織。サイボーグ戦士たちは、もともとは彼らの手で改造された身でありながら、その手から逃れ、ブラックゴーストを壊滅させるために戦っているのです。
その最終決戦において、ブラックゴーストはサイボーグ戦士たちの戦いは徒労であると切って捨てます。
たとえ首領を叩いたとしても、“細胞”が残っている。そしてもっといえば、ブラックゴーストは人間の心から生まれたもの、人間の醜い欲望が作り上げた怪物なのだから、究極的には、ブラックゴーストを殲滅するには人間全部を殺さなければならない、というのです。
これに対して009はこう反論します。
おまえが細胞なら
ぼくも細胞なんだよ
なかまが…のこりをかたづけてくれる!
そして、その言葉を裏付けるかのように、最終決戦の場に仲間が駆け付けます。そして、あのラストシーンとなるわけです。たしかに、組織としてのブラックゴーストを壊滅させたとしても、人間の醜い欲望があるかぎり新たなブラックゴーストが出てくるかもしれない。しかしそれと同様に、たとえサイボーグ戦士たちが滅びたとしても、人間の善の心は消えないということでしょう。深い余韻を残すエンディングでした。
さて……009といえば、その後もリメイク作品がいくつも作られ続けており、今年は60周年ということで、新作の漫画作品が発表されたり、舞台公演などということもありました。
こうして60年経っても新作が発表されるというのは、やはり009が日本漫画史上に残る不朽の名作だからこそでしょう。