今回は、音楽記事です。
以前クリームについて書いたところ、同系統のバンドであるベック、ボガート&アピスについて書いてほしいというコメントをいただきました。
そこで今回は、Beck, Bogert and Appice について書きましょう。
中心人物は、いわゆる三大ギタリストの一人と目される、ジェフ・ベック。
そこに、ベースのティム・ボガート、ドラムのカーマイン・アピスという二人が加わったスリーピースバンドです。
バンド名は、この三人の名前をそのまま並べたもの。
洋楽のバンドでは、エマーソン、レイク&パーマーみたいにこういう名前がたまにありますが、日本語でいったら「田中、佐藤、そして鈴木」みたいなことになるわけで……ぞんざいな響きがしないでもありません。
代表曲は、やはり
Superstition でしょうか。
いうまでもなくスティーヴィー・ワンダーの名曲をカバーしたものですが、オリジナルとはだいぶ印象がかわってます。
ジェフ・ベックのギターももちろんですが、リズム隊もまた個性的。
ドラムの手数の多さ、ベースの動きの激しさは、たしかにクリームに勝るとも劣らない。ともすれば、いささかまとまりを欠いているようにさえ感じられますが……
この、前に出るベースが、ジェフ・ベックは気に食わなかったようです。
ジェフ・ベックは非常にこだわりが強く、一緒に演奏するメンバーに対しても非常に要求が多い人です。彼のやっているバンドはジェフ・ベック・グループというふうにいわれているんですが、しょっちゅうメンバーが変っているのも隊長のこだわりゆえでしょう。早い話が、気に食わないメンバーはすぐにとっかえてしまうわけです。第一期ジェフ・ベック・グループのボーカルをつとめたのがかのロッド・スチュワートなわけですが、ロッドのボーカルさえジェフ・ベックは気に入らなかったみたいです。
BB&Aに関していうと、自分の引き立て役に徹しないベースが我慢ならなかったようです。
これまでにも何度か話に出てきたように、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベックを“三大ギタリスト”といったりするわけですが……この三人のなかで最もギタリストとしてのテクニックが卓越しているのは、おそらくジェフ・ベックでしょう。
求道者的ともいえるストイックさで、その長いキャリアにおいて常に新たな表現を模索してきた人です。そんなジェフ・ベックなので、もうとにかく、俺のギターを聴け! という、そこが出発点なわけでしょう。ベースはおとなしくベースラインを追ってろ、しゃしゃり出てくるな……とまで思ってるかどうかはわかりませんが。
ともかく、ベック、ボガート&アピスは、オリジナルアルバム一枚出したきりで消滅。
1972年~1974年と、その活動期間は、クリームと同じく2年間にすぎませんでした。
惜しいといえば惜しいことではあります。ロック革命=ベース革命という図式からすると、BB&Aもひとかどのレジェンドになれただろうに……まあ、「知る人ぞ知る」的な意味合いでは、十分レジェンドになっているともいえるんですが。
ただ、BB&Aがクリームほどの存在感を持てなかったのは、時代背景の違いもあるでしょう。
BB&Aが活動していたのは、1970年代の前半から半ばごろにかけて。
この頃にもなるとロックの初期衝動の時代はもう過ぎ去っていて、60年代風ロックは克服されるべき対象のようになっていた部分があると思います。その克服がパンクによってなされるのは70年代後半のことで、BB&Aの活動期間は、そこに至るまでの真空地帯というか、ある種の凪のような時期に重なっています。その時代においては、カーティス・メイフィールドのカバーなんかはもう“時代遅れ”とみなされていたんじゃないでしょうか。
時代背景といった部分を抜きにした評価がなされるには時間が必要で……そういう意味で、めぐりあわせが悪かったのかもしれません。
ティムのベースば大好きですが、ティムがロックスターになれなかったのはあのビジュアルのせいだとも言われています。
まあ納得ですが・苦笑
ベーシストの方なんですね。ベース重視で聴くなら、BB&A推しも納得です。
ティム・ボガートについては、ビジュアルのことまでは考えてませんでした。個性があっていいんじゃないかとも思いますが……まあ、たしかに“スター”という感じではないですかね。