ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

ビートルズ「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」(The Beatles, Strawberry Fields Forever)

2017-12-08 15:53:57 | 音楽批評
今日は12月8日。
ジョン・レノンの命日です。

ということで、ジョン・レノンの曲について書こうかと思ったんですが……ジョン・レノンに関しては、以前「イマジン」のことを書きました。
そこで今回は、ビートルズの Strawberry Fields Forever という曲について書きます。

 

なぜ、Strawberry Fields Forever なのか。
一つには、この曲はジョン・レノンの作で、私が考えるところでは、ビートルズでジョン・レノンが作った曲のなかでは代表曲の一つだからです。
そしてもう一つは、トミーシリーズの中にこの曲を題材にした作品があるからです。
以前このブログで『トミーはロック探偵』という連作短編集のことを書きましたが、そのなかに、「ストロベリー・フィールズ フォーエヴァー」という一編がありました。ということで、トミーゆかりの曲として、これがよかろうと。

The Beatles - Strawberry Fields Forever



この曲は、ポール・マッカートニーが演奏するメロトロンではじまります。

メロトロンというのは、サンプラーの元祖みたいな楽器です。
楽器の音をテープに録音して、そのテープを鍵盤に連動させて音を出します。それぞれの鍵盤に、その高さの音のテープがつながっていて、鍵盤を押すとそのテープが再生されて音が出る……というへんてこな鍵盤楽器です。

その性質上、音が安定しないといわれますが、その音色が、奇妙にこの曲に合っているようにも思えます。

その基調は、ぼんやりとして曖昧模糊な、霧に包まれた夢のなかのような世界です。
この曲が、サイケデリック期のビートルズを代表する曲と評される所以ですが、音楽だけでなく、歌詞も、はっきりしない表現が繰り返されます。たとえばこんな感じです。

  Always, no, sometimes,
  think it's me
  But you know I know
  when it's a dream
  I think, er, no,
  I mean, er, yes,

 「いつも、いや、ときどき」とか、「そう思う、ああ、いや、つまり、ああ、そう……」といったように、曖昧で、はっきりしないのです。
 そして、こんな歌詞もあります。

 No one, I think, is in my tree
I mean it must be high or low

  誰も僕の木にはいないみたいだ
 高いか低いかのどっちかってことさ

ここには、ジョンの孤独が表現されています。
子どもたちが木登りか何かしているけれど、自分の登っている木にはほかに誰もいない。それは、木が高いか低いかのどちらかだ……
ここで、高いか低いかのどちらか、としたところに、この歌のポイントがあります。

自分が人とは違う、仲間はずれだというときに、二通りの解釈がありえます。

「自分が天才だから周りの人間がついてこれない」と、「自分が愚かなために周りの人間についていけない」です。

ジョン・レノンは、この二つの可能性を対等に並立させて、どちらとも決めていないのです。

ここが、ジョン・レノンのジョン・レノンたるゆえんです。

前者の立場をとると、「否定」の方向にむかいますが、後者の場合はそうはなりません。だから、彼は「否定」「破壊」という立場をとらないのです。そういう姿勢は、ジョンの作ったほかの曲にも見て取ることができます。ジョン・レノンは、NO ではなくてYESの人なのです。

さて……
この Strawberry Fields Forever については、もう一つ指摘しておかなければならない重要な特徴があります。
それは、先述したトミーの短編「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」で謎解きのカギにもなっているのですが……それについては、ここでは書かずにおこうと思います。
まあ、ある意味ネタバレになってしまうので。いずれその作品を発表するときまで、こういったところには書かないでおこうかと。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。