私にとって十二指腸潰瘍は友達のようなもの。
最初に発病したのは四十歳の時。会議中に突然意識を失い倒れこんだ。医師はコールタールのような黒い便と聞き、即座に二か月の入院を宣告した。
それ以来、二年か三年おきに下血を繰り返し今もそれが続いている。
時には多量の下血で酷い貧血を起こし意識を失い、三途の川の一歩手前まで行ったこともある。幸い大量の輸血でやっとこの世に引き返すことができた。
前回の発作は二年前の七月。街の中で倒れ緊急入院。
内視鏡カメラで止血の大手術を受け、大量の輸血でやっと回復。今評判のピロリ菌が原因ではと、入院中にピロリ菌の除去も行われ無菌となった。
担当のお医者さん。退院の際にもう大丈夫、でも薬だけは飲み続けてくださいと念をおされた。だが、毎日3度の薬を飲み続けるのは容易なことではない。半年もするとだんだんずるくなりとうとう薬をやめてしまった。
天罰とはこのことか、高血圧と痛風が重なりその薬が強かった精もあろうか、とうとう19日に久しぶりの下血を見た。
潰瘍の人は必ず、空腹になると耐えられないような痛みがあるという。しかし私には、不思議なことに痛みがない。ある日突然、下血してから潰瘍だと気づく。今回も同様、突然長年の友である潰瘍がやってきた。
早速入院。入院中に内視鏡検査を2回、点滴を受けながらの食事はずっと3分粥。
白壁とカーテンに囲まれた病院生活も、だんだんと回復するにつれ退屈でしようがなくなる。病棟の窓から見る外の景色はすばらしい。いつ帰れるかと写真を1枚。
昼寝てばかりいるので夜は目がさえて眠れない。朝早くまで窓に顔を付けて外を眺めていると、左側の空が明るくなった。
阿蘇の外輪山から朝日が昇る。始めてみる力強く素晴らしい風景、これもおまけとカメラにおさめた。
入院患者がこのようなことを。先生に叱られずほっと一安心。
無事退院できました。