ロック探偵のMY GENERATION

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Sting, Children's Crusade

2019-04-09 21:44:31 | 音楽批評
今回は、音楽記事です。

前回U2について書き、そこでライブエイドのことをちょっと書きました。
そこから、ライブエイドに出演していたアーティストつながりということで、スティングについて書こうと思います。

スティングという人は、嫌いな人は嫌いだと思いますが、ロック史に大きな足跡を残した人であることは間違いないでしょう。

いうまでもなく、もとはポリスの一員ですが、『ブルータートルの夢』というアルバムでソロ活動を開始。
それから現在に至るまでミュージシャンとして活動を続けているレジェンドクラスのアーティストです。

もともとジャズ畑の人で、音楽的に卓越したテクニックで知られますが、音楽的なテクニックのことだけでなく、振る舞いの面でもロックなところをみせてくれます。 
ポリスが来日した際に、テレビであきらかに口パクだとわかるパフォーマンスをしたというのは伝説ですね。
その意図は不明ですが、イギリスのマガジンというパンクバンドがテレビ出演した際に口パク演出に反発して、演奏の真似事をしなかったという話があり……そういう反骨精神の表れともとれます。

かと思えば、もと高校教師という経歴の持ち主でもあり、知性的な部分も見せます。
たとえばポリス時代のアルバムタイトルが、『シンクロニシティ』や『ゴースト・イン・ザ・マシーン』といった哲学用語をもとにしたものであったり……

まあそういうところで、前述の来日時のようなロックンローラー的振る舞いが、計算された一種の“演技”なんじゃないかというふうに見られたりもするわけですが……

また、知性的な部分の延長ということなのか、社会的な問題を扱った歌も歌っています。

その一つに、Children's Crusade という曲があります。
先述したソロデビューアルバム『ブルータートルの夢』に収録されている曲です。

Crusade というのは十字軍のことで、直訳すると少年十字軍。
かつて中世ヨーロッパの十字軍の時代に、子どもが組織した十字軍をモチーフにしています。

ただし、直接歌っている内容は第一次世界大戦。
戦争で若者が犠牲になるのを、少年十字軍の故事になぞらえているものと考えられます。


  彼らは鉄条網にからめとられ 波に呑まれて死んでいく
  イングランドの花は泥に顔をうずめ
  あらゆる世代の人々の血にまみれる
  肥え太った将軍たちは 後方で身を守っている


少年十字軍というのは、神の啓示を受けたという少年に率いられた少年たちが“十字軍”を組織して聖地エルサレムにむかったというものですが……結局彼らはエルサレムにたどりつくことなく、多くは途中でつかまり、奴隷として売り払われたといわれます。
その少年十字軍になぞらえて、若者を悲惨な死にむかわせる戦争を告発する歌ということでしょう。

聴いていると、その曲調もあいまって、どこかサイモン&ガーファンクルのスカボローフェアのような感じもしてきます。

こういう歌を歌うというのは、ライブエイドをやっていた時代のある種はやりのようなものかもしれません。
しかし逆に、80年代だからこそできた名曲なのではないか……そんなふうにも思えます。そういう意味でも、このチルドレンズ・クルセイドはロック史に残る一曲といえるでしょう。


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