城南町の兄の家で行われる亡兄の3回忌の法事のため、朝早くバスに乗った。我が家から城南町の兄の家までは約20キロ。城南町には市内中心部の交通センターでバスを乗り換えないといけない。
バスは、城南ゆきと甲佐ゆき、2系統の路線がある。どちらの路線でも停留所から兄の家まではかなりの距離がある。城南のバス停からは約4キロ、当然タクシーに頼ることとなるが、甲佐行きで北原バス停に降りると兄の家まで約1キロ、当然徒歩となる。
交通センターの時刻表を見ると9時5分発と9時15分発があった。師走とは思えぬ暖かい小春日和にめぐまれ、少し歩くのもよいかと甲佐行きに乗ることに決めた。
市内を出るとのどかな田園地帯が広がる。約1時間のバス旅。気も晴れ晴れというところだったがそのあとがいけない。
北原バス停の近くになったが、バスはいつものルートと違う所を走っている。次の停留所は田原とアナウンスがあった。兄の家の近くでもバスは止まらない。あわてて降車ボタン押した。バスはそれから2キロ近くは走っただろうか。止まったのは甲佐町と城南町の境にある5差路、タクシーどころか人影もない。バスの運転手さんに「北原には止まらないのですか」と尋ねると、北原はあちらですと指をさされた。
時計を見ると10時少し前。どうすればよいのか呆然となった。兄の家までどのくらいあるのか想像もつかない。ところが〝うちの奥さま”サッサと歩き出した。一緒になっていそいだいそいだ。北原バス停の近くを走る高速道路の白いガードレールがやっと見えた。時計の針は10時40分過ぎをさしている。
息を切らせながらどうやら11時の法事に間に合いほっと一安心。「大変な朝の散歩だったね」と〝うちのおくさま”とホット顔を見合わせた。法事の日の大いなるハプニング。今日の主役の亡兄が、腹を抱えて笑ったことではあるまいか。
義姉の話では、北原バス停の手前の高速道路にかかる橋は、地震で崩落していて通行できなくなっているそうだ。そういえば城南町の地震の被害はひどかったようだ。兄の家の倉庫には危険の札が張ってあった。隣家は全壊したという。