大型連休はサラリーマンの特権かな。毎日が日曜日の老人たちには、いつもと変わらぬ退屈な日が待っている。
テレビでは各地の賑う様子と混雑の状況が報じられているが、何か他人事のように思える。出国ラッシュに湧く成田空港からのLIVE。沢山の人が映っている。みんな楽しそう。満面から笑みがこぼれている。
憂さ晴らしといっては何だが、暇つぶしに「映画を観に行こう」と我が家の奥さまに提案したところ大賛成。すぐに上映中の映画を探したが、なんだか老人向きでない映画ばかり。
あれこれ探して、やっとのことでこれはと思う映画を2本見つけた。
「それでも夜が明ける」と「あなたを抱きしめるまで」。奥さまはどちらも見たいねという。同じ日に2本を見るのは無理。どちらにしようか迷ってしまう。最後はよくわからないがPCの「口こみ」に頼り「それでも夜は明ける」を観ることに決めた。
チケット売り場でシニア料金1人1000円、2人だから2千円を差し出したところ「すみませんお客様、2200円いただきます」と。そうだ4月から消費税が増税になっていたこと迂闊にも忘れていた。
「それでも夜は明ける」は奴隷制度が広がっていた1841年、アメリカ。ニューヨークで家族とともに暮らす自由黒人で音楽家のソロモンが、突如誘拐され、奴隷としてアメリカ南部のニューオーリンズへ売り飛ばされるところから始まる。実話だという。
映画は奴隷商人の取引場面。鞭打ちの拷問。残酷な虐待場面が終わるまで続き、最初は目をそむけたくなった。
だが、主人公ソロモンが、農園での過酷な労働を強いられながらも、決して人としての尊厳を失うまいと心に決め、いつかまた家族と再会できる日が来ることを信じ続けて耐え忍ぶ姿に感動が涌いた。
12年もの歳月がながれ、奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者と出会い「自由黒人」であることが証明され解放される。
ソロモンは「自由黒人」だから救いがあったけれど、生まれながらの奴隷であったら、どうなっていたのだろう。正直、単一民族の日本人には到底理解が得られない。
人間をモノとしか考えず、財産とみなす奴隷制度、過酷な労働を強い、意にそわぬ者には魅せしめの鞭を振るう。こんな時代が過去にあったとは想像も出来なかった。映画を観終わりその非情さに憤りさえ感じた。
そして、形は違うにしてもこのようなことが世界のどこかで今も起こっているのではなかろうかとふと考えた。
「自由黒人」というのも初めて知った。この映画、人としての権利の大切さを教えてくれた。いくつになっても学ぶことは沢山あることも教えてくれた。