ロック探偵のMY GENERATION

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もう一つのロックの日 ~グラムについて考える~

2025-01-08 22:46:16 | 日記

今日1月8日は「ロックの日」。

6月9日と並ぶ、もう一つのロックの日となっています。

というわけで、ここ数年は、この日付にロック関連の記事を書いてきました。

この日がロックの日とされているのは、エルヴィス・プレスリーとデヴィッド・ボウイという二人のロックスターの誕生日であることから、ということなんですが……
そのうちの一人デヴィッド・ボウイは、70年代初頭頃には、グラムロックのミュージシャンとみなされていました。今回は、そのグラムという要素をちょっと掘り下げ、グラムメタルというものについて考えてみようと思います。


ヘヴィメタルのはじまりがどこかというのは意見が分かれるところでしょうが、まあ、だいたい1970年ぐらいと考えていいでしょう。
そこから少しずつポピュラリティを獲得していき、80年代ごろにヘヴィメタルというは一つのブームを迎えます。
そこで活躍したいくらかポップ寄りなメタルを総称して、グラムメタルと呼ぶことがあります。
この言い方は、もちろんグラムロックを意識したもの。
ロックンロールの初期衝動回復運動……それが、ヘヴィメタルと結びついたものが、グラムメタルとひとまずいえるでしょう。

代表的なバンドの一つに、W.A.S.P.がいます。

W.A.S.P. I Don´t Need No Doctor Official Music Video

よくも悪くも、アリス・クーパー的な感じが濃厚に出ています。

アリス・クーパーといえばアメリカのグラムロックを代表するアーティストで、グラムメタル系バンドの活動を追っていると、アリス・クーパーの影がちらほら見え隠れします。
たとえば、Hurricane というバンド。
デビュー・アルバムで、アリス・クーパーのI'm Eighteen をカバーしていました。

I'm Eighteen

このハリケーン、デビュー時には期待の新人として注目されていたようですが、彼らがデビューした時にはもうグラムメタルは退潮の兆しを見せ始めていました。グランジ/オルタナが隆盛をきわめる90年代がやってきて、91年にハリケーンは活動を終了してしまいます。その後2000年代に入って再結成してるんですが……これは、グラムメタル系バンドに非常に多くみられるパターン。90年代に入ったところで解散、もしくは活動終了し、2000年代に入るぐらいに再始動という……これは、グラムメタルを追いやったグランジ系が退潮しはじめたために、息を吹き返したということでしょう。こういう栄枯盛衰をみていると、時代性をあれこれいうことの不毛さを感じるようにもなります。

ちなみに、ハリケーンでドラムを叩いていたのは、ジェイ・シェレン。現在イエスでドラムを叩いているあの人です。ボーカルのケリー・ハンセンはフォリナーに参加したりしていて、このハリケーンというバンドは、ジャンル分けのあいまいさも感じさせてくれます。

実際、ジャンル分けというのは相当部分が虚構というか、外野の人間が勝手にいってるだけで、当人たちがなんとなくそれに合わせてるというような部分があると私は思ってます。

80年代ごろのメタルシーンにおいて、グラムメタルと対立関係にあったとみられているスラッシュメタルというジャンルがありますが……そのスラッシュメタルを代表するバンドの一つ、Anthraxが、先ほどの I'm Eighteen をカバーしています。

I'm Eighteen

それだけアリス・クーパーという人が広くリスペクトされていて、アンスラックスがクロスオーバー的な試みをしているということでもあるわけですが……実際のところ、スラッシュメタルVSグラムメタルという図式は、時代の空気で演出されたものという側面を否定することができません。それは、70年代のパンクスたちが旧世代のロックンロールを否定していたのがある種の“演出”であったということと同じでしょう。
たとえば、エクソダス、スレイヤーというゴリゴリのスラッシュメタルバンドでギターを弾いてきたゲイリー・ホルトが、実はウォーレン・デ・マルティーニのギターを密かにリスペクトしていたというようなことを、最近になっていったりしているのです。


最後に、なぜかポイズン。

Poison - Talk Dirty To Me

メタルの退潮→グランジの台頭→グランジの退潮→メタルの復権という流れは、ロック史において幾度も繰り返されてきた振り子運動の一つでしょう。
しかし、そうして揺れ動きながらも、そこに貫かれている一つの軸はある。
個人的見解ではありますが、グラムメタルにおいてポイズンはそんなバンドの一つだったんじゃないかと思ってます。あの時代に山ほどいたグラムメタル系バンドの中でとびぬけて大ヒットしたわけでもないし、特に技術的に優れていると評されることもないバンドだとは思いますが……衝動というのは、そういう尺度では測れないものでしょう。




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