ノルウェーの森を最初読んだとき、すごく面白かったと同時に、あまり主人公に感情移入できなかったような覚えがある。
私は単純な若者だったし、あのような直子と主人公の恋愛を理解できなかったからだ。
直子は生きながら既に死んでいるような不思議な女の子で、結局自殺してしまう。
直子と主人公の関係は非常に特殊で、非現実的ともいえる。
それとは逆に、もう一人のガールフレンド緑との関係は、現実的である。普通にいそうな女の子で生き生きしていてる。彼女が暗い物語に活気を与えてくれる。
緑との付き合いが、普通に経験する恋愛だろう。
直子、緑、僕の三角関係が、せつなく絡み合っていく。この微妙な関係がこの小説の醍醐味でもある。
文芸的な評論はもう十分すぎるほどなされているし、私も敢えて詳しくは語らない。
もし読んでいない人がいたら読むことをお勧めする。
身を焦がすような熱い恋愛小説ではなく、薄い皮が一枚どうしても破れず、お互いの気持ちが理解しあえないような、せつない恋愛小説である。
ロミオとジュリエットとはずいぶん違う。
しかし、感情移入できないとしても読むとぐいぐい進んでいく不思議な小説である。
この小説が映画になるとどう表現されるのか興味がある。監督もフランス人で外人がどういう風に小説を読んでいるのかも気になる。