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サイモン&ガーファンクル「スカボロー・フェア(詠唱)」(Simon & Garfunkel, Scarborough Fair/Canticle)

2019-08-19 17:44:07 | 音楽批評
 

今回は、音楽記事です。

先日、小説記事として『ヒッキーヒッキーシェイク』を取り上げましたが、そこからのつながりで、サイモン&ガーファンクルの、「スカボロー・フェア」を紹介しましょう。

なにがどうつながっているかというと……『ヒッキーヒッキーシェイク』には4人の“ヒッキー”が登場しますが、彼らはオンライン上のハンドルネームとして、パセリ、セージ、ローズマリー、タイムという名前を与えられており、これらは、スカボロー・フェアの中に登場するハーブの名前であり、小説のなかでスカボロー・フェアの歌詞が引用されてもいるのです。
この歌でハーブの名前が繰り返されるのは魔よけの呪文みたいない意味合いだといわれいてますが、そのことを踏まえて考えると、小説『ヒッキーヒッキーシェイク』でこれが使われているのも意味深です。

さて、サイモン&ガーファンクルの――といいましが、本来はトラディショナルソングです。
イギリスに古くから伝わる民謡で、多くのアーティストが歌っていて、サラ・ブライトマンやCeltic Woman といったディーヴァ系女性アーティストに好まれる傾向があるようです。
しかし……そんななかにあって、サイモン&ガーファンクルのバージョンは、ほかのアーティストにはない独特なところがあります。
それは、歌の行間に付け足されたオリジナル歌詞です。


  深い緑の森 丘の上
  雪に残る雀の足跡
  毛布と夜具にくるまった山の子は
  軍靴の音にも気づかずに眠る

  丘に散る木の葉
  銀色の涙が墓石を洗い
  兵士は銃を磨く

  戦争のふいごが緋色の軍勢を焚きつけ
  将官は兵士たちに、殺し、戦うことを命ずる
  遠い昔に忘れ去られた大義のために
  

これは、あきらかに反戦の歌です。
スカボローフェアという民謡のなかに、戦争の惨禍を歌う歌詞――このコントラストが、戦争というもののもつ狂気を浮き彫りにします。
ここに、ポール・サイモンの卓越したセンスを感じます。
最近このブログでは戦争に関する話題がよく出てきますが……たまたま最近話題になった『ヒッキーヒッキーシェイク』からそういう方向に話が進むのも、今という時代のシンクロニシティゆえでしょうか。


ちなみにですが……
この「スカボロー・フェア」は、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』ゆかりの曲でもあります。

何度か書いてきましたが、あの作品に登場するホテル・カリフォルニアでは、鐘が奏でる音楽が登場します。そこで使われている曲の一つが、スカボロー・フェアなのです。

鐘のメロディは重要な役割を果たしていますが……ここで使われる7曲は、いずれもトラディショナルやクラシックの曲で、スカボロー・フェアを選んだのもトラディショナルだからです。ただ、そうはいっても、念頭にあったのはやはりサイモン&ガーファンクルのバージョンでした。

というわけで、ちゃっかり、ここで拙著のPRもしておきたいと思います。


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