【前回は5作品だったけれど】
今回は評論第五弾として最近読んだ5作品を勝手に評価する。
今回は歌野晶午作品4作品と女流小説家1作品を読書感想文として紹介しよう。
【はじめに】
1990年代の後半に発表された歌野氏の作品は、急に舵を切ったように多角的な縦軸を柱とした作品が目立った気がするのは気のせいだろうか・・・
【柚月麻子作品を初読み!】
勘のいいひとなら察した方もいるのではないかと思うけれど、Amazonでメチャクチャ柚月裕子作品を探したためか、同じ苗字だったからなのか同HP上のトピックに再三登場したことから興味を引き、いつしか”なぜか”読んでみたくなったことから購入して読むことにしたんだよなぁ。
「その手をにぎりたい/柚木麻子(2014年1月 小学館)65」
バブル期を生きる美人OLが、寿司職人との偶発的な出会いから、様々生じた人間模様など描かれているもの。
当然、主人公はバブルがはじけることを知らないわけだが、地を生きる彼女の細かい描写などは独特であったため興味深かった。
特に、今まで読んだことのないような女性目線での表現は、もっと若いころに読んだのならチョットは影響したのかなぁと思いながら。
なお、ストーリーは、ハッピーエンドになろうがならまいが、どっちつかずのオーラスがちょっと残念すぎたかなって感じたなぁ。
個人的には、どうあれズバッと終わった方が読み手として読み終わったあとの余韻に浸れたと思うのだけど、それが彼女の作風なのだからオレがどうこう言うことではないのでしょうなぁ。
|
【今回読んだ歌野晶午作品は優秀作揃い】
「さらわれたい女(1992年1月 カドカワ)81」
これぞ歌野晶午ワールド全開の作品だが、やや強引なトリック、終盤が駆け足になっていること&出来過ぎな結末がやや萎えるかもしれない。
だけど、メリハリが効いているのでTVドラマのようなサスペンス映画向けなのかも知れない。
探偵モノが好きな人にはおススメだ。
|
「ROMMY 越境者の夢(1998年5月 講談社)80」
長編だが、一言でいうなら「結末があまりに切ない」物語だろう。
推理小説を読んでいたことを忘れさせられる展開に中盤から読み止まらなくなること必至。
マイナスポイントを挙げるのならば、登場人物が多すぎることくらいかな。
でもね、主人公や当事者以外の各登場人物が順番にストーリーテラーとなる描写になっていることでいくらか読みやすく整理されている工夫は評価できることだろう。
また、終盤一気に伏線を回収するのだけど、読み方によってはズルい結末だったように後味として残った。
そうはいっても、やっぱり実写化できない際どいストーリーは、歌野氏ならではの作品だったのだと思う。
|
「正月十一日、鏡殺し(1996年9月 講談社)58」
THE短編集。
しかし、実に面白いモノとそうでないものが共存していて、抱き合わせ感も否めない。
選りすぐればこの評価点ではとどまらなかっただろう。
|
【今回のMVPはこの作品だ】
「ブードゥー・チャイルド(1998年7月 角川)82」
これまでの歌野晶午作品と全く毛色が異なるスタートだったため、馴染んでくるまで何度読むのを止めてしまおうかと悩むほどだった。
だけど場面が切り替わってからは、いつもの彼らしい表現に戻るので、頑張って読み続けてよかったと思う後味に。
道中、どんどんパズルがハマっていく中で展開は読めなくても、結論が途中で分かってしまうところが読み手としてどうとらえるかがポイントになると思う。
そして着眼点はお見事、これが推理小説になるのだからやっぱり歌野氏はすごい。
タネは判明しても最後までダレることなく読み続けられるのだから。
おススメだ!
|
(↓↓どれかひとつのバナーで結構ですのでクリックしていただくとありがたいです!励みになります↓↓)
|