ロック探偵のMY GENERATION

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P!nk - Dear Mr. President

2020-04-12 15:52:09 | 音楽批評



安倍総理のツイートが炎上しているそうです。

星野源さんの提供したコラボ用素材で、家で過ごしましょうという内容をツイートしたところ、炎上した模様。犬とたわむれたり、本を読んだりしてくつろいでいる姿の映像になってますが、この状況でそんな余裕で生活できる人ばかりでもないというツッコミが多数入っています。外出自粛を要請されている週末とはいえ、生活のために働かなければならない人たちが多数いる。あるいは、仕事がなくなったことで生活の見通しが立たない人がいる。そのなかで、総理大臣は優雅に王侯暮らしか――まあ、特に深く考えずにやっちゃったんでしょうが、いま市井の人たちが置かれている状況からすれば、そういう批判が出るのは当然ともいえるでしょう。

たとえば、このブログで何度か名前が出てきた映画評論家の町山智浩さんは、次のようにリプしています。

 総理大臣さま、国民を自宅に篭らせるために総理がすべきことは、自分が自宅で優雅にくつろぐビデオを国民に見せることではなく、給付や補償で国民の生活を守り、安心して家にいられるようにすることではないですか?

じつに、もっともなことです。
この一連の動きをみていて、私は、P!NKのDear Mr. President という歌を思い出しました。

 

これはブッシュJr.大統領を批判する歌ですが、なんだか今の日本にもあてはまるような気がするのです。その歌詞を以下に紹介しましょう(※具体的にブッシュJr大統領について書いている部分を一部省略してます。今回の論旨にはあまり関係ないので)


  親愛なる大統領

  ちょっと私と話しましょう
  ただの二人の人間として
  あなたが私よりも偉いなんてことはないつもりで
  正直に話し合えるのなら、あなたに尋ねたいことがあるの

  路上のホームレスたちを眺めて、あなたは何を感じるの?
  夜、眠りにつく前にあなたはなにを祈るの?
  鏡をのぞきこんで何を感じる?
  誇りをもてるの?

  ほかのみんなが泣いているときにあなたはどんなふうに眠るの?
  さよならをいうこともできずに子どもと別れなければならない母親たちがいるときに
  あなたはどんな夢を見るの?
  どうやって胸を張って歩けるの?
  私の目をみられる?
  そして、なぜだか話すことができる?

  親愛なる大統領
  あなたはさびしい子どもだった?
  あなたはいま、さびしい子どもなの?
  置き去りにされる子どもはいないなんて
  どの口で言うの?
  私たちはばかじゃないし、盲目でもない
  みんな、あなたの作った監獄のなかで座っているのよ
  あなたが地獄への道を舗装しているそのあいだ

  つらい仕事の話をさせて
  小さな子供を抱えた最低賃金での労働
  爆弾で吹き飛ばされた家を再建すること
  段ボールでベッドをつくること
  つらい仕事
  あなたは何もしらない

  親愛なる大統領
  あなたは決して私と話なんかしない
  そうでしょ?


P!NKという人は、本来政治的なメッセージを表に出すタイプのアーティストではなかったようですが、ブッシュ政権が引き起こしたイラク戦争やその後の動きをみていて、よほど腹に据えかねたようです。それで、こんな歌を歌いました。
YouTubeの公式チャンネルにライブ動画があったので、それも貼り付けておきましょう。

P!nk - Dear Mr. President (from Live from Wembley Arena, London, England)

後ろのスクリーンには、ブッシュJr大統領が映し出されています。
そして、彼の引き起こした戦争によって苦しむ子どもたちや、死者の亡骸をおさめた棺、あるいは、貧困にあえぐ人々。
国民の生活とあまりにも乖離したところで国家論を語るネオコン大統領――それは、このコロナ禍においてさえ改憲を押し進めようとするこの国の総理大臣の姿と重なっているのかもしれません。それはまた、昨日紹介した大林宣彦監督の映画『ねらわれた学園』の話ともつながってくるでしょう。

ちなみに、P!NKさんは、今回のパンデミックで自身と息子が新型コロナに感染したそうです。
もう回復したということですが、その経験から、大学病院やLAの基金に寄付したうえで、「どうか家から出ないで」と呼びかけています。
望まれているのは、こういうことのはずなんです。
とりあえず、休業補償はしない姿勢であることがまずおかしい。これでは、汝臣民飢えて死ねといっているようなもので、それだから件のツイートも、朕はたらふく食ってるぞとみられてしまうわけです。国民と乖離したところから見下ろすのではなく、市井の人と同じ視点をもって政にあたることこそがいま望まれているのではないでしょうか。あ、そういえば「市井」って言葉は知らないんだったっけ……





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