案内状は出したものの、出席者は何人だろうか。朝から何回も郵便受けを見に行く。箱にはがきが入っているとほっとする。だが、最初の1週間は欠席の返事ばかり。果たして同窓会は開けるだろうかストレスがたまる。
案内状を出して8日ほどたっただろうか関東に住む同窓から1通のメールが届いた。「最後の同窓会、切々たるご案内状をいただき、出席させていただくことを決めました」。出席者の第1号。飛び上がるほど嬉しかった。その後締め切り日が近づくにつれ続々と「出席します」とはがきが届いた。出席者は39人。
盛大な同窓会が開けると世話人一同、ますます元気が出てきた。さあがんばるぞ。だが、まだまだ開催までの仕事はたくさん残っている。出席者は何しろ傘寿を迎える、または迎えた老人ばかり。開催日までにはまだあと半月あるが何が起きるかわからない。大丈夫かな。
同窓生名簿と皆さんからいただいた近況報告のとりまとめとその編集作業。当日の部屋割りや同窓会の式次第の作成。名札も作らねばならない。当日の案内も微に入り細に入り作る必要がある。併せて会場との詰めの折衝もしなければならない。
開催日を決めるときには気づかなかったが9月1日~10日は台風シーズンのど真ん中、同窓会と台風が重なればどうなるだろう。中止に追い込まれればキャンセル料を支払うことになる。さらに出席者はみな高齢者、出席と申し込んでいても当日病気などで出席できなくなる方がいるかもしれない。そのキャンセル料も考えなければならない。
近況報告を取りまとめていると「病気・介護・肩や足腰の痛み」の3つのキーワードが浮かんだ。出席できない方のほとんどが、本人の病気はもとより、家族の介護等で参加できないと答えられている。参加を申し込んでおられても開催の日までには欠席される方がおられるのではなかろうか。これもキャンセル料の対象、そうなれば赤字だ。急に心配になってきた。
それどころではない、案内状を出したのは6月の終わり、開催日の9月8日まで約3か月の間に4人の方の訃報が届いた。病気で出席できなくなったと連絡してこられた方も4人おられる。
9月8日の同窓会には35名の同窓生が集まった。関東からも3名の方が出席された。その日は、盛会となった傘寿の年の同窓会を寿ぐかのように、台風の季節にもかかわらず、青空の広がる良い天気となった。
出席された方々は熊本の美酒を嗜みながら、童心にかえり65年前の尽きぬ思い出話に花を咲かせていた。出席された方々の楽しそうな元気なお顔が今も目に浮かんでくる。この夜、盛会だった同窓会を振り返ると、世話人としての開催までのこれまでの心配ごとや苦労が泡のように消えていった。
これもお世話をいただいた皆さんの協力あってのこと。ありがとうございました。私事ではありますが、80歳にして盛大な同窓会のお世話を元気でつつがなくやり果せた幸いが、今は何か夢の出来事だったように思えてきます。
余談になりますが同窓会の終わった翌日、台風15号が本土に上陸し、北関東、東北地方に甚大な被害を持たらしました。この台風、熊本でも瞬間風速41.1㍍の風を吹かせました。その後発生した台風21号は先島諸島で猛威を振るい、観測史上最大の瞬間風速81.1㍍を記録し、その被害は甚大なものがあると今朝のニュースにあります。被害にあわれた方々には申し訳ありませんが、台風シーズンと知って開いた同窓会が秋の天気に恵まれたこと、天の恵みだったとしか言いようがありません。
残り少ないこれからの長い人生、同窓の皆さんとまたお会いする機会が必ずあると信じています。